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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

新専門医制度の専攻医、2020年度から都道府県別・診療科別必要医師数踏まえたシーリング設定―医師専門研修部会(1)

2019.5.15.(水)

 2020年度における「新専門医の専攻医」採用上限について、厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科(領域)別の必要医師数」をベースに次のような考え方で設定してはどうか―。

(1)2016年の医師数が「2016年・2024年の必要医師数」を上回っている都道府県・診療科をシーリング対象とし、採用数は「2019年度の採用実績」を上回らないこととする

(2)採用数上限のうち、一部を「シーリングのかかっていない都道府県」での勤務期間が50%以上となる連携プログラムとする

(3)連携プログラムの一部を「医師不足が顕著な都道府県」(2016年の医師数が必要医師数の80%未満)での勤務期間が50%以上となる「都道府県限定分」の連携プログラムとする

 例えば、東京都の内科領域では、2019年度の専攻医採用実績と同じ515名を採用数上限とし(1)、うち77名分を「他地域で50%以上の期間、勤務する連携プログラム」とし(2および3)、残り438名分をこれまで通りの研修プログラムとして設定する―。

こういった内容が、5月14日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)で概ね了承されました(関連記事はこちらこちら)。

5月14日に開催された、「令和元年 第1回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

5月14日に開催された、「令和元年 第1回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

 

都道府県別・診療科別必要医師数をベースに、専攻医採用枠を見直してはどうか

専門医資格は、従前、各学会が独自に養成・認定を行っていました。しかし、「国民に分かりにくくなっている」「質が担保されているか不明確である」との批判を受け、2018年度から、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する仕組みへと改められました。

もっとも、「専門医の質を追求するあまり、専門医養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚生労働省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています。その一環として「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限(シーリング)を設ける」などの対策が図られています(関連記事はこちらこちらこちら)。

ただし、現在のシーリングには明確な根拠がなく、愛知県と神奈川県は「医師多数ではないにも関わらず、シーリングがかけられている」ため、厚労省は「シーリング設定方法の早急な見直しが必要」と判断。3月22日の前回専門研修部会に次のような提案を行いました(関連記事はこちら)。

▼2016年の医師数(仕事量)が、2016年の必要医師数または2024年の必要医師数を上回る、あるいは同等である都道府県・診療科(領域)について、シーリングの対象とする(関連記事はこちら

▼シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、医師少数都道府県の医療機関で、研修期間の50%以上を研修(勤務)する新たな連携プログラムを設けることを必須とする

▼シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、地域貢献率を20%以上とする

厚労省案を精緻化し、激変を緩和する日本専門医機構のシーリング案を了承

 この考えによれば、東京都の内科領域では446-447人程度が採用数上限となる計算です。しかし、2019年度の採用実績を見ると東京都の内科領域は515名であり、マイナス70名という「急激な変動」になってしまいます。

 ただし一定のエビデンスに基づく試算であり、日本専門医機構は、厚労省案をベースに、「2019年度の採用実績を上限として、その中に『医師少数の地域等で50%以上の期間を勤務する連携プログラム』を設定してはどうか」との考えを5月14日の専門研修部会に提示しました。具体的には、次のような仕組みです。なお、外科・産婦人科・病理・臨床検査・救急・総合診療では、さまざまな動きを勘案しなければならないためシーリングはかけられません(関連記事はこちら)。

(1)2016年の医師数が「2016年または2024年の必要医師数」(以下、必要医師数)を上回っている都道府県・診療科をシーリング対象とし、2020年度の採用数は「2019年度の採用実績」を上回らないこととする(東京都の内科では2019年度の採用実績と同じ515名とする)

(2)採用数上限のうち、一部(2割程度を上限)を「シーリングのかかっていない都道府県」(内科では東京都・石川県・京都府・大阪府・和歌山県・鳥取県・岡山県・徳島県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県以外)での勤務期間が50%以上となる連携プログラム(研修医視点からすれば地域研修プログラム)とする(東京都の内科では77名分)

