Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

病院の働き方改革等に向け、多職種の行為を診療報酬で評価し、入院基本料を引き上げよ―日病協

2019.5.27.(月)

 医師をはじめとする医療従事者の働き方改革が求められている。これを実現するには「スタッフの増員」などが不可欠となり、全病院の収入のベースとなる【入院基本料】の引き上げが必要となる。また、メディカル・スタッフが主役となる行為の診療報酬での評価を充実させることで、タスク・シフティングなども円滑に進むと考えられる。さらに、救急医療患者の増加・状態の多様化に対応できる「新たな評価体系・報酬体系の構築」が必要である―。

 日本精神科病院協会や日本病院会、全日本病院協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」は5月24日に、厚生労働省保険局の樽見英樹局長に宛てて、こういった内容を盛り込んだ2020年度診療報酬改定に関する要望書を提出しました(日本病院会のサイトはこちら)。

メディカル・スタッフの行為を診療報酬で評価することで、モチベーションアップも

 日病協の2020年度改定に向けた要望項目は、次の5項目。▼地域医療構想や地域包括ケアシステムの推進▼医師の働き方改革▼医師偏在の解消―など、医療を取り巻く課題が山積する一方で、病院経営はさらに厳しい状況になっていることを訴え、我が国の医療の「さらなる向上」と「持続可能性」を追求するための診療報酬改定が必要と強調しています。

(1)医師をはじめとする医療従事者の働き方改革推進支援
(2)医療機関の機能分化・連携強化
(3)多職種協働・チームアプローチとタスクシフティング・タスクシェアリングの推進
(4)救急医療体制評価の充実
(5)医療版 ICT 推進と診療報酬体系や基準届出・保険請求業務の簡素化

 2020年度診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会・総会では「総論」論議を行っている最中であり(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)、個別具体的な点数項目の要望ではなく、大きな「2020年度改定方針」に向けた要望と言えるでしょう。

 
 まず(1)の「働き方改革」については、もっぱら「病院における医療従事者(勤務医、看護師など)」の労働時間短縮、業務改善(生産性の向上やタスク・シフティングなど)が重要である点を確認したうえで、▼病院の医療従事者の人件費のベースとなる【入院基本料】の増額▼専従・専任要件をはじめとする各種施設基準・関連加算要件等の抜本的な緩和措置―を求めています。

 例えば医師の働き方改革では、2024年4月からの年間時間外労働の上限を▼原則960時間▼救急病院などの地域医療確保に欠かせない場合の暫定的特例として1860時間―とすることが決まり、今後、5年間で全医療機関(特に病院)において労務管理を徹底するとともに、労働時間短縮に、強力に取り組んでいくことが求められます。

 この点、例えば救急科や外科などで医師の労働時間を短縮するためには、▼医師の増員を図る▼他職種への業務移管(タスク・シフティングを進める)▼不要な業務の整理を行う―ことなどが考えられますが、医師の増員はもちろん、他職種への業務移管をする場合でも、その他職種の確保が必要となり、「人件費増」が予想されます。日病協では、この人件費増を賄うために、全病院に共通の収入源となる【入院基本料】の増点を求めていると考えられます(【手術】などの特定診療料の増点では、必ずしも収入増とならない病院が出てくる)。

 
 また(2)の機能分化・連携強化は、2025年度に向けた「地域医療構想の実現」において不可欠です。2025年度には、いわゆる団塊の世代が、すべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増大すると見込まれ、現在の医療・介護提供体制ではこれを賄えないと目されるためです。

 この点、日病協では、【特定入院料】算定病棟で高額薬剤等を含む包括評価などが「機能分化を阻害する要因の1つ」になっていると分析。▼特定入院料の包括範囲見直し▼同一医療機関の複数科受診時の算定要件緩和―などを行うよう求めています。

 
 一方、(3)の「多職種協働」などは、昨今の医療提供体制において最重要テーマの1つとされています。またこれらは、(1)の「医師の働き方改革」の実現においても不可欠の要素となります。

 日病協では、▼「医師・看護師中心の病棟配置基準」から「薬剤師・管理栄養士・リハビリ専門職などの多職種を加味した配置基準」への抜本的な見直し▼各種加算などの見直しによるタスク・シフティング、タスク・シェアリングの推進―を要望しています。

後者については、より多くの専門職の「行為」を診療報酬で評価することを求めるものと言えるでしょう。例えば、A244【病棟薬剤業務実施加算】は、病棟薬剤師が「入院患者の過去の投薬・注射、副作用発現状況などの情報収集」などを行うことで、医療安全が高まり、医師の負担が軽減されることなどを評価する、「メディカル・スタッフ(薬剤師)が主役」の診療報酬項目です。しかし、診療報酬項目を見ると、こうした「メディカル・スタッフが主役」の加算は、ごくごく少数派にとどまっているのが実際です(A242【呼吸ケアチーム加算】、A233-2【栄養サポートチーム加算】などなど)。診療報酬での評価は、病院における「メディカル・スタッフ配置への経済的インセンティブ」になるにとどまらず、メディカル・スタッフが「自らの行為が経済的に評価され、病院経営に役立っている」と自覚できる極めて重要な機会となります。メディカル・スタッフがこうした意識を持てば、チーム医療がより積極的に組織され、円滑に稼働することが期待され、これは確実に「医療の質向上」につながります。非常に重要な要望項目と言えるでしょう。

