有床診減少ペースは落ち着いたか?2023年1月に6000施設・3月に8万床切る見込み―医療施設動態調査(2021年10月)
2021.12.28.(火)
有床診療所は、今年(2021年)9月から10月にかけて10施設・145床の減少となった。減少ペースがやや落ちているようにも見えるが、中長期的な動きを確認する必要がある―。
現在の減少ペースが維持されるとすれば、再来年(2023年)1月末に6000施設を割り込み、同じく3月末に8万床を切る計算である―。
厚生労働省が12月24日に公表した医療施設動態調査(2021年10月末概数)から、こうした状況が分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診は再来年(2023年)1月末に6000施設割るペースで減少、減少スピードダウンか
厚労省は、毎月末の医療機関(病院・診療所)施設数・病床数を集計し、「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、その前の月末の状況はこちら)。
今般、今年(2021年)10月末の状況が発表され、全国の医療施設は18万765施設で、前月末から58施設増加しました。
このうち病院の施設数は前月末から6施設減少し、8199施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7147施設(前月から7施設減)▼精神科病院:1052施設(同1施設増)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3518施設で前月末から10施設減、「地域医療支援病院」は633施設で前月末から1施設増加しています。
一方、医科診療所の施設数は10万4538施設で、前月末から77施設増加しました。その内訳は、無床クリニックが87施設増加(9万8333施設)、有床クリニックが10施設減少(6205施設)です。無床の一般診療所増加は「病院から無床診療所への医師・看護師等の移動」(つまり退職)につながります。新型コロナウイルス感染症が拡大し「医療従事者が散在し、医療提供体制が逼迫している」と各地で悲鳴が上がる中で、こうした動きをどう考えていくべきかも今後の重要な検討テーマの1つとなっていくでしょう。
医科の有床診療所施設数を見ると、2年前(2019年10月末)には6619施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年10月末)には6379施設(厚労省のサイトはこちら)でした。一昨年(2019年)10月末から昨年(2020年)10月末までの1年間で240施設の減少、そこから今年(2021年)10月末(6205施設)までの1年間で174施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、昨年(2020年)10月末以降、次のように推移しています。
▼2020年10月末:6379施設
↓(9施設減)
▼2020年11月末:6370施設
↓(21施設減)
▼2020年12月末:6349施設
↓(26施設減)
▼2021年1月末:6323施設
↓(20施設減)
▼2021年2月末:6303施設
↓(17施設減)
▼2021年3月末:6286施設
↓(17施設減)
▼2021年4月末:6269施設
↓(6施設減)
▼2021年5月末:6263施設
↓(9施設減)
▼2021年6月末:6254施設
↓(7施設減)
▼2021年7月末:6247施設
↓(17施設減)
▼2021年8月末:6230施設
↓(15施設減)
▼2021年9月末:6215施設
↓(10施設減)
▼2021年10月末:6205施設
直近1年間は、1か月当たり「14.5施設」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、再来年(2023年)1月末に6000施設を割る計算です(前月までよりも2か月遅いペース)。
有床診のベッド数は2023年3月末に8万床切るペースで減少、やや減少ペース落ちる
次に病院・診療所の病床数(ベッド数)に目を移してします。
医療機関全体では、今年(2021年)10月末のベッド数は158万5309床で、前月(2021年9月)末から1526床の大幅減少となりました。
このうち病院病床数は150万1254床で、前月末から1381床の大幅減。医療法上の病床種類別に見ると▼一般病床:88万6574床(前月末から294床増加)▼療養病床:28万5380床(同1435床減少)▼精神病床:32万3454床(同213床減少)—などです。療養病床の大幅減は「介護医療院などへの転換」によるところが大きいと考えられます。
有床診療所の病床数は前月末から145床減少し、8万3997床となりました。2年前(2019年10月末)には9万472床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年10月末)には8万6868床(厚労省のサイトはこちら)でした。一昨年(2019年)10月末から昨年(2020年)10月末までの1年間で3604床減少、そこから今年(2021年)10月末までの1年間で2871床減少しています。昨年(2020年)10月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2020年10月末:8万6868床
↓(200床減)
▼2020年11月末:8万6668床
↓(337床減)
▼2020年12月末:8万6331床
↓(402床減)
▼2021年1月末:8万5929床
↓(280床減)
▼2021年2月末:8万5649床
↓(313床減)
▼2021年3月末:8万5336床
↓(287床減)
▼2021年4月末:8万5049床
