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協会けんぽ全体の後発品割合は2024年8月に87.3%へ上昇、「徳島県」は80%クリアまで依然あと一歩

2024.12.24.(火)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、本年(2024年)8月には87.3%(調剤・医科・DPC・歯科分の合計では84.8%)に上昇した。もっとも、後発品の供給不安が長引いており「上昇→足踏み→上昇→足踏み・・・」が繰り返されており、今後の状況は不透明である—。

また、都道府県別にみると、依然として徳島県のみで80%以上をクリアできていないが、「80%まであと一歩」(79.8%)のところまできている—。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会が12月19日に公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

後発品割合は87.3%に上昇、DPC等加えた全体でも85.0%に上昇

繰り返しGem Medで報じているとおり、医療保険財政が厳しさを増しており、今後もさらにその度合いを増していきます。

まず「医療技術の高度化」により、医療費が高騰していきます。例えば、脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。さらに、新たな認知症治療薬「レケンビ」が保険適用され、患者数が膨大なことから、医療保険財政に及ぼす影響が非常に大きくなる可能性があります。さらに新たな認知症治療薬「ケサンラ」の保険適用も行われました。

大企業の会社員とその家族が主に加入する健康保険組合の連合組織「健康保険組合連合会」では、こうした高額薬剤によって超高額レセプトの発生が増加し、医療保険財政を圧迫している状況を強く危惧しています(関連記事はこちら)。

あわせて「高齢化の進展」による医療費高騰も進みます。ついに2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、来年度(2025年度)には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長く、結果、1人当たり医療費が若年者に比べて2.4倍と高くなります(関連記事はこちら)。このため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招きます(医療費は1人当たり医療費×人数で計算できる)。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならないために医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、さらに今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」ための取り組み(医療費適正化方策)が極めて重要となります。政府も、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。また、金額シェアも盛り込んだ「新たな後発医薬品使用推進目標」も固められています(今後、医療費適正化計画に新目標が盛り込まれる、関連記事はこちらこちら)。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

今般公表された本年(2024年)8月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは87.3%で、前月から0.1ポイント上昇しました。

もっとも、一部後発品メーカーの不祥事に端を発する後発品の欠品・品薄などが継続しており(関連記事はこちら)、後発品使用割合がいったん上昇しても、「後発品使用推進にブレーキがかかる」→「再び上昇する」→「再び足踏み状態となる」・・・という状況が続いています。今後も、状況を注視していくことが必要です。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2024年1月:83.8%▼2月:83.7%▼3月:83.6%▼4月:84.2%▼5月:84.4%▼6月:84.6%▼7月:84.8%▼8月:85.0%—となり、こちらも上昇しています。

協会けんぽの後発品割合、今年(2024年)7月から8月にかけて上昇(協会けんぽ後発品割合(24年8月)1 241219)

徳島県も「80%クリアまであと一歩」(79.9%)のところまで来ている

他方、都道府県別に後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の91.4%(前月から増減なし)、逆に最も低いのは徳島県で79.8%(同0.1ポイント低下)となっています。

「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは依然として「徳島県のみ」です。「80%まであと一歩」のところまで来ており、さらなる努力に期待が集まります。

なお、いずれの自治体でも「ある月には上昇するが、翌月には低下する」といった動きが続いており、一度「80%以上をクリア」できても、その後に安定して「80%以上を確保」できるようになるまでは少し時間がかかる点に留意が必要です。

後発品割合80%以上がクリアできていないのは、依然として徳島県のみ(協会けんぽ後発品割合(24年8月)2 241219)



長引く「踊り場状態、横這い状態」の背景には、上述したように一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があります。厚労省は、2024年度以降の新たな医療費適正化計画に向けて「数量ベースの後発品使用推進目標(2029年度末に全都道府県で80%以上)に加えて、金額ベースの目標(2029年度末に65%以上)を設定」していますが、「後発品の供給不安」が重い足枷となっています(関連記事はこちら)。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が、一昨年末には医薬品供給不安が続く中での、臨時の診療報酬改定(後発品使用促進などを支える加算の時限的な引き上げ)が行われました。

さらに、医薬品の供給不安解消に向けた議論も有識者検討会で行われました(関連記事はこちら)。

他方、昨年度(2023年度)の中間年薬価改定では、医薬品安定供給に向けて「不採算となっている約1100品目について、不採算品再算定が行わ」れ(関連記事はこちらこちらこちら)、今般の2024年度薬価制度改革では▼後発品を始めた医薬品の安定供給対策を強力に図る(例えば安定供給に力を入れる後発品メーカーの製品を高く評価するなど)▼乖離率が一定以下で、メーカーが希望する全品目(約2000品目)について不採算再算定を行う—などの対応が図られました(関連記事はこちらこちら)。

