新専門医目指す「専攻医」、2021年度採用は9227名、2022年度のシーリングは現行踏襲―日本専門医機構
2021.2.22.(月)
2021年度から「新専門医資格を目指して研修を開始する専攻医」として病院に採用された医師は9227名となる見込み―。
日本専門医機構の寺本民生理事長は、2月22日の定例記者会見でこういった状況を明らかにしました。
また、医師の地域・診療科偏在を助長しないための「シーリング」について、2022年度採用では現行を踏襲する、2023年度採用に向けた学会と意見調整を進める、考えも明らかにしています。
2021年度からの「新専門医目指す専攻医」は9227名
2018年度から「新専門医制度」が全面スタートしています。従前の専門医制度に向けられていた「各学会が独自の基準で専門医を認定しており、国民に分かりにくく、質が担保されていない」との批判を踏まえ、日本専門医機構と各学会が共同して研修プログラムを作成し、認定を行う仕組みへと改められたものです。
今般、2021年度から研修を開始する「専攻医」の採用状況が寺本理事長から発表されました。昨年(2020年)11月から1次募集・2次募集を行い、今年(2021年)1月時点で採用状況が基本的に固められたものです。ただし、今後「辞退」などが生じ、数字が若干変動する可能性もありますが、およそ「医師免許を取得・医学部を卒業し、医師臨床研修を終えた医師の95%程度」が新専門医資格取得を目指している状況です。
2021年度採用数:9227名
▽内科:2987名(32.37%)
▽小児科:550名(5.96%)
▽皮膚科:306名(3.32%)
▽精神科:552名(5.98%)
▽外科:912名(9.88%)
▽整形外科:627名(6.80%)
▽産婦人科:478名(5.18%)
▽眼科:330名(3.58%)
▽耳鼻咽喉科:219名(2.37%)
▽泌尿器科:314名(3.40%)
▽脳神経外科:256名(2.77%)
▽放射線科:269名(2.92%)
▽麻酔科:462名(5.0%)
▽病理:95名(1.03%)
▽臨床検査:21名(0.21%)
▽救急科:326名(3.53%)
▽形成外科:211名(2.29%)
▽リハビリテーション科:106名(1.15%)
▽総合診療:206名(全体の2.23%)
シーリング、2022年度は現行踏襲、2023年度は学会意見を踏まえて改善する方向で調整
ところで、新専門医制度についても「専門医の質を追求するあまりに養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場にあります。そこで、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用しており、その1つに「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み(シーリング)があります。
2020年度採用分からは、非常に複雑ですが、エビデンス(厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科別の必要医師数」)に基づくシーリング制度が導入されています。
その大枠は、▼「既に必要医師数を確保できている」と考えられる都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―ことなどで、医師の少ない都道府県・診療での研修を専攻医に促すものです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
この点、採用実績や医療現場の状況などを踏まえて「毎年度、改善」されていますが、2022年度採用分(今年(2021年)11月から募集開始される分)については、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえて「2021年度と基本的に同じ仕組み」とすることになりそうです。
ただし、学会からは「専攻医に占める内科のシェアが減少しており、将来の我が国の医療を考えたとき大きな問題である」(内科領域より)、「外科医不足は深刻で、まだまだ増やす必要がある」(外科領域より)、「ICTが発達する中で放射線科医の働き方は大きく変わっており、従前と同じ感が方で地域偏在などを議論することは難しくなってきている」(放射線科領域より)などの意見が出ています。寺本理事長は、今夏(2021年夏)から、基本領域学会と日本専門医機構とで意見交換を行い、そこで「シーリング改善案」をまとめ、厚生労働省の医師専門研修部会(医道審議会・医師分科会の下部組織、専門研修制度について審議を行っている)での了承を得たうえで「2023年度採用分から改善案を適用したい」との考えも示しています。
日本専門医機構では、サブスペシャリティ領域(基本領域の専門医資格を取得した後に、より高度な研修を、より細分化された領域で受けるもの)についての意見をまとめており(44サブスぺ領域について、新専門医制度へ位置づけることの妥当性を検証中)、「2022年度には、従前どおりの考え方でシーリングを設定する」案とともに、医師専門研修部会に提案される見込みです。
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