Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

新専門医シーリングの基礎となる「都道府県・診療科別の必要医師数」、年内に改善要望―日本専門医機構

2019.7.23.(火)

 新専門医の資格取得を目指す専攻医(研修医)について、2020年度採用分から「都道府県別・診療科別の必要医師数」(厚生労働省推計)をベースにした新たなシーリング(採用数上限)が導入される。この「都道府県別・診療科別の必要医師数」にはさまざまな疑問点等があるため、日本専門医機構では18の基本領域学会や地方自治体から意見を聴取する協議会を設け、年内にも厚労省に宛てて改善要望を行い、2021年度からの専攻医募集につなげる―。

 日本専門医機構の寺本民生理事長は7月22日の定例記者会見で、このような考えを示しました。

7月22日の記者会見に臨んだ寺本民生・新理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

7月22日の記者会見に臨んだ寺本民生・新理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

 

「都道府県別・診療科別の必要医師数」推計に学会や地方自治体の意見反映を

 従前、専門医資格は、各学会が独自に研修プログラム・認定基準を設けて養成・認定を行っていましたが、「国民に分かりにくい」「質の担保が不明確である」との批判を受け、2018年度から、学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する仕組みへと改められました【新専門医制度】。

ただし、「専門医の質を追求するあまり、専門医養成施設(研修病院)の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまう」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚労省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています。その一環として、「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限(シーリング)を設ける」などの対策が図られています。

もっとも、現在のシーリング制度には明確な根拠がないことから、日本専門医機構と厚労省「医道審議会・医師分科会・医師専門研修部会」は、来年度(2020年度)から厚労省の推計した「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースとした、次のような「新たなシーリング」制度を導入することを決定しました。ただし、外科・産婦人科・病理・臨床検査・救急・総合診療では、さまざまな動きを勘案しなければならないためシーリングはかけられません(関連記事はこちら)。

(1)2016年の医師数(実数)が「2016年または2024年の必要医師数」(以下、必要医師数)を上回っている都道府県・診療科をシーリング対象とし、2020年度の採用数は「2019年度の採用実績」を上回らないこととする(例えば東京都・内科では2019年度の採用実績と同じ515名とする)

(2)採用数上限のうち、一部(2割程度を上限)を「シーリングのかかっていない都道府県」(内科では東京都・石川県・京都府・大阪府・和歌山県・鳥取県・岡山県・徳島県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県以外)での勤務期間が50%以上となる連携プログラムとする(研修医視点では地域研修プログラム)とする(東京都の内科では77名分)

(3)連携プログラムの一部(5%を上限)を「医師不足が顕著な都道府県」(2016年の医師数が必要医師数の80%未満。内科では青森県・岩手県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・埼玉県・千葉県・新潟県・福井県・山梨県・長野県・静岡県・宮崎県)での勤務期間が50%以上となる「都道府県限定分」連携プログラムとする(東京都の内科では12名分)
医師専門研修部会(1)1 190514
 
 
 ところで、この厚労省の推計した「都道府県別・診療科別の必要医師数」に対しては、例えば「離島の多い自治体(長崎県や沖縄県など)については、『離島への派遣医師』分が十分に考慮されているのか」「外来診療・自由診療が多い診療科について、適切な推計がなされているのか」(厚労省推計のベースはDPCデータである)「精神科領域では『措置入院へ対応する医師』分が考慮されているのか」「研究機関に従事する医師が適切に考慮されているのか」などの疑問が各学会から出ています。

そこで寺本理事長は、2021年度のシーリング設定に向けて、▼日本専門医機構▼関係学会(基本領域の学会)▼医師の人口動態(医師数動態)の専門家▼厚労省担当者―などで構成される「協議会」を設けて厚労省推計を検証する考えを示していました(関連記事はこちらこちら)。

さらに今般、より具体的に次のようなスケジュールが日本専門医機構の理事会で承認されたことが寺本理事長から報告されました。

▽8月中に協議会を立ち上げ、9月までに18基本領域学会から意見聴取を行う

▽10月上旬に、地方自治体(知事会、市長会、町村会)から意見聴取を行う

▽11月に取りまとめを行う

▽12月に厚労省から2018年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(三師調査)結果が示されるので、これと「都道府県別・診療科別の必要医師数」との付け合わせを行い、2021年の専攻医採用に向けた改善要望を行う

 
さらに寺本理事長は、各基本領域学会の保有するデータを「都道府県別・診療科別の必要医師数」に反映させることなども視野に入れていることを説明。ただし、「〇〇科を●人増やしてほしい」などの要望を1つ1つ聞いていれば収集がつかなくなってしまうため、「〇〇科では、こういう背景があり、さらなる医師養成が必要である」といった建設的な意見を募ることになります。

