GemMed | データが拓く新時代医療 > 2024診療報酬改定 > 急性期充実体制加算と総合入院体制加算との「点数差縮小」するが、地域の医療提供体制、自院・他院の機能等考えて加算取得検討を

急性期充実体制加算と総合入院体制加算との「点数差縮小」するが、地域の医療提供体制、自院・他院の機能等考えて加算取得検討を

2024.3.6.（水）

厚生労働省が3月5日、2024年度診療報酬に関する関係告示の公布・通知の発出を行いました。あわせて動画やパワーポイントスライドを用いた、分かりやすい解説も行われています。

2月14日の答申時点では明らかにされていなかった詳細な基準や要件の内容が示されています。Gem Medでは、順次、告示・通知内容をお伝えしていきます。

●厚労省の2024年度改定に関するサイトはこちら

今回は、「急性期充実体制加算」「総合入院体制加算」の見直しに焦点を合わせます。いずれもスーパー急性期病棟を評価する加算で、さらなる「地域医療提供体制の機能分化」を進めるための見直しが行われます。

▽地域包括医療病棟の詳細に関する記事はこちら
▽身体拘束の最小化等の詳細に関する記事はこちら

1 急性期充実体制加算、点数を引き下げ、「小児・周産期対応」病棟用の加算2を創設
2 総合入院体制加算1・2、全身件数の要件を厳格化し、点数を引き上げ
3 急性期充実と総合入院との「点数差」縮小するが、地域医療体制を考えて加算取得検討を

急性期充実体制加算、点数を引き下げ、「小児・周産期対応」病棟用の加算2を創設

まず急性期充実体制加算について見てみましょう。2022年度の前回診療報酬改定で「手術や救急医療等の高度専門的医療・急性期医療の提供体制を十分に確保する急性期病棟を評価する新たな加算」として設けられました。急性期一般1等の中でも「ICU等のユニット保有、救急患者受け入れ、多数の外科手術実績などを持つ急性期一般1等」では、特定機能病院に近い、高度かつ専門的な医療を行っていると考えられる点に着目したものです（関連記事はこちら）。

多くは「総合入院体制加算→急性期充実加算」という移行組ですが、その中には「総合入院体制加算で求められていた精神科入院対応をやめてしまうのではないか」と見られるケースもありました。2024年度診療報酬改定を議論してきた中央社会保険医療協議会では「地域に必要な医療体制が、診療報酬によって歪められてしまう」点も懸念し、次のような対応を行うことを決めています。

（1）「手術等の実績要件のうち多くの基準を満たす場合」（急性期充実体制加算1）と「それ以外で、小児科または産科の実績を有する場合」（急性期充実体制加算2）に区分する

（2）「小児科、産科および精神科の入院医療の提供に係る要件を満たす」病院を評価する【小児・周産期・精神科充実体制加算】（急性期充実体制加算にさらに上乗せする加算）を新設する（既存の【精神科充実体制加算】との併算定は不可）

（3）「許可病床数300床未満の医療機関」のみに適用される施設基準を廃止する

（4）「外来で化学療法を実施している割合が一定以上」であることを要件に追加する

（5）悪性腫瘍手術等の実績要件に「心臓胸部大血管手術に係る手術実績」を追加する。

（6）「救急用サマリ（救急時医療情報閲覧機能）」（意識不明等で救急搬送された患者に、適切な治療を行うために「過去のレセプト情報」のうち救急現場で必要な内容を、迅速に、例外的に本人同意なしに閲覧可能とする仕組み）の導入を要件化する

急性期充実体制加算の見直し概要

まず（1）は、「地域で必要な医療提供体制」を確保するために加算を2つにわけるものです。

（現行）
【急性期充実体制加算】
・7日以内：460点
・8－11日：250点
・12－14日：180点
↓
（見直し後）
【急性期充実体制加算1】
・7日以内：440点
・8－11日：200点
・12－14日：120点

