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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

正しい方法で情報登録せず、アレルギーある薬剤が投与されてしまう医療事故が散発―医療機能評価機構

2020.8.18.(火)

電子カルテ等の院内情報システムに、「当該医薬品を処方した場合、アラート(警告)が表示される」ような正しい方法でアレルギー情報を登録していなかったために、患者に「アレルギーがある薬剤」が処方・投与されてしまった―。

日本医療機能評価機構が8月17日に公表した「医療安全情報 No.165」から、こうした事例(医療事故)が2015年1月1日から2020年6月30日までの間に9件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

正しい方法でアレルギー情報の登録を行わなかったため、アラートが表示されず、アレルギーのある薬剤が投与されてしまう事例が散発(医療安全情報165 200817)

電子カルテへの「アレルギーのある薬剤」情報、アラートが出る正しい方法で登録を

日本医療機能評価機構では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防ぐことができたものの、「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け、その内容や背景を詳しく分析し、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院等では報告が義務付けられている)。

さらに事故事例などの中から、「特段の留意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として公表し、医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけています(最近の情報は、こちら(IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ)こちら(患者移乗時の転落)こちら(パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例)こちら(気管・気管切開チューブの誤接続事例)こちら(徐放性製剤を粉砕した事例)こちら(立位での浣腸による直腸損傷事例)こちら(鎮静薬の誤調整事例)こちら(小児用ベッドから転落事例)こちら(電子カルテの誤入力)こちら(ガーゼの体内残存2)こちら(ガーゼの体内残存1))。



8月17日に公表された「医療安全情報No.165」では、「アラートが機能しなかったことによるアレルギーがある薬剤の投与」がテーマとなりました。

ある病院で導入されている電子カルテシステムでは、「アレルギー情報を登録する際、▼『薬剤名をリストから選択する』と、同じ成分の薬剤を処方した際にアラートが表示される▼『薬剤名をテキスト入力する』と、同じ成分の薬剤を処方してもアラートが表示されない―仕組み」となっていました。看護師Aはアレルギー情報の登録に慣れておらず、また院内のルールも知らなかったことから、電子カルテに「アレルギーのある薬剤」として「クラビット」とテキスト入力しました。クラビット錠は広域抗菌剤の1つで、一般名はレボフロキサシン水和物です。前述した電子カルテの仕様のため、医師が「レボフロキサシン錠」を処方した際には、アラートは表示されませんでした。レボフロキサシン錠が薬剤部より払い出され、看護師Bが患者に渡した。患者が同剤を内服してから1時間後に、患者に呼吸困難感と眼瞼浮腫などのアレルギー症状が出現してしまいました。



また別の病院で導入されている電子カルテシステムでは、「アレルギー情報にペニシリン系の薬剤を1剤選択して登録すると、処方の際には、院内で採用されている『すべてのペニシリン系の薬剤』にアラートが表示される」仕組みとなっていました。通常、「薬剤を検索して登録」しますが、医師は「ペニシリン、ケフラール」とテキスト入力してしまいました。手術後、医師は当該患者について「ペニシリン系の薬剤にアレルギーがある」ことを失念しており、抗菌剤の「スルバシリン静注用」(一般名:スルバクタムナトリウム アンピシリンナトリウム)を処方しました。その際、電子カルテにはテキストでアレルギー情報が入力されていたために、アラートが表示されませんでした。投与開始後、患者が上肢の痺れと息苦しさを訴えたため、投与を中止しています。



患者のアレルギー情報は、医療安全確保において極めて重要であり、当該情報は正確に確認し、かつ院内で共有する必要があります。このため、各種の電子カルテシステムでは、アレルギー情報を登録すると、アレルギーの可能性がある薬剤が処方された場合にアラート(警告)が出るような仕様となっています。

しかし、事例のように「アレルギー情報を正しく入力しなければ、必要なアラートが示されない」こともあります。上記の事例では、「電子カルテシステムの中で、提示された薬剤を選択する」手法をとる必要があるところ、「テキスト入力」をしてしまい、アレルギー情報が共有されませんでした。

アレルギーのある薬剤を誤って投与してしまった場合、患者が死亡に至るケースもあり、医療現場では最大限の注意を払う必要があります。

機構では事態を重くみて、▼「処方時にアラートが表示される登録方法」を周知する(事例では「電子カルテシステムの中で、提示された薬剤を選択する」方法だが、システムによって異なる点に留意)▼「テキスト入力(フリー入力)で登録すると、処方時にアラートが表示されない」ことを注意喚起する▼患者のアレルギー情報は「処方時にアラートが表示される方法」で登録する―点を強く求めています。

例えば、新入職員等は院内システムやルールに詳しくないこと、また他院で経験を積んだスタッフでは「他院のシステムの仕組みに引きずられてしまいがちである」(他院では正しいが、自院では誤っている方法を、「自院でも正しい」と勘違いしてしまいがち)ことなどを勘案し、教育担当者等からの十分な周知を行うとともに、自院のシステムになれるまでは「複数人での入力」「入力内容のダブルチェック」なども考慮すべきでしょう。

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