サブスペシャリティ領域よりも高次の「3階部分」を外科領域で検討

ところで、新専門医制度は、1階部分に「基本領域」(19)、2階部分に「サブスペシャリティ領域」という構成となっています。

このうち2階部分のサブスペシャリティ領域に関しては、「国民への分かりやすさ」という基本理念を踏まえ、日本専門医機構と基本領域学会とで「認証する基準」(整備基準)を設け、その基準に合致する学会・領域のみを認証することとなっていますが、歴史的経緯なども踏まえて、すでに以下の学会をサブスペシャリティ領域とすることが日本専門医機構と基本領域学会とで固められています。

【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―

【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―

【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―
医師専門研修部会(1)1 190322
 
 ただし、厚労省「医道審議会・医師分科会・医師専門研修部会」では「国民に分かりにくい領域もある」「すべてをサブスペシャリティ領域とするのではなく、別の認定制度とすることも考えてはどうか」との指摘があり、今後、さらに議論することになっています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この点に関連して日本専門医機構の兼松隆之氏・副理事長(長崎市立病院機構理事長)は、サブスペシャリティ領域よりも、さらに高次の「3階部分」の検討が外科領域で進んでいることを紹介しました。例えば外科領域では「食道外科」「内視鏡外科」などがあり、これらはサブスペシャリティ領域である「消化器外科」のさらに高次の専門分野と言えます。外科領域では、「さらに高次の領域」や「技術認定制度」など、サブスペシャリティ領域の上の「3階部分」についての検討を開始しており、将来的には「専門医制度は3階建て」となる可能性もありそうです。

7月22日の日本専門医機構・記者懇談会に臨んだ寺本民生・理事長(帝京大学・臨床研究センター長、写真中央)、兼松隆之氏・副理事長(長崎市立病院機構・理事長、写真向かって左)、渡辺毅・理事(福島労災病院院長、写真向かって右)

7月22日の日本専門医機構・記者懇談会に臨んだ寺本民生・理事長(帝京大学・臨床研究センター長、写真中央)、兼松隆之氏・副理事長(長崎市立病院機構・理事長、写真向かって左)、渡辺毅・理事(福島労災病院院長、写真向かって右)

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

「都道府県別・診療科別の必要医師数」、2020年早々までに日本専門医機構や基本領域学会等の協議会で検証
新専門医制度の新シーリング、2021年度実施までにコンセプト固めたい―日本専門医機構
専門医制度、「専門医の質確保」(高度な研修)と「地域医療の確保」は両立可能―医師専門研修部会(2)
新専門医制度の専攻医、2020年度から都道府県別・診療科別必要医師数踏まえたシーリング設定―医師専門研修部会(1)
診療科別の必要医師数踏まえ、2020年度以降の専攻医シーリングを設定―日本専門医機構
新専門医制度の採用枠、新たに診療科別・都道府県別の必要医師数をベースに考えてはどうか―医師専門研修部会(2)
内科・外科の連動研修の4月スタート見送り、ただし単位の遡及認定等で専攻医の不利益を回避―医師専門研修部会(1)
消化器内視鏡など23学会・領域のサブスペ認定に理解を求める、専攻医は安心して連動研修実施を―日本専門医機構
消化器内視鏡や老年病、新専門医制度のサブスペシャリティ領域認証に「待った」―医師専門研修部会
新専門医制度、プログラム制の研修にも関わらず2・3年目の勤務地「未定」が散見される―医師専門研修部会
新専門医制度、「シーリングの遵守」「迅速な情報提供」「カリキュラム制の整備」など徹底せよ―医師専門研修部会
新専門医制度、2019年度の専攻医登録を控えて「医師専門研修部会」議論開始

90学会・領域がサブスペシャリティ領域を希望、2019年9月には全体像固まる見込み―日本専門医機構
カリキュラム制での新専門医研修、必要な単位数と経験症例を基本領域学会で設定―日本専門医機構
新専門医制度、サブスペシャリティ領域は事前審査・本審査を経て2019年9月に認証―日本専門医機構
2019年度からの新専門医目指す専攻医の登録は順調、1次登録は11月21日まで―日本専門医機構
新専門医制度、2019年4月から研修始める「専攻医」募集を正式スタート―日本専門医機構
東京都における2019年度の専攻医定員、外科など除き5%削減を決定―日本専門医機構
2019年度新専門医研修、「東京のみ」「東京・神奈川のみ」で完結する研修プログラムの定員を削減―日本専門医機構
2019年度、東京都の専攻医定員数は2018年度から5%削減―日本専門医機構
日本専門医機構、新理事長に帝京大の寺本民生・臨床研究センター長が就任
がん薬物療法専門医、サブスペシャリティ領域として認める―日本専門医機構
2019年度の専攻医登録に向け、大阪や神奈川県の状況、診療科別の状況などを詳細分析―日本専門医機構
東京の専攻医、1年目に207名、2年目に394名、4年目に483名が地方勤務―日本専門医機構
新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構

新専門医制度によって医師の都市部集中が「増悪」しているのか―医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、偏在対策の効果検証せよ―医師養成と地域医療検討会
医学生が指導医の下で行える医行為、医学の進歩など踏まえて2017年度に再整理―医師養成と地域医療検討会