【急性期充実体制加算2】
・7日以内：360点
・8－11日：150点
・12－14日：90点

●加算1・2共通の施設基準
▽急性期一般1病棟を持つ医療機関である（看護必要度IIによる評価が必要）
▽24時間の救急医療提供体制を敷いている（「救命救急センター等である、または救急搬送件数年間2000件以上等」かつ「精神科対応」かつ「救急用サマリ導入」）
▽救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院医療管理料のいずれかを取得
▽感染対策向上加算1を取得
▽画像診断・検査を24時間実施できる体制の確保
▽薬剤師が夜間当直を行うことにより、24時間の調剤実施体制を確保
▽精神科リエゾンチーム加算・認知症ケア加算1または2を取得
▽入院患者の病状の急変の兆候を捉えて対応する体制（いわゆるRRS）を敷いている
▽外来縮小体制を敷いている
▽手術・処置等の時間外加算1・休日加算1・深夜加算1の取得が望ましい（届け出ていない場合にはその理由を明示する）
▽療養病棟・地域包括ケア病棟を保有しない
▽病床数に占める急性期病床の割合が9割以上である
▽同一敷地内に介護保険施設（特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養）を設置していない
▽特定の保険薬局との間で不動産賃貸借取引がない（いわゆる「敷地内薬局」を設置していない）
▽▼平均在院日数14日以内▼一般病棟から同一病院の他病棟への転棟割合が1割未満▼入退院支援加算1または2の取得―のいずれをも満たす
▽敷地内禁煙としている
▽第三者評価を受けている（総合入院体制加算でも求められている）
▽総合入院体制加算を取得していない

●加算1の施設基準
▽手術等に係る実績について、以下のア、イからキまでのうち5つ以上を満たす
（ア）全身麻酔による手術：年2000件以上（うち緊急手術350件以上）
（イ）悪性腫瘍手術：年400件以上
（ウ）腹腔鏡下手術または胸腔鏡下手術：年400件以上
（エ）心臓カテーテル法による手術：年200件以上
（オ）消化管内視鏡による手術：年600件以上
（カ）化学療法：年1000件以上
（キ）心臓胸部大血管の手術：年100件

▽（カ）を満たす場合、▼外来腫瘍化学療法診療料1の取得▼外来化学療法実施割合60％以上—の双方を満たす

●加算2の施設基準
▽以下のいずれかを満たし、かつ、上記「ア、イからキまで」のうち2つ以上を満たす
▼異常分娩件数：年50件以上
▼6歳未満の乳幼児手術件数：年40件以上

▽（カ）を満たす場合、▼外来腫瘍化学療法診療料1の取得▼外来化学療法実施割合60％以上—の双方を満たす

加算1は「手術等に極めて力を入れる急性期一般1病棟」で取得する、加算2は「周産期医療、小児医療を力を入れる急性期一般1病棟」で取得するというイメージです。

また（2）では、小児患者、妊産婦患者、精神疾患の受け入れ体制を充実した場合に、次の新加算（急性期充実体制加算の上乗せ加算）が設けられます（下記要件に該当しない場合の【精神科充実体制加算】（30点）も継続）。上記のように「加算2として、小児、産科対応を行う場合には加算本体の点数が下がる」ことになりますが、「小児、産科対応を行い加算2を取得する場合でも、精神科対応を充実する」場合には一定の補填（加算）が行われます。また、加算1病院で「小児、産科対応」「精神科対応」を行う場合には、より高い点数が取得できることとなり、「地域の小児科、産科を守る」配慮がなされていると見ることができます。

（新）小児・周産期・精神科充実体制加算
・急性期充実体制加算１の場合：90点
・急性期充実体制加算２の場合：60点

【施設基準】（いずれも満たす）
▽異常分娩の件数：年50件以上
▽6歳未満の乳幼児の手術件数：年40件以上
▽以下のいずれも満たす（精神科充実体制加算の施設基準と同じ）
・医療法上の精神病床を有する
・精神疾患を有する患者に24時間対応できる体制を確保している
・精神病棟入院基本料、精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料、精神科地域包括ケア病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料のいずれかを取得し、現に精神疾患患者の入院を受け入れている

また、化学療法の外来実施を推進するために「化学療法年1000件以上」で要件をクリアしようとする場合には、「外来での化学療法実施割合60％以上」という新基準が設けられています。さらに「円滑な救急医療提供」に向けた「救急用サマリ」の導入も要件化（義務化）されました。急性期充実体制加算の取得継続・新規取得を考える医療機関では、こうした点にも留意が必要です。

