2024年度診療報酬改定に向けた医療経済実態調査、サンプル数・回答数(率)の向上が最重要ポイント—中医協
2022.10.31.(月)
10月26日に開催された中央社会保険医療協議会で、2024年度の次期診療報酬改定に向けた「医療経済実態調査」「入院・外来等調査」「医療技術評価」に関する議論が行われました。
後2者の「入院・外来等調査」「医療技術評価」の方向は固められましたが、医療経済実態調査については今後も議論が続きます。そこでは「調査精度を高めるため、サンプル数・回答数(率)の向上を目指す」ことが最大の検討ポイントになります。一部に「調査には協力しない」との医療機関もあるようですが、診療報酬改定のベースとなる重要な調査であり、考え方を改めていくことも求められます。
目次
2024年度に向けた医療経済実態調査、サンプル数・回答数の向上が重要ポイント
10月26日の中医協では、2024年度の次期診療報酬改定に向けて、▼第24回医療経済実態調査(関連記事はこちら)▼2022年度の入院・外来医療等(入院・外来・DPC、関連記事はこちら)▼医療技術評価—を議論しました。
まず、第24回医療経済実態調査については、▼サンプル数・回答数(率)の向上を図る▼前回(2022年度改定に向けた第23回)調査に盛り込んだ単月調査をどう考えるか▼看護職員処遇改善評価料の状況を調べるべきか▼検討が始まった医療法人経営状況データベースを補完的にどう取り扱うか(関連記事はこちら)—などが論点となっています。
このうち単月調査は「新型コロナウイルス感染症の影響」を見るために、前回調査に導入されましたが(関連記事はこちら)、「季節変動の影響を受けやすい」「有効回答率が低い」という課題があります。委員からは「単月調査は廃止してよいのではないか」との声が多く出ています。
他方、調査サンプルが少ない・調査精度を高める必要があるとの指摘を踏まえて「抽出率の増加」も検討されます。この点、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「単月調査を廃止する一方で、抽出率の増加(=調査サンプルの増加を目指す)を行うもの理解している」とコメントしています。
また、看護職員処遇改善評価料(関連記事はこちら)については、「実態把握を行うべき」との指摘がある一方で、「厚生局への計画・実績の報告が義務付けられており、それを用いればよいのではないか」との声も出ています。医療機関の負担も考慮した制度設計論議が今後も続けられます。
調査は来年(2023年)6月に行われるため、今後も議論が継続されます。
入院・外来等の2022年度調査内容固まる、一般人対象のオンライン診療意識も調査
入院・外来等に関する調査(入院・外来・DPC)に関しては、10月12日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の議論を踏まえた若干の修正(サンプル数の増加など)が行われ、中医協として了承されています(関連記事はこちら)。今冬(2022年11・12月)に調査が行われ、来春(2023年3月)以降、順次、調査結果・分析結果が明らかにされていきます。
なお、今般調査では「一般国民を対象に、オンライン診療に関するインターネット調査を行う」ことになっています。ネット調査ゆえに「サンプルに偏りが出る」(=若者の回答が多く、高齢者の回答が少ない)ことが想定され、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は「分析で留意を行う」考えを強調しています。
一定基準に該当する医療技術、学会提案・要望と関係なく「再評価」を実施
医療技術評価に関しては、次のような方針が了承されました。
▽2022年度改定で▼「ガイドライン等で記載あり」とされた技術(113件)▼レジストリの登録を要件として保険適用された技術(35件)—について、関係学会からの提案とは別に「医療技術評価分科会での再評価」の対象とする
▽学会からの提案書様式について、臨床的位置づけや根拠の変化の有無を記載することとする
▽医療技術の再評価方法について検証を行うとともに、「既収載技術の再評価方法のあり方」について研究・検討を進める
▽医療技術の体系的評価を進める(STEM7)
▼「1つのKコードに対して、手術部位ごとにSTEM7が分類されている整形外科領域の一部術式について体系化が可能」と考えられたことを踏まえ、整形外科領域の同様の術式についても検証を進め、2024年度改定において検証結果に基づくKコードの体系化を検討する
