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確認不十分で、患者の同意と「異なる術式」で手術を実施してしまう事例が散発―医療機能評価機構

2020.9.16.(水)

医療サイドの確認不十分により、「事前に患者が選択・同意した術式」と異なる術式による手術を実施してしまった―。

日本医療機能評価機構が9月15日に公表した「医療安全情報 No.166」から、こうした事例(医療事故)が2016年1月1日から2020年7月31日までの間に8件報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

患者の同意した手術と「異なる術式」での手術を確認不足で実施してしまった事例が散発している(医療安全情報166 200915)

患者が同意した術式で申し込みし、それを術前に診療科内で共有し、執刀直前に確認を

日本医療機能評価機構は、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防ぐことができたものの、「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け、その内容や背景を詳しく分析し、「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院等では報告が義務付けられている)。

さらに事故事例などの中から、「特段の留意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。その内容を簡潔にまとめて「医療安全情報」として公表し、医療現場に最大限の注意を払うよう強く呼びかけています。
●最近の情報
誤った情報登録によるアレルギーのある薬剤の投与
IVH実施時のガイドワイヤー回収忘れ
患者移乗時の転落
パルスオキシメータープルーブの長時間装着による熱傷事例
気管・気管切開チューブの誤接続事例
徐放性製剤を粉砕した事例
立位での浣腸による直腸損傷事例
鎮静薬の誤調整事例
小児用ベッドから転落事例
電子カルテの誤入力
ガーゼの体内残存2
ガーゼの体内残存1



9月15日に公表された「医療安全情報No.166」では、「患者が同意した術式と異なる手術の実施」がテーマとなっています。

ある病院において、患者が外来を受診した際に、医師が患者の希望を確認して、手術説明書と同意書の術式を「単純子宮全摘出術+両側卵管切除術」と記載しました。手術の1週間前に、医師は患者の年齢から選択されることが多い「単純子宮全摘出術+両側卵巣卵管切除術」を行うと思い込み、手術申し込みを行いました。手術の際、執刀直前の確認において、医師は申し込んだ術式「単純子宮全摘出術+両側卵巣卵管切除術」を言いましたが、看護師は同意書記載の「単純子宮全摘出術+両側卵管切除術」との相違に気付かず、手術が実施されてしまいました。術後の診察時、医師は「患者が卵巣の温存を希望していた」ことに気付いたといいます。



また別の病院では、主治医が「乳房部分切除術」で手術申し込みを行いました。後日、患者の希望により「乳房全摘術」を行うことになりましたが、主治医は手術申し込みの術式を変更し忘れていました。手術の際、執刀直前の確認で、術者は「乳房部分切除術」と言いましたが、同意書(乳房全摘術)との照合は行われず、乳房部分切除術を実施しました。術後に、主治医の診察時に「術式が間違っていた」ことが判明しました。



現在の医療では、治療法の選択に当たって「患者の希望・同意」が重要な要素の1つになります。治療法によって、患者のQOLが大きく変わってくるためです。傷病の治癒だけでなく、「妊孕性の温存」「姿形の保持」「ADL等の維持」など、患者の希望も含めて、様々な要素を考慮して医師は治療法を選択する必要があり、これを無視したり、失念することは、患者のQOLを著しく損なうことになります(もちろん患者の希望が、傷病治療に好ましくないこともあり、その場合には十分な説明を医療サイドが行うことが求められる)。

なお前者事例では、「卵巣を温存した場合と、卵巣を両側切除した場合に比べて、虚血性心疾患やがんによる死亡も低減する」との研究報告もあり、「将来のリスク」をも勘案した選択であった可能性もあります。

こうした事例は、2016年以降のみを見ても8例生じています。機構では事態を重くみて、例えば▼患者が同意した術式で手術申し込みを行う▼患者が同意した術式を術前に診療科内で共有する▼執刀直前に同意書を用いて術式を確認する—などの対策をとるようアドバイスしています。

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