総合入院体制加算1・2、全身件数の要件を厳格化し、点数を引き上げ

他方、【総合入院体制加算】については、次のような見直しが行われます。

（1）加算１・加算2について、「全身麻酔による手術の件数に係る要件」を厳格化し、点数を引き上げる

（2）新規に届け出を行う場合には、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がないこと」を要件に加える（いわゆる「敷地内薬局」がある医療機関での新規取得不可）
→ただし「本年（2024年）3月31日以前から、特定の保険薬局と不動産の賃貸借取引関係にある」場合は、当該特別の関係がないものとみなす

（3）加算1・加算2において、「救急用サマリ（救急時医療情報閲覧機能）」（意識不明等で救急搬送された患者に、適切な治療を行うために「過去のレセプト情報」のうち救急現場で必要な内容を、迅速に、例外的に本人同意なしに閲覧可能とする仕組み）の導入を要件化する

（4）看護必要度該当患者割合を見直す

総合入院体制加算の見直し概要

まず（1）では、次のような見直しが行われます。全身麻酔手術の要件が加算1・2では厳しくなっており、「現状のままでクリアできるか」「クリアできない場合には、どの病院等と連携して手術症例を確保するか」などを早急にチェックし、対応策を練る必要があります。

〇点数
（現行）
【総合入院体制加算】（1日につき、14日まで）
・加算1：240点
・加算2：180点
・加算3：120点
↓
（見直し後）
【総合入院体制加算】（1日につき、14日まで）
・加算1：260点（＋20点）
・加算2：200点（＋20点）
・加算3：120点（変わらず）

〇施設基準のうち「全身麻酔による手術件数」の基準
（現行）
・加算1：年800件以上
・加算2：年800件以上
・加算3：年800件以上
↓
（見直し後）
・加算1：年2000件以上（＋1200件の厳格化）
・加算2：年1200件以上（＋400件の厳格化）
・加算3：年800件以上（変わらず）

また、（4）の看護必要度該当患者割合については、次のような見直しが行われます（看護必要度の項目等が見直される点にも留意、関連記事はこちら）。

〇該当患者の定義見直し
（現行）
A2点・B3点以上、A3点以上、C1点以上
↓
（見直し後）
A2点以上、C1点以上

〇該当患者割合の見直し
【総合入院体制加算1】
（現行）
A2点・B3点以上、A3点以上、C1点以上で
・必要度I：「33％」以上
・必要度II：「30％」以上
↓
（見直し後）
A2点以上、C1点以上で
・必要度I：「33％」以上
・必要度II：「32％」以上

【総合入院体制加算2】
（現行）
A2点・B3点以上、A3点以上、C1点以上で
・必要度I：「33％」以上
・必要度II：「30％」以上
↓
（見直し後）
A2点以上、C1点以上で
・必要度I：「31％」以上
・必要度II：「30％」以上

【総合入院体制加算3】
（現行）
A2点・B3点以上、A3点以上、C1点以上で
・必要度I：「30％」以上
・必要度II：「27％」以上
↓
（見直し後）
A2点以上、C1点以上で
・必要度I：「28％」以上
・必要度II：「27％」以上

急性期充実と総合入院との「点数差」縮小するが、地域医療体制を考えて加算取得検討を

急性期充実体制加算本体については点数の引き下げが行われ、総合入院体制加算本体では点数の引き上げ（加算1：240点→260点、加算2：180点→200点、加算3：120点、入院から14日間）＋施設基準厳格化（加算1・2）が行われ、両者の点数差が小さくなっています。例えば14日間の合計で見ると、次のようになります。

▼急性期充実1：4840点（現行4760点よりも80点減）
▼急性期充実2：3390点（同じく1370点減）
▼総合入院1：3640点（同じく280点増）
▼総合入院2：2800点（同じく280点増）
▼総合入院3：1680点（変わらず）

もっとも、ここに上記加算を重ねると次のようになります。
〇小児・周産期・精神科充実体制加算を取得する場合（14日間の合計点数）
▼急性期充実1：6100点
▼急性期充実2：4230点

〇精神科充実体制加算を取得する場合（14日間の合計点数）
▼急性期充実1：5260点
▼急性期充実2：3810点

従前は、「点数が上がる」点を踏まえて「総合入院→急性期充実へのシフト」が生じましたが、改定後は「総合入院1＞加算を取得できない急性期充実2」となるため、異なる動きが出てくる可能性があります。もっとも「点数の高い低い」よりも、「地域でどのような医療提供が求められ、自院の機能や退院の機能に照らせば、自院で取得すべき加算はいずれなのか」を重視した検討が求められる点に留意が必要です。