サブスぺ領域の結論出ず、4月からの経験症例は「遡及認定」「学会認定専門医」としてカウント―日本専門医機構
2021.3.22.(月)
新専門医制度におけるサブスペシャリティ領域について、「どの学会、領域」を日本専門医機構として認定するかの結論は出ていない。しかし、この4月からスタートする「サブスぺ研修」について、経験した症例などは遡及して新専門医制度の中でカウントされる―。
また、ある学会・領域がサブスぺとして認定されなかったとしても「学会認定の専門医」資格を取得する方法が考えられる。今後、▼日本専門医機構認定の基本領域専門医▼日本専門医機構認定のサブスぺ領域専門医▼学会認定の専門医―の3階建てとすることなども検討していきたい―。
日本専門医機構の寺本民生理事長は、3月22日の定例記者会見でこういった考えを示しました。
サブスぺ領域として認定後、4月からの経験症例は「遡及カウント」
新専門医制度は、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」を基本理念として今年度(2018年度)から全面スタートしました。以下の19「基本領域」(1階部分)と「サブスペ領域」(2階部分)の2層構造となっています。
【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域
サブスペシャリティ領域については、「国民への分かりやすさ」という基本理念を踏まえ、日本専門医機構と基本領域学会とで「認定する基準」を設け、その基準に合致する学会・領域のみを認定することとなっています。これまでに、日本専門医機構では次の23学会・領域について「サブスぺ領域として認定する」考えを明確化。ほかにも「サブスぺ領域」としての認定を求める学会・領域(21分野)からレビューシート(いわば「学会・領域からの基準にマッチしているかを証明」申告書類)が提示され、日本専門医機構でそのチェックが進められています。
【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―
【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―
【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―
しかし、現時点では、日本専門医機構において「どの学会・領域をサブスぺ領域として認定するか」の共通認識が出来上がっていないことが寺本理事長から報告されました。詳細は明らかにされていませんが、例えばある学会・領域について、「基準は厳格に適用すべきであり、基準を少しでも満たしていない場合には機構として認定すべきではない」という考えと、「この学会・領域は国民生活にとっても非常に重要であり、基準を緩やかに適用して認定すべきではないか」という考えの対立があるようです。
このため、「サブスぺ領域として認定された学会・領域」の公表には、まだ時間がかかりそうです。
もっとも、この3月で基本領域の研修を終え、4月から「サブスぺ領域の専門医資格取得を目指す研修」受講を始める医師は「大きな不安」を抱えています。この点について寺本理事長は「のちにサブスぺ領域として認定された場合、履修済の研修(症例経験など)は遡及認定される」考えを示しています。
上記の24学会・領域については、当初「連動研修」が行われる予定でしたが、厚生労働省の医道審議会・医師専門研修部会の議論の中で「連動研修は見送る」こととなりました(地域医療へ悪影響が生じる可能性などが懸念されたため)。ただし、その際にも「連動期間に履修済の研修内容は、のちに遡及認定される」こととなり、他の学会・領域についても同じ考えが適用されることになります。
「機構認定の基本領域専門医・サブスぺ領域専門医」と「学会認定の専門医」とが併存
ただし、学会・領域によっては「サブスぺ領域として認定されない」ケースが出てくる可能性もあります。この点について寺本理事長は「学会認定医」の中で経験症例としてカウントされることになろうと見通しています。
我が国には多くの医学会があり、高度な知識・技術獲得を目指し、独自の研修プログラムや認定試験を設けて「専門医」養成を行ってきました。ただし、「専門医」認定基準等にバラつきがあり「国民に分かりにくい」事態が生じていたため、2018年度から「学会と日本専門医機構が連携し、養成プログラム・認定を行う」新専門医制度がスタートしたのです。
寺本理事長は、▼「日本専門医機構が認定する専門医」と「学会が認定する専門医」との間に上下関係はない▼すべての「学会が認定する専門医」を、「日本専門医機構認定の専門医」制度の中に組み込めば混乱を招く―ことを強調しています。新専門医制度の養成プログラム・認定基準は、日本専門医機構と関係学会(上述19の基本領域学会)とで長期間にわたる濃密な協議を行って、整理されてきました。このため、別の角度から見れば、「機構の認定基準等に合致させるために、これまで学会内部で構築してきた『高度な知識・技術』獲得に向けた養成プログラム・基準を緩めなければならない」ケースが出てくる可能性もあり、これは当該学会においては忸怩たる思いを抱くことになります。
これを「機構の基準に沿っていない」として否定したのでは、我が国の医学・医療の発展を阻害する可能性もあります。そこで寺本理事長は、専門医について(1)日本専門医機構が認定する「基本領域の専門医」(2)日本専門医機構が認定する「サブスぺ領域の専門医」(3)学会が認定する「専門医」―の3類型(3階建て)として整理していく考えにも言及しました。
厚労省の医師専門研修部会では、「サブスぺ領域の中には、『基本領域の上による2階部分』というよりも、『3階部分』や『学会による技術認定がふさわしいもの』があるのではないか」との指摘がなされました。多くの学会から「サブスぺ認定」申請がなされていますが、それらの中には、こうした「3階部分」や「技術認定に該当する」ものが一部含まれていると考えられます。寺本理事長の「3類型(3階建て)」案は、医師専門研修部会の議論にも合致するものと言えます。
寺本理事長は、今後「3階建て」の考え方についても、きちんと決めていきたいとの考えを示しています。
サブスぺ領域については、4月からの研修スタート直前にもかかわらず混乱していますが、次のように整理することができ、寺本理事長は「新専門医資格の取得を目指す専攻医に不利益が及ばない」(つまり研修期間は「無駄」にはならず、何らかの形で「経験症例」などとして認定される)ようにする考えを強調しています。
▼のちに「サブスぺ領域」として認められた場合
→研修開始に遡って、サブスぺ領域の中で経験症例等をカウントする
▼のちに「サブスぺ領域」として認められなかった場合
→「学会認定の専門医」研修の一環として扱う
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