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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2024年度診療報酬でロボット支援下の弁置換術や肺切除術、3Dマンモグラフィなどを新たに保険適用へ―中医協総会(1)

2024.1.17.(水)

2024年度の次期診療報酬改定において、有用性や安全性のエビデンスが示された177件の医療技術について新規の保険適用(56件)や、点数の引き上げ・施設基準見直し(121件)などを行う。例えば、新規に保険適用される技術としては「ロボット支援下弁置換術(1弁)、同(2弁)」や「ロボット支援下の肺切除術」、「乳房トモシンセシス」(いわゆる3Dマンモグラフィ)などが、施設基準見直しなどが行われる技術としては「胃悪性腫瘍手術・幽門側切除術(ロボット支援)」(K655-2【腹腔鏡下胃切除術】の「3 悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの))などが考えられる—。

1月17日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった点が了承されました。なお同日には薬価制度・特定保険医療材料制度・費用対効果評価医制度の見直し案や、医薬品の市場拡大再算定についても議題に上がっており、これらは別稿で報じます。

2024年度の次期診療報酬改定、有用性・安全性の確認された177技術を保険適用

2年に一度行われる診療報酬改定では「有用性・安全性が確認された新たな医療技術を体系立てて保険適用する」ことも重要ポイントの1つとなります。進歩する医療技術を大量に保険適用することで、医療の質をより高めることが期待されます。

医療技術の有用性・安全性の評価は、専ら中医協の下部組織である「診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会」で行われ、▼医学会等からエビデンスを添えて「保険適用が妥当である」と提案された技術▼先進医療で実施されている技術▼企業からのチャレンジ申請を踏まえて保険医療材料等専門組織で有効性等を評価する技術―について、有用性・安全性をもとに保険適用の妥当性を専門的な視点で評価・審査します。

2024年度の次期診療報酬改定に向けては、学会などから提案された745件の医療技術と、31件の先進医療、4件の保険医療材料専門組織で審議した技術について有効性・安全性を審査(重複あり)。このうち177件(新規技術56件、既存技術121件)について「保険適用が妥当」との評価案が医療技術評価分科会で作成され、今般、中医協総会で原案通り了承されました。他の技術については「既に保険適用されている技術と重複している」「保険診療になじまない」「保険適用に向けたエビデンス等が十分でない」などと判断されています。

●技術評価結果の一覧はこちら



ここで、da vinciシステムなどを活用したロボット支援下内視鏡手術(内視鏡手術用支援機器を用いる手術)について見てみると、▼ロボット支援下弁置換術(1弁)▼ロボット支援下弁置換術(2弁)▼肺切除術(区域切除)(ロボット支援)(良性腫瘍についてのロボット支援手術を可能とする)▼肺切除術(肺葉切除)(ロボット支援)(良性腫瘍についてのロボット支援手術を可能とす▼ロボット支援下腟断端挙上術▼人工関節置換術・股関節(ロボット支援)―について新たに保険適用が認められます。



また、すでに保険適用されている次の3つのロボット支援手術については、学会から有用性のエビデンスが示されており、施設基準の緩和が行われる見込みです。

▽胃悪性腫瘍手術・幽門側切除術(ロボット支援)(K655-2【腹腔鏡下胃切除術】の「3 悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)」、現行7万3590点)

▽胃悪性腫瘍手術・全摘(ロボット支援)(K657-2【腹腔鏡下胃全摘術】の「4 悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)」、現行9万8850点)

▽胃悪性腫瘍手術・噴門側切除術(ロボット支援)(K655-5【腹腔鏡下噴門側胃切除術】の「3 悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)」、現行8万点)



さらに、「ロボット支援直腸癌手術」については、手術分類の見直し(適正化)が行われます。現在はロボット支援機器を用いた直腸がん手術は、K740-2【腹腔鏡下直腸切除・切断術】の(1)切除術(7万5460点)についてのみ認められていますが、K740-2【腹腔鏡下直腸切除・切断術】は(1)切除術:7万5460点(2)低位前方切除術:8万3930点(3)超低位前方切除術:9万1470点(4)経肛門吻合を伴う切除術:10万470点(5)切断術:8万3930点—の5区分に設定されており、ロボット支援機器を用いる場合でも同様の5区分評価となる見込みです(関連記事はこちら)。



一方、▼膵中央切除術(ロボット支援)▼膵体尾部切除(リンパ節郭清を伴う)(ロボット支援)▼ロボット支援下心房中隔欠損閉鎖術▼子宮悪性腫瘍手術(広汎切除)(ロボット支援)▼ロボット支援下子宮悪性腫瘍手術(単純)(傍大動脈リンパ節郭清を含む)▼ロボット支援下膀胱尿管逆流手術(膀胱外アプローチ)▼人工関節置換術・膝関節(ロボット支援)▼腰椎固定術(ロボット支援)▼脊椎側彎症手術 固定術(ロボット支援)▼骨盤内臓全摘術(ロボット支援)▼膵頭十二指腸切除術(ロボット支援)▼鼠径ヘルニア手術(ロボット支援下)▼内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下広汎子宮全摘術―については、有用性に関するエビデンスが不十分として今回の保険適用は見送られる格好です。

