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2026年度の次期診療報酬改定に向け、地域包括医療病棟のハードル、身体拘束最小化の取り組みなどを詳しく把握—入院・外来医療分科会

2024.10.31.（木）

2026年度の次期診療報酬改定に向けて、「入院・外来に関する2024年度診療報酬改定の影響・効果」を調査し、検証するが、例えば「身体拘束最小化マニュアルの策定状況」や「地域包括医療病棟の取得状況」「ICUにおける宿日直許可の取得状況」「看護補助者の状況」「入院の食費30円アップの効果」などを詳しく見ていくべき—。

中央社会保険医療協議会の下部組織である診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」（以下、入院・外来医療分科会）が10月30日に開かれ、こうした調査内容に関する議論を行いました。

委員からの意見を踏まえて厚生労働省で調査票の見直しなどを行い、▼11月上旬の中医協で調査票等を決定→▼11－12月の調査実施→▼年明け（2025年）3月頃から調査結果に基づく2026年度診療報酬改定論議をスタート—というスケジュールで今後の検討が進められる見通しです。

地域包括医療病棟、なぜ取得しないのか、施設基準のハードルはどこかなども把握

近年の診療報酬改定は、医療現場の実態を調査・分析した「エビデンス」をベースに実施されます。ある年度に「A」という診療報酬項目について見直しが行われた場合、当年度や翌年度に当該「A」項目の算定状況や効果などを調査し、「従前からあった課題は解消されているか」「中医協の期待に沿った動きとなっているか」などを調査。その結果、「課題は依然として解消されていない」ことなどが判明すれば、さらなる見直しを検討、「別の課題が浮上」した場合には異なる角度からの見直しを行うといった具合に中医協論議が進められます。

2024年度診療報酬改定では、非常に広範な内容の点数見直しが行われており、これまでに2024年度・25年度に次の8テーマについて調査する方針を固めています（関連記事はこちらとこちら）。

【本年度（2024年度）調査・分析】（本年（2024年）10－12月に調査を行い、来春（2025年春）から分析などを開始）
（1）急性期医療・救急医療等に対する評価の見直しの影響
（2）特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響
（3）地域包括医療病棟の新設の影響
（4）地域包括ケア病棟入院料・回復期リハビリ病棟入院料の実績要件等の見直しの影響
（5）療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響
（6）医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等
（7）外来医療に係る評価等

【来年度（2025年度）調査・分析】（来年（2023年）6－7月に調査を行い、同秋から分析を実施）
上記7項目に加えて（つまり上記7項目は2024・25年度の2年度にわたって調査）
（8）医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態

10月30日の入院・外来医療分科会では、上記のうち【本年度（2024年度）調査・分析】について、具体的な調査票案が提示されました（厚労省のサイトはこちら（概要）とこちら（調査票案））。

2024年度調査の概要1（入院・外来医療分科会1　241030）

2024年度調査の概要2（入院・外来医療分科会2　241030）

調査票の構成は、2022年度の前回診療報酬の効果を見る調査と同様ですが、2024年度の診療報酬改定・介護報酬改定を踏まえて、例えば次のような「新たな調査内容（設問）」が追加されています。

▽「要介護認定等に時間を要すると見込まれる患者」や「生活困窮者であり社会調整に時間を要する患者」「入院前に比べADLが低下し、退院後の社会調整に時間を要すると見込まれる患者」「長期的な低栄養状態となることが見込まれる患者」などについて、救急搬送・受け入れを行ったか否か

▽介護保険施設等との協力体制が整えられているか否か、断った場合にはその理由は何か

▽栄養管理手順に位置づけている栄養スクリーニング・栄養評価のツールとして「GLIM基準」（Global Leadership Initiative on Malnutrition）、「SGA」（Subjective Global Assessment）、「MNA」（Mini Nutritional Assessment）などを活用しているかどうか

▽身体拘束の予防・最小化マニュアル作成などを行っているかどうか

▽入院時の食費「30円アップ」の効果はどうか

▽ベースアップ評価料について「届け出を行っていない理由」はなにか

▽オンライン診療の実施体制等、てんかんや難病以外患者への遠隔連携診療の状況など

▽地域包括医療病棟の状況（届け出を行わない理由、ハードルとなっている施設基準、届け出を行った理由など）

▽リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の状況（届け出を行わない理由、ハードルとなっている施設基準、届け出を行った理由など）

▽看護補助者の状況

▽救急患者連携搬送の状況（高次医療機関サイド、後方医療機関サイドの双方で）

▽診療科ごとの医師処遇等

▽ICU等における「宿日直許可」の取得状況等

▽回復期リハビリ病棟における「質」評価の状況（FIM測定の研修、医療機能評価の受審など）

▽療養病棟における経腸栄養の状況

▽生活習慣病管理の状況

入院・外来医療分科会の委員からは、様々な角度からの意見・提案が出され、例えば▼地域包括医療病棟について「複数の急性期一般1（7対1）を保有するが、すべてで施設基準クリアが難しい場合に、一部を地域包括医療病棟に転換して『看護必要度を満たさない患者など』をそちらに移し、残りの急性期一般1（7対1）に看護必要度の高い患者を集める」などの対応がなされていないかをダイレクトに把握できる工夫をすべきではないか（津留英智委員：全日本病院協会常任理事）▼リハビリスタッフなどを確保できない理由について、「応募がない」のか、「報酬と人件費とがミスマッチであるため」なのか、などを見えるように工夫してはどうか（津留委員）▼▼療養病棟などの報酬区分を従前の9区分から30区分に精緻化しており、その状況をしっかり見ていくべき（井川誠一郎委員：日本慢性期医療協会副会長）―などの声が出ています。他の調査等（例えばDPCデータなど）で代替・カバーできる部分を、本調査で調べることとなれば、「重複調査となり回答する医療機関等の負担が重くなってしまう」ことから、そうした点も踏まえて「委員の意見を取り入れた修正を行うかどうか」を厚労省で詰めていきます。

調査票案や委員意見から「2026年度に予定される次期診療報酬改定で、どの分野・項目が重視されそうなのか」を一定程度占うことができそうです。

今後、委員からの意見を踏まえて厚労省で調査票の見直しなどを行い、▼11月上旬の中医協で調査票等を決定する→▼11－12月に調査を実施する→▼年明け（2025年）3月頃から調査結果に基づく2026年度診療報酬改定論議をスタートする—ことになります。