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DPC等含めた後発品割合が急上昇し82.5%、「踊り場からの脱却」なのか?「一時的なもの」なのか?—協会けんぽ

2023.8.30.(水)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で本年(2023年)4月末には82.5%に上昇した—。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会が8月24日に公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

協会けんぽ全体の後発品割合、2023年4月に急上昇したが・・・

Gem Medで繰り返して報じているとおり、医療保険財政が厳しさを増しており、今後も増していきます。

「医療技術の高度化」が進むことで、医療費も高騰していきます。脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。

同時に「高齢化の進展」による医療費高騰も続きます。ついに昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招きます。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は減少していきます(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならず、医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要となります。政府も、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます(2024年度から新たな医療費適正化計画がスタートする、関連記事はこちら)。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

今般、公表された本年(2023年)4月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは85.3%で、前月から0.9ポイントの上昇となりました。

一部後発品メーカーの不祥事に端を発する後発品の欠品・品薄などが時間の経過とともに拡大し「後発品使用推進にブレーキがかかっている」状況が続いていますが、今回の「上昇」が「足踏み状態からの脱却」なのか、「一時的なものに過ぎない」のか、今後の状況を注視していくことが必要です。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼2021年1月:80.3%▼2月:80.4%▼3月:80.4%▼4月:80.6%▼5月:80.6%▼6月:80.5%▼7月:80.0%▼8月:80.1%▼9月:80.0%▼10月:80.1%▼11月:80.4%▼12月:80.3%▼2022年1月:80.4%▼年2月:80.5%▼3月:80.4%▼4月:80.4%▼5月:80.4%▼6月:80.7%▼7月:80.8%▼8月:81.1%▼9月:80.9%▼10月:81.3%▼11月:81.8%▼12月:82.2%▼2023年1月:82.0%▼2月:81.8▼3月:81.7%▼4月:82.5%—となり、こちらも「上昇」が確認されています。

協会けんぽの後発品割合、本年(2023年)3月から4月にかけて急上昇した(協会けんぽの後発品割合(2023年4月)1 230824)

後発品割合80%以上をクリアできていない自治体は6府県に減少

さらに、都道府県別に後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の90.1%(前月から0.7ポイント上昇)、逆に最も低いのは徳島県で76.0%(同0.2ポイント上昇)となっています。

徳島県を含めて、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは、▼高知県:78.4%(前月から1.2ポイント上昇)▼奈良県:78.4%(同1.1ポイント上昇)▼和歌山県:79.2%(同0.6ポイント上昇)▼京都府:79.5%(同0.8ポイント上昇)▼大阪府:79.8%(同0.8ポイント低下)—の6府県に減少しました。

香川県がついに「80%以上」のラインをクリアしていますが、いずれの自治体でも「ある月には上昇するが、翌月には低下する」といった動きが続いており、一度「80%以上をクリア」できても、その後に安定して「80%以上を確保」できるようになるまでは少し時間がかかる点に留意が必要です。

後発品割合80%以上がクリアできていない自治体は、6府県に減少(協会けんぽの後発品割合(2023年4月)2 230824)



長引く「踊り場状態、横這い状態」の背景には、上述したように一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があります。2021年6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認されていますが、新目標値達成に向けて「後発品の供給不安」が重い足枷となっています。さらに、2024年度以降の新たな医療費適正化計画に向けて「数量ベースの後発品使用推進目標に加えて、金額ベースの目標を検討する」方向も示されています。実現可能性も含めて注目が集まります。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が行われましたが、供給不安が続く中でどう効果が現れてくるのか、今後の動向を注視していく必要があります。

また、昨年末には医薬品供給不安が続く中での、臨時の診療報酬改定(後発品使用促進などを支える加算の時限的な引き上げ)が決定しています。

さらに、医薬品の供給不安解消に向けた議論も有識者検討会で進められています(関連記事はこちら)。

他方、今年度の中間年薬価改定では、医薬品安定供給に向けて「不採算となっている約1100品目について、不採算品再算定を行う」ことになりました(関連記事はこちらこちらこちら)。

また、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、我が国には「後発品をはじめとする医薬品の供給不安」「創薬力の低下」「ドラッグ・ラグ/ロス」などの問題があり、薬価制度・医薬品産業構造の見直し・流通などの総合的な見直しを行う考えを提言しています。今後、この提言を踏まえて中央社会保険医療協議会での薬価制度改革論議などが活発化していきます(関連記事はこちら)。