(3)連携プログラムの一部(5%を上限)を「医師不足が顕著な都道府県」(2016年の医師数が必要医師数の80%未満。内科では青森県・岩手県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・埼玉県・千葉県・新潟県・福井県・山梨県・長野県・静岡県・宮崎県)での勤務期間50%以上となる「都道府県限定分」の連携プログラムとする(東京都の内科では12名分)
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 こうした提案に対し、専門研修部会では明確な反対意見は出されず、概ね了承するに至りました。各都道府県の地域医療対策協議会の意見も踏まえて、近く「2020年度の専攻医採用」の姿が確定し、今年(2019年)9月頃から専攻医登録が始まることでしょう。

2021年度以降、必要医師数やシーリング数の「精緻化」を進める

もっとも、専門研修部会では「厚労省の都道府県別・診療科別必要医師数には疑問点もある」との指摘も出ています。例えば、牧野憲一構成員(日本病院会常任理事)は「北海道では麻酔科医が比較的充足しているとされているが(必要医師数に対する2016年の医師数割合は1.21倍)、肌感覚に合わない」と指摘しました。日本専門医機構理事長の寺本民生参考人も「手術部門などがどのように計算されているのか、必ずしも明らかでない」などの見解を示したうえで、「関係学会や厚労省の協力を得て、2021年度以降のシーリング設定に向けて、都道府県別・診療科別の必要医師数も含めて精緻化を行っていきたい」との考えを強調しています。

例えば、「医師・歯科医師・薬剤師調査」(いわゆる三師調査)などで実際の医師数がどのように推移しているのかをウォッチし、逐次、シーリングについて必要な修正を行っていくことなどが考えられそうです。

東京都の皮膚科を見てみると、2019年度の採用実績86名に対し、2020年度のシーリングは76名(うち11名分が連携プログラム)で、「狭き門」なります。このため東京都で皮膚科の専攻医として採用されなかった医師の多くは、「シーリングのかかっていない隣県の神奈川県で皮膚科専攻医になろう」と考えるかもしれません。しかし、神奈川県の皮膚科では「必要医師数に対する2016年の医師数割合が0.97」であるため、2020年度に多くの専攻医採用が行われれば、とたんに「2016年または2024年の必要医師数を上回る」状況、つまりシーリング対象となってしまうのです。こうした専攻医の動きなどを踏まえて、2021年度、2022年度、2023年度と毎年度修正していけば、偏在状況が確実に改善していきます。

山内英子構成員(聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)らは、この「毎年度修正していく」考え方を強く支持しています。

医師不足の都道府県から「連携プログラム枠の拡大」等の要望もあり、2021年度以降検討

 
 また、日本専門医機構案によれば、「医師不足が顕著な都道府県」(内科では青森県・岩手県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・埼玉県・千葉県・新潟県・福井県・山梨県・長野県・静岡県・宮崎県)で50%以上勤務が義務付けられる専攻医は、内科では15名(東京都から12名、石川県から1名、京都府から1名、長崎県から1名)にとどまります。

各地域になべて派遣されるとすれば、3年間で0.58名分にしかならず、「顕著な医師不足を埋める」には心もとない数字です。このため阿部守一構成員(長野県知事)は、▼シーリング数の厳格化▼連携プログラム枠の拡大―によって、顕著な医師不足地域で研修する医師を増やすべきと要望しています。

同様の意見が、都道府県の地域医療対策協議会から出されると予想されますが、一部を調整すればすべての数字を動かさなければならず、それをさらに地域医療対策協議会で確認することとなり、収集がつかなくなってしまいます。

このため、2020年度は日本専門医機構案で進め、2021年度以降、上述した「必要医師数の精緻化」や「シーリング数の在り方」「連携プログラム枠の拡大」などを都道府県の意見も踏まえて検討していくことになるでしょう。

 
 
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