▼「DPCデータの麻酔時間を用いた現状の評価方法については一定の限界も存在する」ことから、関係学会の保有するデータベースを補完的に利用するなど、関係団体等と連携しつつ、更なる評価方法について検討を進める
2024年度診療報酬改定論議に向けた下準備が着々と進められています。
【関連記事】
DPC機能評価係数IIが著しく低い・高い病院では、診療実態にどのような特徴があるのか—入院外来医療分科会
医療経済実態調査を用いて「医師の給与、看護職員の給与」状況などをどこまで可視化できるか—中医協総会
オンライン資格確認等システム導入にとどまらず、「過去の診療情報を閲覧可能な体制」を多くの医療機関等で整えよ—中医協・総会
看護職員処遇改善評価料の詳細を提示、本年(2022年)10月1日算定開始のためには「10月20日までに届け出」を—厚労省
本年(2022年)10月からの【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】の詳細提示、初診時の「標準的な問診票」も示す—厚労省
オンライン資格確認等システム、来年(2023年)4月からの原則義務化に向け「一刻も早い対応」が必須—厚労省・三師会
本日(2022年8月24日)18時半から、オンライン資格確認等システムのWEB説明会—厚労省
訪問診療や訪問看護等、初回訪問時に「過去の診療情報共有」等の包括同意を取得する仕組みに—社保審・医療保険部会(2)
オンライン資格確認等システム導入の経費補助を充実、医療機関等は「早期の申し込み、システム改修」に努めよ—厚労省
【看護職員処遇改善評価料】を答申、病院ごとの看護職員数・入院患者数に応じた点数を設定—中医協総会(2)
オンライン資格確認等システムを2023年度から保険医療機関等に義務化、導入促進に向け「初診料の新加算」創設—中医協総会(1)
オンライン資格確認等システム、2023年4月から紙レセ医療機関等以外は「原則、導入義務」へ—中医協総会(2)
【看護職員処遇改善評価料】を新設し、コロナ対応病院に勤務する看護職員等の賃金引き上げを推進—中医協総会(1)
診療報酬による看護職員処遇改善、「看護職員等の処遇が確実に継続的に改善される」ためのルール等設定へ—中医協
2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、早くも入院・外来の調査分析項目の大枠を決定—入院外来医療分科会(2)
看護職員の処遇改善、「病院の必要額>報酬額」となるケースに、どこまで・どのように対応すべきか―入院外来医療分科会(1)
看護職員の処遇改善、外来で対応せず「入院の診療報酬上乗せ」のみのほうが患者に分かりやすいのではないか—中医協(1)
「初再診料への上乗せ」と「入院料への上乗せ」組み合わせ、看護職員処遇改善に対応してはどうか―入院外来医療分科会
「看護職員の処遇改善」に向けた診療報酬、負担増となる患者への合理的かつ納得ゆく説明も極めて重要—中医協(1)
「看護職員の処遇改善」への診療報酬対応、無理筋であると病院団体から不満噴出―日病協・小山議長、山本副議長
病院ごとに「看護配置と患者数」などの関係を見て、看護職員処遇改善の診療報酬対応検討―入院外来医療分科会
看護職員等の処遇改善、病院の必要額と診療報酬との間に生じる過不足をどう考えていくかが最大論点—中医協総会
「看護職員の処遇改善」に向けた診療報酬対応、「消費税対応の二の舞」となることを懸念―日病協
感染対策、ICU等の早期離床・リハ加算、MFICUの成育連携支援加算、湿布薬上限など明確化―疑義解釈6【2022年度診療報酬改定】
感染対策向上加算等の研修や訓練・カンファレンス実績、届け出時点では不要―疑義解釈4【2022年度診療報酬改定】
10月からの看護職員処遇改善、「看護師数×1万2000円」財源を診療報酬でどう配分すべきか―入院外来医療分科会
外来腫瘍化学療法診療料とがん患者指導料「ハ」、同一患者に併算定できない―疑義解釈3【2022年度診療報酬改定】
一般病棟・ICUの看護必要度、2022年度診療報酬改定踏まえて詳細を明示―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(3)
地域ごとに「面で感染症に対応できる体制」構築のための【感染対策向上加算】―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(2)
急性期充実体制加算の緊急手術・看護必要度II・敷地内薬局NG等の考え方整理―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(1)
2022年度GHC診療報酬改定セミナー!急性期医療の定義に切り込んだ「医療提供体制改革」を進める改定内容!