 
また(4)では、A205【救急医療管理加算】で主に評価されてきた救急医療体制について、救急患者の増加・多様化を踏まえた「新たな評価体系・報酬体系」を求めています。

A205【救急医療管理加算】は、重症の救急患者を受け入れる医療機関を評価する点数項目ですが、従前より「対象患者が曖昧である」「軽症患者でも算定しているケースがある」と指摘され、さまざまな見直しが行われてきています(加算の区分化と、症状が明確でない患者の点数引き下げなど)。日病協では、こうした見直しが、必ずしも救急医療の現場にマッチしておらず、抜本的な見直しを行い、「新たな評価体系」を構築せよと要望しています。日病協の描く「新たな救急医療の評価体系・報酬体系」がどのようなものか、注目を集めそうです

 
さらに(5)では、▼電子カルテ等のシステム導入・維持・更新、システム平準化に対する診療報酬上の評価▼年々複雑化する診療報酬体系の簡素化―を求めています。

 
 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

【関連記事】

外来医療の機能分化に向け、「紹介状なし患者の定額負担」「かかりつけ医機能の評価」など議論―中医協総会(2)
画期的な白血病治療薬「キムリア」を保険収載、薬価は3349万円―中医協総会(1)
高齢者へのフレイル・認知症・ポリファーマシ―対策、診療報酬でどうサポートすべきか―中医協総会(3)
診療報酬で生活習慣病の重症化予防、治療と仕事の両立をどう進めていくか―中医協総会(2)
遺伝子パネル検査の保険収載に向けた検討進む、C-CATへのデータ提出等を検査料の算定要件に―中医協総会(1)
「院内助産」「外来での妊産婦対応」を診療報酬でどう支援していくべきか―中医協総会(2)
2020年度改定論議スタート、小児疾患の特性踏まえた診療報酬体系になっているか―中医協総会(1)
2020年度診療報酬改定に向け、「医師働き方改革」等のテーマ別や患者の年代別に課題を議論―中医協総会
東日本大震災を受けた診療報酬の被災地特例、福島では継続するが、宮城・岩手は最長2021年3月で終了―中医協総会(2)
要介護高齢者への維持期「疾患別リハ料」は2019年3月末で終了、介護保険への移行完了―中医協総会(1)

 
維持期リハビリの介護保険への移行に伴い、リハビリ点数の解釈を明確化―疑義解釈13【2018年度診療報酬改定】
腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術、日本産婦人科学会等の最新指針を遵守せよ―疑義解釈13【2018年度診療報酬改定】
急性白血病等の治療法選択するNUDT15遺伝子検査、例外的に治療開始後にも算定可能―疑義解釈12【2018年度診療報酬改定】
ベンゾジアゼピンの1年処方、全日病研修修了者も通常の処方料・処方箋料を算定可能―疑義解釈11【2018年度診療報酬改定】
【看護夜間体制加算】、夜間の看護補助4時間以上配置は「週3日以上」でよい―疑義解釈9【2018年度診療報酬改定】
看護必要度II、「一覧に記載された薬剤」の後発品も評価対象―疑義解釈8【2018年度診療報酬改定】
看護必要度II、3月・9月中に切り替える場合は実績期間も前倒し可能―疑義解釈7【2018年度診療報酬改定】
一般の病床が満床で差額ベッドのみ空床の場合、懇切丁寧な説明と同意あれば差額ベッド代徴収は従前通り可能―疑義解釈6【2018年度診療報酬改定】
看護必要度II、一覧に記載された薬剤の「類似薬」も評価対象に―疑義解釈5【2018年度診療報酬改定】
看護必要度II、投薬・注射・手術・麻酔の薬剤のみ評価対象―疑義解釈4【2018年度診療報酬改定】
自院で介護保険訪問看護を実施していれば、地域包括1・3の選択基準満たす―疑義解釈3【2018年度診療報酬改定】
7対1病院が急性期一般1を算定する場合、9月までは特段の届け出不要―疑義解釈2【2018年度診療報酬改定】
保険診療上の【オンライン診療料】、実施指針よりも厳格に運用―疑義解釈1【2018年度診療報酬改定】(3)
医療安全のピアレビュー、抗菌薬の適正使用推進を評価する加算を新設―疑義解釈1【2018年度診療報酬改定】(2)
看護必要度IIの詳細、入院時支援加算における専従・専任看護師の規定など解説―疑義解釈1【2018年度診療報酬改定】(1)

外来から入院、退院後の在宅医療までをマネジメントするPFM、さまざまなメリットが!
鈴木医務技監・迫井医療課長がGHC改定セミナーに登壇!「重症患者受け入れ」に軸足を置いた入院報酬に!

