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新型コロナ患者へのアビガン錠(ファビピラビル)投与には観察研究への参加が必要、催奇形性等に留意―厚労省

2020.5.1.(金)

新型コロナウイルス感染症の治療のためにアビガン錠(ファビピラビル)を投与するためには、藤田医科大学・国立国際医療研究センターが代表研究機関を務める観察研究に参加し、必要な手続きをとることが必要となる―。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は4月27日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビルに係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の提供に関する周知依頼について」を示し、こうした点を明確にしました(厚労省のサイトはこちら(事務連絡本文)こちら(詳細な別添))。

4月26日時点で、当該研究には1100の医療機関等が参加し、投与症例数は2194、データベース登録症例数は1069となっています。

アビガン錠には催奇形性や肝機能障害、腎機能障害などの副作用可能性がある点に留意

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、「治療法の開発」への期待が高まっており、厚労省研究班で、さまざまな抗ウイルス薬の新型コロナウイルス治療への効果が分析されているところです。

この点、報道等で「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)が取り上げられることも多く、医療現場からの問い合わせが少なくないことを受け、厚労省は今般の事務連絡で「ファビピラビルに係る観察研究の概要、研究に使用するための医薬品提供」についてまとめたものです。

まず、アビガン錠(ファビピラビル)の効能効果は、現時点では「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症」(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効・効果不十分なものに限る)とされています。したがって、新型コロナウイルスへの効果は明らかでなく、現在、研究中であること、動物実験では催奇形性も確認されていることから、新型コロナウイルス患者の治療にアビガン錠(ファビピラビル)を用いる場合には、▼医療機関が研究班による観察研究に参加する▼患者本人の同意がある▼医師がその必要性を判断する―という要件を満たすことが必要です。

観察研究に参加するためには、次の「患者要件」と「医療機関要件」を満たすことが求められます。

▽患者要件
患者の同意を取得した上で、医療機関の医師の医学的判断に基づきアビガン錠(ファビピラビル)を新型コロナウイルス感染症患者に使用できるが、▼妊娠可能な女性▼妊娠させる可能性のある男性―への投与については「慎重な検討」が必要となる

なお、日本感染症学会の「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」では、▼概ね50歳以上の患者で、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例▼糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者で、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例▼年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例―が対象となる、としている

▽医療機関要件
▼医師の管理下で、確実な服薬管理・残薬管理ができること
▼患者本人の同意を取得した上で、実際に使用すること(同意文書の雛型は国立国際医療研究センター国際感染症センターのホームぺージで公開中:http://dcc.ncgm.go.jp/information/index.html)
▼観察研究について、院内の倫理審査委員会の承認を受けること(倫理審査委員会が、医療機関にない場合は、観察研究を行う代表研究機関(国立国際医療研究センター、藤田医科大学)の倫理審査委員会による中央審査を採用するので、詳細は下記に相談する)
▼薬剤の適応外使用について、各医療機関で定められている通常必要な手続きを実施すること(医療法では、特定機能病院・臨床研究中核病院において「未承認新規医薬品等を用いた医療提供実施の適否を確認する部門」の設置等を義務化し、その他の病院では努力義務としている)



こうした要件を満たした場合には、新型コロナウイルス感染症患者へのアビガン錠(ファビピラビル)投与の研究に参加することできますが、「アビガン錠(ファビピラビル)を投与した症例」についての必要な情報を担当窓口(藤田医科大学・国立国際医療センター)に提供することが必要となります。

問い合わせ先は、内容に応じて次のようになります。
【研究に関すること】▽藤田医科大研究事務局:covid-19@fujita-hu.ac.jp▽NCGMレジストリ研究事務局:registry.covid@hosp.ncgm.go.jp
【副作用等の薬剤の情報に関すること】▽富士フイルム富山化学株式会社:fftc-avigan@fujifilm.com
【その他、薬剤の提供等に関すること】▽厚労省医政局研究開発振興課治験推進室:chikensuishin@mhlw.go.jp



このほか、厚労省は次のような点を示しています。

▽アビガン錠(ファビピラビル)の供給を希望する場合には、「投与前までに医療機関内手続き(上述の倫理審査委員会や医薬品適応外使用等の手続)が終了する見込みであること」「患者への同意が確実に得られる見込みがあること」「投与を予定する患者数」を担当窓口(上述)に伝達する

▽アビガン錠(ファビピラビル)の副作用
▼動物実験では「初期胚の致死、催奇形性」が確認されており、「妊婦または妊娠している可能性のある婦人」には投与しない
▼精液中に移行することも確認されており、「妊娠させる可能性のある男性」への投与には慎重な検討が必要である
▼「妊娠する可能性のある女性」「妊娠させる可能性のある男性」へ投与する際には、催奇形性の危険性を十分に説明した上で、投与期間中・投与終了後7日間はパートナーとともに、「極めて有効な避妊法」の実施を徹底するよう指導する
▼これまでに、アビガン錠(ファビピラビル)投与と因果関係が疑われる有害事象として、肝機能障害、高尿酸血症、腎機能障害、嘔気、皮疹、発熱、高ビリルビン血症が報告されている

▽アビガン錠(ファビピラビル)以外での主な観察研究(参加機能の場合には藤田医科大研究事務局(covid-19@fujitahu.ac.jp)へ連絡する)
吸入ステロイド喘息治療剤の「オルベスコ」(一般名:シクレソニド):基礎研究で、コロナウイルスに対する抗ウイルス活性を確認
膵炎の急性症状改善等に用いる「フサン」(一般名:ナファモスタット):基礎研究で、ウイルスが細胞に接着する分子との結合を阻害し、ウイルスの増殖抑制効果が期待される可能性があると報告

▽介護老人保健施設、重症心身障害児施設、精神科単科の病院で、転院が困難な新型コロナウイルス感染患者に対してアビガン錠(ファビピラビル)による治療を行う場合には、上述の観察研究に施設が参加したうえで、医師の経過観察下で、各施設においてアビガン錠(ファビピラビル)投与を行う



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