先進医療の中から、有用性・安全性・効率性等が十分に確認された5技術を保険適用

先進医療は、有効性・安全性が一定程度確立している医療技術について「保険診療と保険外診療との併用」を認め、症例数を重ねる中で有効性・安全性のエビデンスを構築し、将来の保険適用を目指す仕組みです。▼未承認の医薬品・医療機器を用いない、または人体への影響が小さな先進医療A▼未承認の医薬品・医療機器を用いる先進医療B―があります。先進医療に該当する部分の費用は自己負担としたまま、入院費用などについて公的医療保険を併用できる仕組みです。

2024年度の次期改定に向けては、次の5技術について「有用性のエビデンスがある」と判断され、保険適用されることになりました。

▽陽子線治療
▽重粒子線治療
▽腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術
▽腹腔鏡下スリーブ状胃切除術および十二指腸空腸バイパス術
▽遺伝子パネル検査による遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子診断



その他の既存先進医療技術については、「現時点で十分なエビデンスが構築されていない」ことから、先進医療として継続(つまり保険外診療と保険診療との併用を継続)し、さらに症例数を蓄積する中でエビデンス構築を目指すことになっています。



また、「大腸内視鏡検査における大腸上皮性病変の検出」について、企業からチャレンジ申請(保険適用後の症例集積で有用性などのエビデンスを構築し、評価の見直しを求める仕組み)が行われ、今般、技術料の見直し(引き上げ)が行われることが認められています。



なお、新たに保険適用等の対応が行われる177技術のうち116技術(新規32、既存84)については学会が作成する「診療ガイドライン」等に記載がなされています。これらの技術を保険診療の中で実施する際には「診療ガイドライン等に沿う」ことが要件となる見込みです。



このほか、新たに保険適用される医療技術を眺めると、例えば▼人工知能使用指針を準拠した施設の評価(対象医療機関の拡大)▼在宅心不全患者指導管理料▼乳房トモシンセシス(いわゆる3Dマンモグラフィ)▼ポジトロン断層撮影(アミロイドイメージング)▼通信情報機器を用いた歯科オンライン連携診療▼超重症児等在宅歯科医療管理加算―などが目を引きます。

新規技術の保険適用により、医療技術・科学技術進展の果実を国民全体が享受することができます。

外保連試案や診療実態を踏まえた手術点数体系の改善に向けた研究・検討を継続

ところで、2018年度診療報酬改定論議から、診療報酬点数表の手術コード(Kコード)について外科系学会社会保険委員会連合(外保連)試案の基幹コードである「STEM7」(部位・基本操作・アプローチ方法・アプローチ補助器械で体系化したコード)に沿った再編を行えないか、という検討・研究が進められています(2018年度改定からKコードにSTEM7併記がデータ提出加算の要件となった)。

これまでに、▼1つのKコードに対して手術部位毎にSTEM7が分類されている技術では、部位により「麻酔時間の分布」が異なっている(当然、投下医療資源が異なる)▼1つのKコードに対して「手術部位は同じだが、使用する器材の違い」によりSTEM7が分類されている技術では、用いる器材の違いによって「麻酔時間の分布」が異なっている—ことなどが明らかにされています(関連記事はこちら)。

こうした解析結果からは、「細分化すべきKコードがある」「合理化できるKコードがある」ことが伺われ、今後さらに分析を行い、「Kコードの整理」に向けた検討を進めていくことになります。



なおGem Medではオンラインの改定セミナーで詳細な解説を行っています。是非、ご活用ください。



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医師働き方改革サポートする【地域医療体制確保加算】取得病院で、勤務医負担がわずかだが増加している—中医協総会(1)
患者・一般国民の多くはオンライン診療よりも対面診療を希望、かかりつけ医機能評価する診療報酬の取得は低調―入院・外来医療分科会(5)
医師働き方改革のポイントは「薬剤師へのタスク・シフト」、薬剤師確保に向けた診療報酬でのサポートを―入院・外来医療分科会(4)
地域包括ケア病棟で救急患者対応相当程度進む、回復期リハビリ病棟で重症患者受け入れなど進む―入院・外来医療分科会(3)
スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル―入院・外来医療分科会(2)
急性期一般1で「病床利用率が下がり、在院日数が延伸し、重症患者割合が下がっている」点をどう考えるべきか―入院・外来医療分科会(1)

総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!—中医協総会
DPC病院は「DPC制度の正しい理解」が極めて重要、制度の周知徹底と合わせ、違反時の「退出勧告」などの対応検討を—中医協総会
2024年度の費用対効果制度改革に向けた論議スタート、まずは現行制度の課題を抽出―中医協
電子カルテ標準化や医療機関のサイバーセキュリティ対策等の医療DX、診療報酬でどうサポートするか—中医協総会

日常診療・介護の中で「人生の最終段階に受けたい・受けたくない医療・介護」の意思決定支援進めよ!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会

2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)