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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

2024年度の薬価制度・材料価格制度・費用対効果評価制度の「改革骨子」固まる、年明けに詳細な改革案決定へ—中医協

2023.12.26.(火)

2024年度の薬価制度改革、材料価格制度改革、費用対効果評価制度改革が一応の決着を見ました。各専門部会での議論をまとめた「骨子案」が12月20日の中央社会保険医療協議会・総会で了承され、年明けにより具体的な「見直し案」を審議します。

●薬価制度改革の骨子案はこちら
●材料価格制度改革の骨子案はこちら
●費用対効果評価制度改革の骨子案はこちら

医薬品の不採算品再算定(薬価引き上げ)、乖離率7%以内の約2000品目が対象に

薬価制度に関しては「革新的新薬のイノベーションの適切な評価」と「後発品を中心とした医薬品の安定供給確保のための対応」の2つの柱が立てられ、例えば▼新薬創出等加算の企業要件・企業指標について、「企業指標に基づく加算係数の設定」(加算額の調整)を廃止する▼後発医薬品の安定供給に向けた「企業指標」を試行導入し、安定供給に力を注いでいると評価された企業の後発品について評価を行う▼深刻な後発品を中心とする供給不安が長引いている状況に鑑み、不採算品再算定について、「乖離率の大きな品目」を除外したうえで「再算定(引き上げ)を企業が希望する全品目に適用」する—などの大きな見直しが行われます(関連記事はこちら)。

このうち不採算品再算定については、2023年度の薬価調査結果(今回の薬価調査)において「前回の2022年度調査の全品目の平均乖離率7.0%」を超える乖離率であった品目は対象から除外する方針が明示されました。厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は「2023年度の今回調査結果では全体平均で約6.0%の乖離率となったが、これは速報値であり、また今回調査を用いて対象から除外すれば企業にとっては予見可能性が阻害されてしまうという問題がある。2022年度の前回調査の乖離率7.0%以内の品目であれば、不採算品として価格を引き上げても納得が得られるのではないか」との旨を説明しています。

乖離率とは「薬価」と「医薬品卸-医療機関・薬局との取引価格」との差が何%であるかを意味し、乖離率が大きな品目は「大幅に値引きをして医療機関・薬局に納めている」と言えます。

不採算品再算定とは「薬価が低くなりすぎ、経営が成り立たなくなってしまうので値上げする」ものであることから、「大幅に値引きして販売している」のであれば、そもそも「薬価が低すぎ、経営が成り立たない」ケースには該当しないと考えられます。このため、乖離率の大きな品目を除外することとしたものです。

この点、前回の薬価調査(2022年度調査)で「平均乖離率」(7.0%)を上回っていた品目は、企業側でも「医薬品の全体の中でも値引き幅が大きいものである」と把握可能でしょう。こうした点を考慮して、上記の基準値が設定されました。

これに沿えば、「約2000品目」が、不採算品再算定として「2024年4月に薬価の引き上げ」対象となります。

なお、不採算品再算定は、本来は「組成、剤形区分、規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する場合に限って適用される」ものですが、2回連続(2023年度の薬価改定・2024年度の薬価改定)で、このルールを適用しないことになります(2023年度は企業から希望のあったすべての品目を対象とした)。このため不採算品再算定の仕組みそのものについて今後、見直しを検討していく必要があると安川薬剤管理官はコメントしています。

また、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「今回の改革内容を踏まえて、企業側は画期的な医薬品の開発・安定供給に力を入れてほしい。その状況も国で速やかに把握・検証してほしい」と要望。安川薬剤管理官は「これだけの見直しを行ったのであるから、企業側も状況の把握・検証に積極的に協力してくれるであろう」と期待を寄せています。

なお、松本委員は次期薬価制度改革(2025年度の中間年改定)に向けて「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の累積控除(後発品が登場した場合などに、それまで維持してきた先発品の薬価を一気に引き下げる仕組み)を中間年改定にも行う必要がある。これは企業指標見直しなどとセットの事項である」ともコメントしています。2025年度中間年改定での論点の1つになることでしょう。

