訪問看護ステーションでのオンライン資格確認・請求義務化を決定、期限付きの経過措置を置くが、早急な対応が求められる—中医協総会(3)
2023.10.19.(木)
医療保険の訪問看護について、▼来年(2024年)6月からオンライン請求・オンライン資格確認を導入する▼保険証とマイナンバーカードの一体化を行う来秋(2024年秋)からオンライン請求・オンライン資格確認を、一部事業所で期限付きの経過措置をおいたうえで「原則、義務化」する—。
例外的に認められている「紙レセプト請求」について、来年(2024年)4月以降も継続する場合には「改めての届け出」を必須要件とすることに伴い、オンライン資格確認の義務化免除医療機関も同様に考える—。
10月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした方針が決まりました。小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)から武見敬三厚生労働大臣に宛てて答申が行われており、今後、厚労省内で必要な法令改正・制度の周知・補助の仕組み創設が進められます。
紙レセ医療機関、2024年4月以降は申請しなければ紙レセ請求・オンシ導入猶予不可に
Gem Medで報じているとおり、医療DXの更なる加速を目指し、10月11日の中医協総会に武見厚労相から次の3点に関する諮問が行われました(関連記事はこちら(中医協)とこちら(社会保障審議会・医療保険部会))。
(1)医療保険の訪問看護について、▼来年(2024年)6月からオンライン請求・オンライン資格確認を導入する▼保険証とマイナンバーカードの一体化を行う来秋(2024年秋)からオンライン請求・オンライン資格確認を原則義務化する(「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」の改正)
(2)訪問診療や訪問看護におけるオンライン資格確認について、2回目以降訪問時の本人確認は「再照会による確認」で可能な旨を明確化する(「保険医療機関及び保険医療養担当規則」などの改正)
(3)例外的に認められている「紙レセプト請求」について、来年(2024年)4月以降も継続する場合には「改めての届け出」を必須要件とすることに関連し、オンライン資格確認の義務化免除医療機関も同様に考えることとする(「保険医療機関及び保険医療養担当規則」などの改正)
既に報じた内容と重複しますが、大枠を振り返ると次のような見直し・対応が行われるものです。
まず(1)は、医療保険の訪問看護について、「オンライン請求・オンライン資格確認」を導入するとともに、保険証とマイナンバーカードの一体化を行う来秋(2024年秋)からオンライン請求・オンライン資格確認を原則義務化するものです。
ただし、小規模な事業所が多いことや、短期間でシステム導入をしなければならないことなどに鑑み、「経過措置(下表)」「財政的・技術的な支援」が行われます(関連記事はこちら)。
(2)の居宅同意取得型のオンライン資格確認は、訪問診療や訪問看護などで用いられ、通常のオンライン資格確認(医療機関窓口での資格確認、過去の診療情報へのアクセス同意)と異なり、(a)医療従事者(訪問診療を行う医師や訪問看護師など)が持参するモバイル端末(タブレットなど)で本人確認を行う(b)下記のように訪問診療等の都度(毎回)の資格確認・同意は求めず、「初回の診療時に、いわば包括的な資格確認・同意を得る」仕組みとする—ことになります。またタブレット購入・システム改修に向けた費用への補助も行われます。
【資格確認】
継続的な関係のもと訪問診療等が行われている間(例えば、初回から3か月後の末日までの期間、さらにその後は、診療等の継続(毎月診療等が行われていること)をレセプトで確認できる期間)は、2回目以降の訪問に関しては、あらかじめ医療機関等において「マイナンバーカードの本人確認により取得した患者等の資格情報」を用いて、オンライン資格確認等システムに最新の資格情報を照会し、更新した資格情報に基づき被保険者であることを確認する(再照会)。
【過去の診療情報へのアクセスに関する同意取得】
「初回訪問」時にモバイル端末等を用いて同意登録を行い、当該医療機関等との継続的な関係のもとに訪問診療等が行われている間(例えば、初回から3か月後の末日までの期間、さらにその後は、診療等の継続(毎月診療等が行われていること)をレセプトで確認できる期間)は、当該同意を有効とする
(3)は、オンライン請求・オンライン資格確認の更なる導入を目指すもので、例外的に認められている「紙レセプト請求」について、来年(2024年)4月以降も継続する場合には「改めての届け出」を必須要件となることを踏まえ、「オンライン資格確認の義務化免除医療機関も同様に考える」とするものです。来年(2024年)4月に必要な届け出を行わない場合には「紙レセ請求が認められず、オンライン資格確認システムの義務「免除」対象にもならない」ことになり、十分な注意が必要です。
10月18日の中医協総会では、これら(1)から(3)の見直しを認める旨を小塩会長から、武見厚労相に宛てて答申しました。
ただし、診療側代表の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「医療機関等では現場に大変な混乱・困難があったが、三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)による現場支援して、今の状況(本年(2023年)9月24日時点で、オンライン資格確認等の準備完了:90.7%(義務化施設では96.9%)、運用開始:86.3%(義務化施設では92.5%))までこぎつけた。訪問看護では医療保険・介護保険の切り替えを行う利用者も少なくなく、また『小規模である』『高齢の利用者が多い』など、導入・運用のハードルは医療機関等よりも高い。国はもちろん、関係団体が十分に内容・趣旨を理解し、全面的な導入・運用の協力・支援をする必要がある。運用開始前には十分な時間をとって試行等を行い、技術的課題について現場の声に耳を傾けながら対応してほしい。事業所も利用者も『誰一人取り残さない』対応が強く求められる」と要請。
また、支払側代表の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「訪問看護ステーションにおける経過措置は、限定的なものとし、『やむを得ない事情』があるか否かは厚労省で適切に判断してほしい。オンライン請求の原則義務化はデータ分析の精度向上につながる。訪問看護レセプトも含めて、そうしたデータを中医協での議論に活かすことを期待したい」と要望しています。
答申を受け、今後、厚労省内で必要な対応(法令の改正、医療機関等や国民へのPR、補助制度の創設など)が進められます。
なお、10月18日の中医協総会には、医療機関等におけるオンライン資格確認等の導入状況についての報告も行われました。
「オンライン資格確認等の義務化がなされているが、対応が未完了の医療機関」は本年(2023年)10月1日時点で4669施設あります。
このうち、本来は「9月末までにオンライン資格確認等システムを導入していなければならなかい」施設(本年(2023年)2月までにベンダと契約したが、システム導入が遅れている施設は9月末まで義務が猶予される)のうち、454施設は「10月に入っても未完了である」ことが明らかになりました。厚労省は「早急の導入を進める必要がある」とコメントしています(厳密は「療養担当規則」違反の状態である)。
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