↓(78床減)
▼2021年5月末:8万4971床
↓(222床減)
▼2021年6月末:8万4749床
↓(86床減)
▼2021年7月末:8万4663床
↓(230床減)
▼2021年8月末:8万4433床
↓(291床減)
▼2021年9月末:8万4142床
↓(145床減)
▼2021年10月末:8万3997床
この1年間では、1か月当たり「240床弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、再来年(2023年)3月末に8万床を切る計算です(前月までより1か月遅いペース)。
施設数・ベッド数ともに「有床診の減少ペースが遅くなっている」ようにも見えますが、中長期的に見ていく必要があります。
有床診は、▼将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)▼現在の医療提供体制―のいずれにおいても重要な構成要素です(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)。有床診の減少は、現在および将来における地域医療・介護提供体制の脆弱化を招きかねません。
厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
2020年度の前回診療報酬改定では、次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。
▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)
▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる
▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる
▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる
▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる
▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)
さらに、2022年度の次期診療報酬改定に向けて、▼在宅医療拠点・在宅広報病床としての機能評価▼有床診で透析を行った場合の評価—などが検討されています。こうした効果がどこまで現れるのか気になるところです。
ところで、「診療報酬による手当てでは有床診の減少を止めることはできないのではないか。有床診減少の背景には『後継者不在』なども大きく関係しており、別の手当てを考える必要があるのではないか」と指摘する識者もおられます。非常に難しいテーマであり「医療機関の承継等も含めた、医療機関の在り方」に遡った議論も必要になってきそうです。
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有床診療所、現時点で10万床を割っている可能性大―医療施設動態調査(2017年6月)
有床診、2017年5月末に10万466床、7月に10万床切るペースで減少―医療施設動態調査(2017年5月)
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有床診、現在の減少ペース続けば、今年(2017年)8月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年3月)
2017年2月、有床診は7500施設を切り7485施設に、ベッド数は10万1697床に―医療施設動態調査(2017年2月)
2016年以降、有床診は月間26施設・320床のペースで減少―医療施設動態調査(2017年1月)
有床診療所、前月に比べて施設数は25、ベッド数は287減少―医療施設動態調査(2016年12月)
有床診療所、前月に比べて施設数は30、ベッド数は367減少―医療施設動態調査(2016年11月)
一般病床数、療養病床数ともに2か月連続で3桁の減少―医療施設動態調査(2016年10月)
一般病床数、療養病床数ともに3桁の減少―医療施設動態調査(2016年9月)
有床診療所の施設数・ベッド数の減少ペースがやや鈍化―医療施設動態調査(2016年8月)
一般病床数は前月比336床増加の一方で、療養病床数は252床減少―医療施設動態調査(2016年7月)
一般病床の平均在院日数は16.5日、病床利用率は75.0%に―2015年医療施設動態調査
一般病床数は前月比977床の大幅増、精神病床は237床減―医療施設動態調査(2016年5月)
一般病床数は前月比379床増、精神病床は551床減、2016年度改定との関連の分析が必要―医療施設動態調査(2016年4月)
一般病床数が前月比1135床減、2か月連続で千床台の大幅減―医療施設動態調査(2016年3月)
一般病床数が前月から1299床の大幅減、今後の動向に注目集まる―医療施設動態調査(2016年2月)
病院の一般病床数が前月から726床減少、無床のクリニックも減少―医療施設動態調査(2016年1月)
有床診の減少止まらず7864施設に、2016年度診療報酬改定の効果のほどは?―医療施設動態調査(15年12月)
有床診の減少止まらず、2015年11月には7905施設・10万6890床に―医療施設動態調査(15年11月)
有床診の減少、依然続く、2015年10月には7927施設・10万7210床に―医療施設動態調査(15年10月)
有床診の減少止まらず、2016年度改定での対応に注目集まる―医療施設動態調査(15年9月)
有床診療所、ついに8000施設を切る―医療施設動態調査(15年8月)
病院の病床数、15年5月には156万7636床に―医療施設動態調査