プログラム医療機器の取り扱いを明確化、保険適用から1年間はチャレンジ申請可能に

材料価格制度では、例えば▼プログラム医療機器の評価方法をより明確化する(2段階承認の1段階目の際には、保険適用せずに「選定療養」とすることも可能とする、プログラム医療機器を用いた治療における、医師の指導管理を診療報酬で評価する、評価軸・基準をプログラム医療機器ごとの特性に沿って明確に設定する、など)▼「希少疾病の体外診断薬」や「効果が同等以上で、価格の安い医療機器」などの開発を促進するために、新加算で評価を行う▼チャレンジ申請について、保険適用後にも行える仕組みを準備する(途中で断念した場合にも、それまでの分析結果などを提出することが求められる)▼既収載品の外国価格調整(再算定)については「該当機能区分の償還価格」が「外国価格平均の1.3倍」を超える場合に対象とするとの新たな仕組みを導入する(現在は「市場実勢価格」と「外国価格平均」とを比較している)—などの大きな見直しが行われます(関連記事はこちらこちらこちら)。

このうち、チャレンジ申請を行える「保険適用後の一定期間」について、厚労省保険局医療課医療技術評価推進室の木下栄作室長は「1年以内」との考えを示しました。メーカーサイドは「3年程度は必要」と要望していましたが、「それは長すぎる」と判断された格好です。チャレンジ申請を希望する場合、企業は、製品の保険適用から1年の間に「有用性を立証するために、追加的な臨床試験を行う必要があるか」などを検討する必要があります。中医協委員は「1年以内」という期限設定を妥当と判断しましたが、メーカー代表として参画する守田恭彦専門委員(ニプロ株式会社執行役員)は「肌感覚では1年では短いと感じる。今後、実例を見て一定期間の再検討をしてほしい」と要望しています。

さらに守田専門委員は「市場価格が償還価格を上回る逆ザヤが多くの製品で生じており、対応を再検討してほしい」とも要請しました。

新たな仕組みが、医療現場にどういった影響を及ぼすのか注目が集まります。

費用対効果評価における価格調整範囲など、レケンビ特例も参考に継続検討

他方、費用対効果評価制度については、▼分析方法(対象集団や比較対象技術の在り方など)、品目指定、分析プロセスについて整理・明確化を行う▼価格引き上げの条件について見直しを行う(「日本人を含む集団での費用対効果が増加すること」などとする)▼高額医薬品の価格調整については、レケンビ特例も踏まえつつ、2026年度以降の改革に向けて議論を継続する▼「介護費」の取り扱いは、レケンビ特例も踏まえつつ議論を継続する—といった改革内容がまとめられました(関連記事はこちらこちら)。

とりわけ注目を集めた「価格調整の範囲をどう考えるか」(現在は「有用性加算」にとどまるが、それを超えて価格調整を行うか)、「介護費用縮減を医薬品等価格に反映させるか」という論点については、画期的な認知症治療薬「レケンビ」(レカネマブ)において次のような特例的な取り扱いを行うことが決まっています。

▽価格調整について、ICER(費用対効果を評価する指標、ICERが500万円/QALY以下であれば「費用対効果が優れている」と判断)に基づいて次のような新たな特例対応を行う
▼「ICERが500万円/QALYとなる価格」>「見直し前の価格」の場合は、「見直し前価格+調整額」を調整後価格とする(薬価の引き上げ、ただし「見直し前の1.1倍」を引き上げの上限とする。引き上げ条件は現行規定を適用)

▼「ICERが500万円/QALYとなる価格」<「見直し前の価格」の場合は、「見直し前 価格-調整額」を調整後価格とする(薬価の引き下げ、ただし「見直し前の0.85倍」を引き下げの下限とする)

▽メーカーが介護費用分析を希望した場合、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン」に則って分析を行い、「介護費用を含めた分析結果」と「介護費用を含めない分析結果」をもとに、費用対効果評価専門組織(中医協の下部組織)→中医協で検討し、取り扱いを決定する



このレケンビ特例を「いわば試行」と捉え、今後「価格調整範囲の在り方」「介護費の取り扱い」を検討していくことになると言えそうです。レケンビが12月20日に保険適用され、遅くとも18か月後(2025年夏頃)には「費用対効果評価結果」が公になります。その結果を踏まえて、2026年度の次期費用対効果評価制度改革論議の中で、改めて「価格調整範囲の在り方」「介護費の取り扱い」論議が熱を帯びることでしょう。



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