こうした施策の効果が、いつ頃、どのように現れるのか、注目する必要があるでしょう。



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協会けんぽの「医科・歯科・DPC・調剤含めた後発品割合」、80%以上達成は2020年8月の見込み―協会けんぽ
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協会けんぽの後発品割合、調剤ベースでは安定して8割台キープ、医科やDPC含めた全体では2020年8月に8割クリア見込み―協会けんぽ
2019年11月、医科やDPC含めた全体の後発品割合は78.0%、現行ペース続けば80%達成は2020年8月の見込み―協会けんぽ
2019年10月、後発品割合が調剤分でついに80%超えるが、医科やDPC含めた全体では77.4%―協会けんぽ
後発品割合80%達成に向け、医療機関等の訪問説明行い、薬剤費軽減通知対象も拡大―協会けんぽ
2019年9月の後発品割合、調剤に医科やDPC等含めると76.9%、80%クリアは2021年3月見込み―協会けんぽ
2019年8月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.6%、期限内の80%達成は依然困難―協会けんぽ
2019年7月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.5%、期限内の80%達成は難しい―協会けんぽ
2019年6月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%、期限内の80%達成は困難―協会けんぽ
2019年5月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%で「80%達成」には時間かかる―協会けんぽ
2019年4月の後発品割合、数量ベース79.1%、医科等も含めると76.1%、「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年3月の後発品割合は78.9%、2019年に入ってからの「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年2月の後発品割合は78.9%、前月から0.2ポイント低下―協会けんぽ
2019年1月の後発品割合は79.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など20道県―協会けんぽ
2018年11月の後発品割合は78.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など12県に増加―協会けんぽ
2018年10月の後発品割合は77.5%、80%クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城・佐賀・長野の8県―協会けんぽ
2018年9月の後発品割合は76.9%、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城の6県に増加―協会けんぽ
2018年8月の後発品割合は76.5%と再上昇、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手で変わらず―協会けんぽ
2018年7月の後発品割合は76.2%に低下、「足踏み」となっていないか、今後の状況を注視―協会けんぽ
2018年6月の後発品割合は76.3%、徳島県のみ「70%」に到達せず―協会けんぽ
2018年5月の後発品割合は76.0%、都道府県別の最高は沖縄の85.9%―協会けんぽ
2018年3月の後発品割合75.0%、80%以上の自治体は沖縄・鹿児島・岩手の3県―協会けんぽ
2018年2月の後発品割合74.6%、都道府県別では沖縄の84.3%が最高―協会けんぽ
2018年1月の後発品割合74.3%、70%未達は徳島、山梨など3県に減少―協会けんぽ
2017年12月の後発品割合72.7%、70%未達は徳島、山梨など4県に減少―協会けんぽ
2017年11月の後発品割合72.0%で前月から大幅増だが、さらなる注視が必要―協会けんぽ
2017年10月の後発品割合71.1%、「伸び悩み」から脱せず―協会けんぽ
2017年9月の後発品割合71.2%、上昇傾向だが「80%以上」に向けて強力な対策必要―協会けんぽ
診療報酬ネットマイナス改定で収支920億円改善―協会けんぽ

2017年7月の後発品割合70.1%、前月から0.8ポイントもダウン―協会けんぽ
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2017年5月の後発品割合70.7%、第1目標クリアするも、依然伸び悩み―協会けんぽ
2017年4月の後発品割合70.6%だが伸び悩み、第2目標「80%以上」にどう取り組むか―協会けんぽ
2017年2月の後発品割合は前月から0.1ポイント下がり70.5%、頭打ちか―協会けんぽ
2017年1月の後発品割合70.6%、32道県で70%クリア―協会けんぽ
2016年12月の後発品割合69.8%、次のターゲットは「80%以上」の第2目標に―協会けんぽ
2016年11月の後発品割合69.4%、政府目標70%達成はすでに達成か―協会けんぽ
後発品割合68.8%、政府目標の70%までわずか1.2ポイントに迫る―協会けんぽ2016年10月
後発品割合は68.3%に上昇、増加ペースが維持されれば2017年3月に70%超―協会けんぽ2016年9月
後発品割合67.5%に上昇したが、2016改定後に伸び率鈍化―協会けんぽ2016年7月
後発品使用割合67.3%、政府目標の70%まであと一歩―協会けんぽ2016年6月
後発品使用割合64.5%、毎月1ポイント上昇のペース続けば今夏にも70%に―協会けんぽ2016年2月
後発品使用割合61.4%、「17年央に70%」の目標は達成可能か―協会けんぽ15年10月時点
後発品使用割合60%程度で足踏み状態、「17年央に70%」の目標達成に暗雲―協会けんぽ15年9月時点
協会けんぽの後発品使用割合は15年3月時点で60.4%、「17年央に70%以上」の目標値まで約10ポイントの開き

2017年、健保組合全体で後発品割合は70%を概ねクリア—健保連

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長期収載品から後発品への置き換え促進、新薬創出等加算などとセットで議論すべき—中医協・薬価専門部会
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脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」を保険適用、患者1人当たり1億6707万円―中医協総会(2)
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2018年度の医療費、前年度比0.8%と低水準の伸びだが、改定影響除外すれば例年並み―厚労省



新型コロナによる妊娠届出数の減少が8月以降も続く、少子化に拍車かかること必至—厚労省
新型コロナで妊娠の届け出が激減(5月は17%減)、少子化に拍車の恐れ—厚労省



骨太方針2021を閣議決定、コロナ禍でも医療制度改革など進めて財政健全化を目指す

我が国では世界メジャー医薬品の2割が流通せず、薬剤費の拡大求める声も—医薬品安定供給有識者検討会

「金額ベースの後発品使用目標」を検討、白内障手術・化学療法について強力に外来移行を進めよ—社保審・医療保険部会(1)