井内医療課長・鈴木前医務技監がGHC改定セミナーに登壇!2022年度改定で何を目指すのか!
看護職員処遇改善のための診療報酬設定論議スタート、まず技術的課題等を分科会で整理―中医協総会
2022年度のDPC機能評価係数IIトップ、大学病院群で和歌山医大病院、特定群で帯広厚生病院、標準群で飯山赤十字病院
生殖補助医療、従前の支援事業で6回終了したとしても、要件満たせば保険診療で改めて6回チャレンジ可
「クリニック・中小病院」と「紹介受診重点医療機関」との双方向情報連携を【連携強化診療情報提供料】で評価
新設された【看護補助体制充実加算】、病棟の看護師長、病棟看護師、看護補助者のそれぞれで所定研修受講など要件化
療養病棟で「中心静脈栄養離脱に向けた摂食・嚥下機能回復」実施促すための飴と鞭
一部疾患でDPC病棟への入棟経路ごとの分類を設定、DPC全般でさらに「在院日数短縮」が重要テーマに―厚労省
複数の減算ルールに該当する地域包括ケア病棟、「減算を複数適用した低い点数」算定に―厚労省
スーパーICU評価する【重症患者対応体制強化加算】を新設、ECMOの処置料・管理料を設定―厚労省
急性期充実体制加算の施設基準、全身麻酔手術2000件以上、救急受け入れ2000件以上、時間外加算1取得など―厚労省
【2022年度診療報酬改定答申17】救急医療管理加算の点数引き上げと対象状態拡大、あわせて「不適切事例」への対処も
【2022年度診療報酬改定答申16】安全性・有効性を確認した不妊治療技術を保険適用、生殖補助医療では年齢・回数制限
【2022年度診療報酬改定答申15】小入管の加算新設など、小児、新生児等への医療提供充実を診療報酬でサポート
【2022年度診療報酬改定答申14】オンライン初診料は251点に、オンラインの医学管理・在総管の点数を整理
【2022年度診療報酬改定答申13】後発品使用促進、人工腎臓の適正化、リフィル処方箋など組み合わせ医療費の膨張抑止
【2022年度診療報酬改定答申12】外来化学療法の評価、がん患者の遺伝子パネル検査・結果説明などの評価を大幅充実
【2022年度診療報酬改定答申11】訪問看護でも『量の拡大』と「質の向上」目指す、専門性の高い看護師への期待高まる
【2022年度診療報酬改定答申10】在宅医療の「裾野」を拡大して量を充実、「頂」を高くして質の向上を目指す
【2022年度診療報酬改定答申9】療養病棟、障害者施設・緩和ケア病棟、有床診のそれぞれに「適切な機能発揮」促す
【2022年度診療報酬改定答申8】地域全体の感染防止対策強化を目指し、感染防止対策加算を改組し、外来で新加算創設
【2022年度診療報酬改定答申7】かかりつけ医機能の明確化に向け、機能強化加算の施設基準・算定要件を厳格化
【2022年度診療報酬改定答申6】紹介受診重点病院を加算で評価、外来→在宅の円滑移行を新たな診療報酬でサポート
【2022年度診療報酬改定答申5】地域医療体制確保加算、医師事務作業補助体制加算、夜間看護配置に関する加算を軒並みアップ
【2022年度診療報酬改定答申4】質の高いリハ提供できない回復期リハに退場宣告、特定機能病院での良質なリハに注目
【2022年度診療報酬改定答申3】大規模病院の地域包括ケア病棟にも在宅患者受入れ促すため、飴(加算)と鞭(減算)
【2022年度診療報酬改定答申2】手厚い医療体制敷くICUに新加算、3日以内750点、4-7日500点、8―14日300点ON
【2022年度診療報酬改定答申1】充実した急性期一般1を評価する新加算、7日以内460点、8-11日250点、12―14日180点に設定