200床以上で看護必要度II要件を満たさない場合、急性期一般入院料2・3は届出可能か―厚労省
DPCのEF統合ファイル用いる看護必要度II、選択可能な病院の条件を提示―厚労省

2018年度診療報酬改定、答申内容を一部訂正―厚労省
【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報4】医療従事者の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算を50点引き上げ
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
【2018年度診療報酬改定答申・速報2】入院サポートセンター等による支援、200点の【入院時支援加算】で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定

ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)
2018年度改定、入院料の再編・統合、かかりつけ機能の評価拡充などが柱に―中医協総会 第382回(3)
かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ―中医協総会 第382回(2)
7対1・10対1を再編し7つの急性期入院料を新設、重症患者割合が争点―中医協総会 第382回(1)
【2018年度診療報酬改定総点検3】複数医療機関による訪問診療をどこまで認めるべきか
【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる
【2018年度診療報酬改定総点検1】入院料を再編・統合、診療実績による段階的評価を導入
2018年度改定、年明けからの個別協議に向け各側がスタンスを表明―中医協総会
麻酔科医の術前術後管理の重要性を勘案し、麻酔管理料の評価充実へ―中医協総会 第379回
「専従」要件の弾力運用、非常勤リハビリスタッフの「常勤換算」を認める―中医協総会 第378回
かかりつけ薬剤師の推進目指すが、「かかりつけ」を名乗ることへの批判も―中医協総会 第377回(5)
介護施設を訪問して入所者を看取った場合の医療機関の評価を拡充―中医協総会 第377回(4)
腹膜透析や腎移植、デジタル画像での病理診断などを診療報酬で推進―中医協総会 第377回(3)
療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
「入院前」からの外来で行う退院支援、診療報酬で評価―中医協総会 第377回(1)
薬剤9.1%、材料7.0%の価格乖離、診療報酬本体プラス改定も―中医協総会 第376回(3)
退院支援加算2でも、地域連携診療計画加算の算定を可能に―中医協総会 第376回(2)
7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定―中医協総会 第376回(1)
抗菌剤の適正使用推進、地域包括診療料などの算定促進を目指す—第375回 中医協総会(2)
退院支援加算1、「ICT活用した面会」などを弾力的に認める—第375回 中医協総会(1)
安定冠動脈疾患へのPCI、FFR測定などで「機能的虚血」確認を算定要件に—中医協総会374回(1)
地域包括ケア病棟の評価を2分、救命救急1・3でも看護必要度を測定—中医協総会(2)
7対1・10対1基本料を再編・統合し、新たな入院基本料を創設へ―中医協総会(1)
内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)
療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)
訪問看護ステーション、さらなる機能強化に向けた報酬見直しを—中医協総会(2)
病院に併設する訪問看護ステーション、手厚く評価をすべきか—中医協総会(1)
診療報酬でも、「同一・隣接建物に住む患者」への訪問で減算などを検討—中医協総会(1)
紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ—中医協総会(2)
2016年度改定後に一般病院の損益比率は▲4.2%、過去3番目に悪い—中医協総会(1)
保湿剤のヒルドイド、一部に「極めて大量に処方される」ケースも―中医協総会(3)
生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)
ICT機器用いた遠隔診察、対象疾患や要件を絞って慎重に導入を―中医協総会(1)
臓器移植後の長期入院、患者からの「入院料の15%」実費徴収禁止の対象に―中医協総会
要介護者への維持期リハ、介護保険への完全移行「1年延期」へ―中医協総会(2)
回復期リハ病棟のアウトカム評価、次期改定で厳格化すべきか—中医協総会(1)
統合失調症治療薬クロザピン使用促進に向け、精神療養の包括範囲を見直し—中医協総会(2)
向精神薬の処方制限を2018年度改定で強化、薬剤種類数に加え日数も制限へ—中医協総会(1)
医療安全管理部門への「専従医師」配置を診療報酬で評価すべきか―中医協総会(2)
医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)
抗菌薬適正使用に向けた取り組みや医療用麻薬の投与日数をどう考えるか—中医協総会(2)
小児入院医療管理料、がん拠点病院加算と緩和ケア診療加算を出来高評価に—中医協総会
レセプトへの郵便番号記載、症状詳記添付の廃止、Kコードの大幅見直しなど検討—中医協総会
認知症治療病棟でのBPSD対策や入退院支援の在り方などを検討—中医協総会
2018年度から段階的に診療報酬請求事務の効率化や、診療データ活用などを進める—中医協総会
地域包括ケア病棟、「病院の規模」や「7対1の有無」などと関連させた議論に—中医協総会(1)
医療療養2、介護医療院などへの移行に必要な「経過措置」を検討—中医協総会
オンラインでのサービス担当者会議などを可能にし、医療・介護連携の推進を—中医協・介護給付費分科会の意見交換
要介護・維持期リハビリ、介護保険への移行を促すため、診療報酬での評価やめるべきか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)
訪問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
医療機関での看取り前の、関係者間の情報共有などを報酬で評価できないか―中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)
主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)
2018年度改定に向け入院医療の議論も始まる、機能分化に資する入院医療の評価を検討―中医協総会(1)
2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会

地域で求められる医療を提供する医療機関を応援―厚労省医療課の林補佐がGHCの2016年度改定セミナーで講演