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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

有床診減少に歯止めかからず、2022年8月末に6000施設・10月末に8万床を切るペース―医療施設動態調査(2021年4月)

2021.7.2.(金)

有床診療所の減少が依然として続いており、現在の減少ペースが維持されると仮定すれば、来年(2022年)8月末に6000施設を割り込み、同じく来年(2022年)10月末には8万床を切ってしまう計算である―。

厚生労働省が6月30日に公表した医療施設動態調査(2021年4月末概数)から、こうした状況が分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

今年(2021年)3月から4月にかけての、医療施設数・ベッド数の状況(医療施設動態調査(2021年4月) 210630)

有床診の減少止まらず、現行ペースでは「2022年8月」に6000施設を切るペース

厚労省は、「医療施設動態調査」として、毎月末における医療機関(病院・診療所)の施設数・病床数を公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、その前の月末の状況はこちら)。今年(2021年)4月末における全国の医療施設は17万9710施設となり、3月末から215施設増加しました。

病院の施設数は、今年(2021年)3月末から6施設減少し、8221施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7166施設(3月末から6施設減)▼精神科病院:1055施設(同増減なし)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3541施設で3月末から7施設減、「地域医療支援病院」は630施設で3月末から2施設増となりました。

医科診療所の施設数は10万3246施設で、3月末から209施設の増加となりました。内訳を見ると、無床の一般診療所が226施設増加(9万7157施設)、有床診療所が17施設減少(6269施設)となっています。

また、歯科診療所は、6月から7月にかけて46施設減少、7月から8月にかけて29施設減少、8月から9月にかけて10施設減、9月から10月にかけて39施設減、10月から11月にかけて22施設減、11月から12月にかけて38施設減、昨年(2020年)末から今年(2021年)1月にかけて64施設減と大幅減が続いていましたが、1月から2月にかけては「1施設減」にとどまり、2月から3月にかけては「28施設増」と増加に転じ、さらに3月から4月にかけては「12施設減」となりました。減少モードにはストップがかかったようです。

新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響(収入減)により「病院・診療所の倒産」が増加する可能性が指摘されています。歯科診療所で施設減が続いていたことから、今後「新型コロナウイルス感染症の影響」との関連を詳しく分析する必要があるでしょう。もちろん歯科診療所については、「乱立による経営難」が従前から問題視されており、その点も踏まえた分析が必要です。



医科の有床診療所施設数を見ると、2年前(2019年4月末)には6730施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年4月末)には6483施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2019年4月末から2020年4月末までの1年間で247施設の減少、そこから今年(2021年)4月末(6269施設)までの1年間で214施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、2020年4月末以降、次のように推移しています。

▼2020年4月末:6483施設
↓(17施設減)
▼2020年5月末:6466施設
↓(20施設減)
▼2020年6月末:6446施設
↓(13施設減)
▼2020年7月末:6433施設
↓(19施設減)
▼2020年8月末:6414施設
↓(10施設減)
▼2020年9月末:6404施設
↓(25施設減)
▼2020年10月末:6379施設
↓(9施設減)
▼2020年11月末:6370施設
↓(21施設減)
▼2020年12月末:6349施設
↓(26施設減)
▼2021年1月末:6323施設
↓(20施設減)
▼2021年2月末:6303施設
↓(17施設減)
▼2021年3月末:6286施設
↓(17施設減)
▼2021年4月末:6269施設



直近1年間は、1か月当たり「18施設弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、来年(2022年)8月末に6000施設を割る計算です(前月までよりも2か月遅いペース)。

有床診のベッド数、「2022年10月末」に8万床を割るペースで減少

次に病院・診療所の病床数(ベッド数)を眺めてみます。

全体では、今年(2021年)4月末には159万377床で、前月(2021年3月)末から2063床の大幅減となりました。

うち病院の病床数は150万5266床で、前月末から1776床の減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万6348床(前月末から949床減少)▼療養病床:28万8968床(同600床減少)▼精神病床:32万3975床(同227床減少)—などとなっています。

また、有床診療所の病床数は前月末から287床減少し、8万5049床となりました。2年前(2019年4月末)には9万1930床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年4月末)には8万8609床(厚労省のサイトはこちら)でした。2019年4月末から2020年4月末までの1年間で3321床減少、そこから今年(2021年)4月末までの1年間で3560床減少しています。2020年4月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2020年4月末:8万8609床
↓(309床減)
▼2020年5月末:8万8300床
↓(362床減)
▼2020年6月末:8万7938床
↓(215床減)
▼2020年7月末:8万7723床
↓(325床減)
▼2020年8月末:8万7398床
↓(182床減)
▼2020年9月末:8万7216床
↓(348床減)
▼2020年10月末:8万6868床
↓(200床減)
▼2020年11月末:8万6668床
↓(337床減)
▼2020年12月末:8万6331床
↓(402床減)
▼2021年1月末:8万5929床
↓(280床減)
▼2021年2月末:8万5649床
↓(313床減)
▼2021年3月末:8万5336床
↓(287床減)
▼2021年4月末:8万5049床

この1年間では、1か月当たり「297床弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、来年(2022年)10月末には8万床を切る計算です(前月に比べて2か月遅いペース)。





Gem Medで繰り返しお仕えしていますが、有床診は、将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)にとっても、現在の医療提供体制においても重要な構成要素(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)の1つです。有床診の減少は、現在および将来における地域医療・介護提供体制の脆弱化を招きかねません。

厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらこちら)。

さらに、2020年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。

▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)

▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる

▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる

▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる

▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる

▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)



しかし、残念ながら診療報酬改定の効果は出ているとは言い難いでしょう。このため、「診療報酬による手当てでは、有床診の減少を止めることはできないのではないか。有床診減少の背景には『後継者不在』なども大きく関係しており、別の手当てを考える必要があるのではないか」と指摘する識者もおられます。2022年度診療報酬改定に向けた議論が本格スタートしていますが、「有床診の減少スピードに歯止めをかけるために新たな一手を打つ」のか、あるいは「別の方向に舵を切る」のか、今後の動きに注目する必要があります。



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有床診療所、前月に比べて施設数は30、ベッド数は367減少―医療施設動態調査(2016年11月)
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一般病床数、療養病床数ともに3桁の減少―医療施設動態調査(2016年9月)
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