新専門医制度、専門研修中の医師の勤務地を把握できる仕組みに―日本専門医機構
地域医療構想調整会議での議論「加速化」させよ―厚労省・武田医政局長
新専門医制度で医師偏在が助長されている可能性、3県では外科専攻医が1名のみ—全自病
新専門医制度の専攻医採用、大都市部の上限値などの情報公開を―四病協

新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構
新専門医制度、現時点で医師偏在は助長されていない―日本専門医機構

新専門医制度のサブスペシャリティ領域、国民目線に立ち「抑制的」に認証すべき―四病協

新専門医制度、専攻医の1次登録は10月10から11月15日まで—日本専門医機構
新専門医制度、都道府県協議会・厚労省・検討会で地域医療への影響を監視—医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、地域医療への影響を厚労省が確認し、問題あれば対応—塩崎厚労相
2018年度からの新専門医制度に備え、10月から専攻医の仮登録—日本専門医機構
新専門医研修プログラム、都道府県協議会で地域医療を確保する内容となっているか確認―厚労省
専門医機構、地域医療への配慮について「必ず」都道府県協議会の求めに応じよ—厚労省検討会
新整備指針の見直し、総合診療専門医の研修プログラム整備基準を決定—日本専門医機構
専門医整備指針、女性医師に配慮した柔軟な対応などを6月2日の理事会で明記—厚労省検討会
地域医療へ配慮し、国民に分かりやすい専門医制度を目指す—日本専門医機構がQ&A
専門医取得が義務でないことやカリキュラム制の設置、新整備指針の中で対応—日本専門医機構
新専門医制度、整備指針を再度見直し「専門医取得は義務でない」ことなど明記へ―厚労省検討会

新専門医制度、見直しで何が変わったのか、地域医療にどう配慮するのかを分かりやすく示す―日本専門医機構
必要な標準治療を集中的に学ぶため、初の基本領域での研修は「プログラム制」が原則―日本専門医機構
新専門医制度、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡では、専攻医上限を過去3年平均に制限―日本専門医機構
専門医制度新整備指針、基本理念に「地域医療への十分な配慮」盛り込む―日本専門医機構
地域医療に配慮した、専門医制度の「新整備指針」案を大筋で了承―日本専門医機構
消化器内科や呼吸器外科など、基本領域とサブスペ領域が連動した研修プログラムに―日本専門医機構
総合診療専門医、2017年度は「日本専門医機構のプログラム」での募集は行わず
新専門医制度、18基本領域について地域医療への配慮状況を9月上旬までにチェック―日本専門医機構
【速報】専門医、来年はできるだけ既存プログラムで運用、新プログラムは2018年目途に一斉スタート―日本専門医機構
新専門医制度、学会が責任もって養成プログラムを作成、機構が各学会をサポート―日本専門医機構
【速報】新専門医制度、7月20日に「検討の場」、25日の総会で一定の方向示す見込み―日本専門医機構
新専門医制度、各学会がそろって同じ土俵に立ってスタートすることが望ましい―日本専門医機構・吉村新理事長
【速報】新専門医制度、日本専門医機構の吉村新理事長「7月中に方向性示す」考え

新専門医制度で地域の医師偏在が進まないよう、専門医機構・都道府県・国の3層構造で調整・是正―専門医の在り方専門委員会
新専門医制度、懸念払しょくに向けて十分な議論が必要―社保審・医療部会

2016年末、人口10万人当たり医師数は240.1人、総合内科専門医が大幅増―医師・歯科医師・薬剤師調査―2014年医師・歯科医師・薬剤師調査

専門研修修了医(certified doctor)と臨床経験を十分に積んだ専門医(specialist)は区別すべき―四病協

 
医師偏在対策を了承、各都道府県で2019年度に医師確保計画を策定し、20年度から実行―医療従事者の需給検討会
医師偏在対策まとまる、2019年度に各都道府県で「医師確保計画」定め、2020年度から稼働―医師需給分科会(2)
産科医が最少の医療圏は北海道の北空知(深川市等)と留萌、小児科では埼玉県の児玉(本庄市等)―医師需給分科会(1)
2036年の医療ニーズ充足には、毎年、内科2946名、外科1217名等の医師養成が必要―医師需給分科会(3)
2036年には、各都道府県・2次医療圏でどの程度の医師不足となるのか、厚労省が試算―医師需給分科会(2)
最も医師少数の2次医療圏は「北秋田」、最多数は「東京都区中央部」で格差は10.9倍―医師需給分科会(1)

 
医師働き方の改革内容まとまる、ただちに全医療機関で労務管理・労働時間短縮進めよ―医師働き方改革検討会
医師の時間外労働上限、医療現場が「遵守できる」と感じる基準でなければ実効性なし―医師働き方改革検討会
研修医等の労働上限特例(C水準)、根拠に基づき見直すが、A水準(960時間)目指すわけではない―医師働き方改革検討会(2)
「特定医師の長時間労働が常態化」している過疎地の救急病院など、優先的に医師派遣―医師働き方改革検討会(1)