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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

病院の保険診療には消費税を「課税」し、病院間で消費税負担に不公平のない仕組みとせよ―四病協

2019.5.30.(木)

 医療の消費税問題について、病院では「原則、課税」とし、抜本的な解決を図るべきである。それまでの間は、診療報酬プラス改定での対応となるが、個別病院間の補填の過不足に対応するための措置を行うべきである。また、医師の働き方改革の実現に向けて「人材確保に向けた予算措置」「ICT化に向けた財政支援」などを行うべきである―。

 日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)は5月24日に、根本匠厚生労働大臣に宛てて、こういった内容を盛り込んだ2020年度の「予算概算要求に関する要望」書を提出しました(日本病院会のサイトはこちら)。

医療の消費税問題、非課税のままで「不公平解消」はできない

 四病協の要望項目は、▼消費税▼働き方改革▼医療従事者の能力向上▼介護施設・介護従事者▼地域医療介護総合確保基金▼医療機関のICT化▼社会の国際化等への医療の対応▼障害保健福祉▼災害対策―の大きく9項目。多岐にわたっているため、ポイントを絞って眺めてみましょう。

 まず「消費税」に関しては、病院の保険診療について「原則、課税」とし、個別医療機関の補填過不足を解消すべきと要望しています。

保険診療については消費税非課税となっているため、医療機関が物品購入等の際に支払った消費税は、患者・保険者負担に転嫁できず、医療機関が最終負担しています(いわゆる控除対象外消費税)。消費税率の引き上げによりこの負担が増加するため、特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填が行われますが、個別医療機関により診療報酬の算定内容は異なることから、補填の過不足が生じてしまいます。2019年度の消費税対応改定では、病院の種類に応じた補填を行うなどの「精緻な対応」が図られていますが、個別病院の補填過不足を解消することはできません(関連記事はこちらこちら)。

課税経費率の内容、考え方

課税経費率の内容、考え方

 
この点、昨年(2018年)夏には四病協と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)との合同で、▼消費税非課税・消費税対応改定による補填は維持する▼個別の医療機関ごとに、補填の過不足に対応する(不足の場合には還付)―という仕組みの創設が要望されましたが(関連記事はこちらこちら)、与党の税制調査会は「税理論の中で、非課税制度を維持したまま税の還付を行うことはできない」とし、事実上のゼロ回答にとどまりました(関連記事はこちら)。

日本医師会は「消費税問題は解消」としていますが、物品購入量が多い病院(特に急性期病院)では補填不足が生じやすく、また民間病院では、クリニックと異なり、いわゆる四段階制(社会保険診療報酬の所得計算の特例措置で、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする)などの優遇措置もありません。このため四病協では、抜本的な解決が必要と判断し、「原則課税」とするよう求めているものです。消費税課税となれば「還付」も可能となり、個別医療機関の補填過不足を解消することが可能と考えられます。

もっとも、非課税措置を課税に改めるには時間をかけた論議が必要となることから、四病協では「現行の非課税制度の中で、補填によるバラつきが完全に解消されるまで、補てん不足医療機関には必要な財源措置を講ずる」ことも求めています。

働き方改革実現のための人材確保や、ICT化などを支援せよ

 
 また「働き方改革」に関しては、▼医師の増員が必要となることから、「診療報酬以外に医師の人件費に相当する部分への予算措置」▼タスク・シフティング(医師から他職種への業務移管)、タスク・シェアリング(医師間での業務分割)に必要な医療人材確保・養成に係る財政的補助▼医療従事者に対する処遇改善への予算確保(介護現場では処遇改善加算の予算が従前から確保されている)▼看護職員の離職防止に向けた施設(宿舎や院内保育施設)整備の補助▼仕事と家庭の両立支援の推進(看護職員等再就業支援事業)▼育児休暇に係る財政的補助▼医療人材資源を補完するICT・ロボット等導入への財政的補助▼病院給食における新調理システム等の導入に関する補助―などを求めています。

 勤務医については2024年4月から、看護師など他職種に関しては今年(2019年)4月から新たな時間外労働上限規制が導入され(てい)ます。労働時間短縮を進めるためには、タスク・シフティング、タスク・シェアリングが必要となり、このためには職員の増員(前者であれば他職種、後者であれば医師)が欠かせません。こうした職員増には、当然、コストが必要となり、「予算措置」を訴えているのです(関連記事はこちらこちら)。

 もっとも、多くの病院が「職員増」に動くことから、医療人材の確保は「困難」の度合いを高めていきます。さらに少子化に伴い、人材確保ができない事態も生じます。このため四病協は、▼ICT・ロボットの導入▼新調理システムの導入―なども併せて求めています。

電子カルテの標準化に向けた医療情報化支援基金、確実な実施を

 
 また、高齢者患者では多くの疾病を抱え、また全身の機能が低下していることから、「個々の臓器に着目した治療」ではなく、「全身を管理する総合的な治療」が必要となります。高齢化が進行する中では、こうした「総合的な治療」能力を持つ医師に期待が集まり、日本病院会では「病院総合医」(新専門医制度の総合診療専門医とは異なる)の養成を進めています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この取り組みがより多くの病院に浸透することが期待される中、四病協は「医師が専門性を有しつつ、総合的診療能力の獲得を促すキャリア支援事業を実施している病院団体に対して、経費補助を行う」よう求めています。

 
さらにICT化に関しては、今年度(2019年度)予算で創設された「医療情報化支援基金」(医療ICT化促進基金)による「電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等導入支援」の確実な実施とともに、「医療機関における初期導入経費」への補助を求めました。

電子カルテは多くの医療現場に浸透していますが、ベンダーが独自に開発し、個々の医療現場の要望を踏まえた進化が行われているため、「異なるシステム間で、事実上、データの互換性がない」と指摘されています。これは、ベンダーによるユーザー(医療機関)の囲い込み(システムの乗り換えをすると、システム上で過去のデータが活用できない)であると批判されるとともに、地域医療連携を阻害する大きな要因になっているとも指摘されます(異なるシステムを利用する医療機関間でデータの連結等ができない)(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そこで厚労省は、2019年度予算において「電子カルテデータを連結するためのコンバータシステムなどを導入する医療機関に対し、その費用の一部を補助する」ことなどを目的とした医療情報化支援基金(300億円)を設置したものです(関連記事はこちら)。
2019年度予算案4 181221
 
  
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