また、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、我が国には「後発品をはじめとする医薬品の供給不安」「創薬力の低下」「ドラッグ・ラグ/ロス」などの問題があり、薬価制度・医薬品産業構造の見直し・流通などの総合的な見直しを行う考えを提言しています。この提言も踏まえて上述のような2024年度薬価制度改革が行われています。

さらに、来年度(2025年度)の薬価中間年改定では、▼後発品について薬価引き下げ品目を小さく設定する▼不採算品再算定(薬価の引き上げ)についてメリハリをつけ、対象品目を医療上の必要性が特に高いものに限定する—などの対応が図られます。

なお、厚労省の「近未来健康活躍社会戦略」の中では、「5年ほどの集中期間を設けて、医薬品の安定供給体制を構築(後発品メーカーの再編等も含む)する」考えが示されています。



病院ダッシュボードχ zeroMW_GHC_logo

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協会けんぽの「後発品割合」、2021年1月末に「80%達成」をクリアできている可能性―協会けんぽ
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2019年9月の後発品割合、調剤に医科やDPC等含めると76.9%、80%クリアは2021年3月見込み―協会けんぽ
2019年8月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.6%、期限内の80%達成は依然困難―協会けんぽ
2019年7月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.5%、期限内の80%達成は難しい―協会けんぽ
2019年6月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%、期限内の80%達成は困難―協会けんぽ
2019年5月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%で「80%達成」には時間かかる―協会けんぽ
2019年4月の後発品割合、数量ベース79.1%、医科等も含めると76.1%、「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年3月の後発品割合は78.9%、2019年に入ってからの「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年2月の後発品割合は78.9%、前月から0.2ポイント低下―協会けんぽ
2019年1月の後発品割合は79.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など20道県―協会けんぽ
2018年11月の後発品割合は78.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など12県に増加―協会けんぽ
2018年10月の後発品割合は77.5%、80%クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城・佐賀・長野の8県―協会けんぽ
2018年9月の後発品割合は76.9%、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城の6県に増加―協会けんぽ
2018年8月の後発品割合は76.5%と再上昇、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手で変わらず―協会けんぽ
2018年7月の後発品割合は76.2%に低下、「足踏み」となっていないか、今後の状況を注視―協会けんぽ
2018年6月の後発品割合は76.3%、徳島県のみ「70%」に到達せず―協会けんぽ
2018年5月の後発品割合は76.0%、都道府県別の最高は沖縄の85.9%―協会けんぽ
2018年3月の後発品割合75.0%、80%以上の自治体は沖縄・鹿児島・岩手の3県―協会けんぽ
2018年2月の後発品割合74.6%、都道府県別では沖縄の84.3%が最高―協会けんぽ
2018年1月の後発品割合74.3%、70%未達は徳島、山梨など3県に減少―協会けんぽ
2017年12月の後発品割合72.7%、70%未達は徳島、山梨など4県に減少―協会けんぽ
2017年11月の後発品割合72.0%で前月から大幅増だが、さらなる注視が必要―協会けんぽ
2017年10月の後発品割合71.1%、「伸び悩み」から脱せず―協会けんぽ
2017年9月の後発品割合71.2%、上昇傾向だが「80%以上」に向けて強力な対策必要―協会けんぽ
診療報酬ネットマイナス改定で収支920億円改善―協会けんぽ

2017年7月の後発品割合70.1%、前月から0.8ポイントもダウン―協会けんぽ
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2017年5月の後発品割合70.7%、第1目標クリアするも、依然伸び悩み―協会けんぽ
2017年4月の後発品割合70.6%だが伸び悩み、第2目標「80%以上」にどう取り組むか―協会けんぽ
2017年2月の後発品割合は前月から0.1ポイント下がり70.5%、頭打ちか―協会けんぽ
2017年1月の後発品割合70.6%、32道県で70%クリア―協会けんぽ
2016年12月の後発品割合69.8%、次のターゲットは「80%以上」の第2目標に―協会けんぽ
2016年11月の後発品割合69.4%、政府目標70%達成はすでに達成か―協会けんぽ
後発品割合68.8%、政府目標の70%までわずか1.2ポイントに迫る―協会けんぽ2016年10月
後発品割合は68.3%に上昇、増加ペースが維持されれば2017年3月に70%超―協会けんぽ2016年9月
後発品割合67.5%に上昇したが、2016改定後に伸び率鈍化―協会けんぽ2016年7月
後発品使用割合67.3%、政府目標の70%まであと一歩―協会けんぽ2016年6月
後発品使用割合64.5%、毎月1ポイント上昇のペース続けば今夏にも70%に―協会けんぽ2016年2月
後発品使用割合61.4%、「17年央に70%」の目標は達成可能か―協会けんぽ15年10月時点
後発品使用割合60%程度で足踏み状態、「17年央に70%」の目標達成に暗雲―協会けんぽ15年9月時点
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骨太方針2021を閣議決定、コロナ禍でも医療制度改革など進めて財政健全化を目指す

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