介護保険の福祉用具貸与、2019年10月貸与分から平均貸与・上限価格を引き上げ―厚労省
2019.5.7.(火)
厚生労働省は4月24日に事務連絡「本年10月貸与分から適用される福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表について」を発出し、今年(2019年)10月貸与分からの、福祉用具貸与に関する平均貸与価格・上限価格を明らかにしました。
消費税率引き上げを踏まえ、福祉用具の貸与価格等も1.9%程度引き上げ
公的介護保険サービスの1つとして福祉用具貸与があります。▼車いす(付属品含む)▼特殊寝台(ベッド、付属品含む)▼床ずれ防止用具▼体位変換器▼手すり▼スロープ▼歩行器▼歩行補助つえ▼認知症老人徘徊感知機器▼移動用リフト(つり具の部分を除く)▼自動排泄処理装置—の貸与に係る費用の一部を保険給付するもので、いわゆる「在宅限界」(要介護状態となっても住み慣れた在宅生活を可能とする)を高めることが狙いです。
しかし、福祉用具貸与の価格については「事業所の裁量」(つまり言い値)となっているため、従前「まったく同じ製品であるにもかかわらず、一部事業者が極めて高額な貸与価格を設定している」事例があることが問題視されていました。
このため2018年度の介護報酬改定において、福祉用具貸与に関する次の2の見直しが行われました。ただし、1か月当たりの貸与件数が100件に満たない製品では、価格の振れ幅が大きくなることから、対象から除外されています(関連記事はこちら)。
(1)全国の平均的な貸与価格を公表し、福祉用具専門員が、利用者にこれの情報を説明することを義務付ける(2018年4月および10月から段階的に実施)
(2)福祉用具貸与価格に上限を設ける(2018年10月実施)
福祉用具貸与に関し、保険請求の上限価格を「全国平均価格+1SD(標準偏差)」に定めるものです(同一製品でも、仕入価格や搬出入の経費、保守点検等の費用が事業者により異なることから一定のバッファ(平均から1SD)を置く)。上限を超過する価格を設定している場合、当該事業者の貸与する当該製品については「保険給付を認めない」(つまり全額自己負担となる)。上限価格は毎年度見直す方針が示されているが、2019年度の見直しは行わない(関連記事はこちら)。
ところで、今年(2019年)10月には消費税率が8%から10%に引き上げられ、これを福祉用具の平均貸与価格や上限価格にも反映させる必要があります。消費税率が引き上げられれば、事業者が用具を仕入れる際のコスト(本体価格+消費税)も高くなり、それを貸与価格にも反映させることが必要となるためです。貸与価格全体が上がった場合、あわせて上限価格(保険償還の可否にダイレクトにつながる)も引き上げなければ、利用者に不利益が生じてしまうためです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
消費税率10%に対応する新たな平均貸与価格・上限価格は、「10月貸与」分から適用されます。
厚労省のホームページから、新たな平均貸与価格・上限価格をエクセルファイルでダウンロードすることが可能です(2018年10-2019年9月分のファイルも同様にダウンロード可能)。
●厚労省の「福祉用具」に関するサイトはこちら(「重要なお知らせ」の部分から平均貸与価格・上限価格に関するエクセルファイルをダウンロードできます)
個別製品ごとに価格が設定されているため、その量は膨大ですが、目立つ製品を見てみると次のように1.9%程度の価格引き上げ(110/108)がなされることが確認できます。
(例)
〇介助用電動アシスト車いす「アシストホイールライト」(ナブテスコ社、型番:NAW-16F-SD-LT)
▼2019年9月貸与まで
平均貸与価格:1万3479円、上限価格:1万6070円
↓
▼2019年10月貸与分から
平均貸与価格:1万3729円(9月までと比べ1.85%上昇)、上限価格:1万6370円(同1.87%上昇)
〇ルーツ<あがりかまちタイプ(高さH型両手すり)>(モルテン社、型番:MNTPKH2BR)
▼2019年9月貸与まで
平均貸与価格:4910円、上限価格:5790円
↓
▼2019年10月貸与分から
平均貸与価格:5001円(9月までと比べ1.85%上昇)、上限価格:5900円(同1.90%上昇)
〇電動カート「ラクータースマイル」(クボタ社、型番:ES400)
▼2019年9月貸与まで
平均貸与価格:2万2071円、上限価格:2万4070円
↓
▼2019年10月貸与分から
平均貸与価格:2万2480円(9月までと比べ1.85%上昇)、上限価格:2万4520円(同1.87%上昇)
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