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2020年度の医療・介護等経費は5353億円増に抑えた30兆5269億円に—2020年度厚労省概算要求

2019.8.30.(金)

 厚生労働省は8月29日に、来年度(2020年度)予算の概算要求を行いました。年金や労働保険などの特別会計を含まない一般会計は32兆6234億円を要求し、これは今年度(2019年度)当初予算に比べて6593億円・2.1%の増額要求となります(厚労省のサイトはこちら(概要)こちら(主要事項))。
 
 このうち年金・医療など社会保障に係る経費については、今年度(2019年度)に比べて5353億円の増額要求を行っています。2020年度予算概算要求について、安倍晋三内閣は「年金・医療等の社会保障関係費について2019年度当初予算から5300億円の増額要求を認める」方針を決めており、他府省所管の減少分(マイナス100億円)と合わせると、この方針を達成できています。
2020年度予算概算要求1 190829
 

2019年度に続き、全世代型社会保障の構築を目指す

 厚労省の2020年度予算概算要求の枠組みは、▼年金・医療などに係る経費について、「高齢化などに伴う増加」として前年度から5300億円の増加を見込む▼義務的経費は前年度並みとする▼その他の経費(裁量的経費・公共事業関係費)は公共事業関係費などを前年度から10%削減する▼「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、推進枠)として別途2239億円を見込む—という形です。
2020年度予算概算要求2 190829
 
 今年度(2019年度)と同様に「人生100年時代に対応した全世代型社会保障の構築」を目指し、(1)多様な就労・社会参加の促進(2)健康寿命延伸等に向けた保健・医療・介護の充実(3)安全・安心な暮らしの確保等—の3分野を重点項目に据えました。これにより▼長く元気に活躍でき安心して暮らせる社会保障の基盤強化 → ▼社会保障の担い手の増加、消費の底上げ、投資の拡大 → ▼持続的な経済成長の実現―という正のスパイラル(好循環)を回す考えです。
2020年度予算概算要求3 190829
 
 重点項目の1つ目「多様な就労・社会参加の促進」に関しては、▼治療と仕事の両立支援 :35億円(2019年度にくらべて3億円増加)▼介護・保育・建設等の人材不足分野の関係団体と連携した人材確保支援等:421億円(同45億円増加)―などを行います。

 また2つ目の「保健・医療・介護の充実」に関しては、次のような施策を推進する構えです。

【地域包括ケアシステムの構築等】
▽地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者働き方改革の推進:979億円(今年度から135億円増加)、例えば「地域医療介護総合確保基金等による地域医療構想の推進」「医師少数区域等で勤務する医師の勤務環境改善等支援」「ICT活用やタスク・シフティング等の勤務環境改善・労働時間短縮に取り組む医療機関の支援」「医療勤務環境改善支援センターによる医療機関の訪問支援」「看護師の特定行為研修」「医療機関管理者のマネジメント研修の推進」「上手な医療のかかり方の啓発広報強化」など
▽災害医療体制の充実:98億円(同40億円増加)、例えば「病院の給水設備・非常用自家発電装置の整備」「DMAT体制の強化」「災害拠点精神科病院の耐震化」など
▽介護の受け皿整備、介護人材の確保:811億円(同19億円増加)、例えば「地域医療介護総合確保基金による介護施設等の整備・介護人材確保」「介護ロボット・ICT等の導入支援」「介護職員の処遇改善の促進」など
▽認知症施策推進大綱に基づく施策の推進:135億円(同16億円増加)、例えば「認知症本人・家族の支援ニーズに応える認知症サポーター活動(チームオレンジ)の全国展開推進」「認知症疾患医療センターの整備促進・相談機能強化」など

【健康寿命延伸、感染症・がん・肝炎・難病対策等の推進】
▽健康寿命延伸に向けた予防・健康づくり:1025億円(今年度から21億円増加)、例えば「生活習慣病の疾病予防・重症化予防等の先進的なデータヘルス事例の全国展開」「高齢者の保健事業と介護予防・フレイル対策の一体的な実施の推進」「予防・健康づくりの健康増進効果等に関する実証事業実施」など
▽がん対策の推進:80億円(同18億円増加)、例えば「がんゲノム情報管理センターの機能強化」「がんゲノム医療体制の整備」「がん等の全ゲノム解析の推進に向けた体制整備」など
▽難病・小児慢性特定疾病対策等の推進:20億円(同2億円増加)

【医療・福祉サービス改革による生産性の向上、科学技術・イノベーションの推進】
▽データヘルス改革、ロボット・AI・ICT等の実用化推進:607億円(今年度から116億円減少)、例えば「医療保険オンライン資格確認の実施、医療機関等の対応の支援」「NDBや介護DBで 保有する健康・医療・介護情報を連結して分析可能な環境の整備」など

【医療の国際展開・国際保健への貢献】
▽外国人患者の受入環境の整備:18億円(今年度から1億円増加)、例えば「医療機関における多言語コミュニケーション対応の支援」「医療機関等からの相談にワンストップで対応するための地方自治体への体制整備支援」「過去に医療費の不払等の経歴がある外国人に対して厳格な入国審査を実施するための仕組みの構築」など

がんゲノム医療中核拠点病院の機能強化等に210億円を要求予定

 次に2020年度厚労省予算概算要求の主要事項のうち、医療・介護分野に関連の深い事項を、上記の重点事項に含まれた内容も含めて眺めてみましょう。

 まず、「医療従事者の働き方改革」に向けて、▼ICT活用やタスク・シフティング等の勤務環境改善・労働時間短縮に取り組む医療機関の支援:42億円▼特定行為に係る看護師の研修制度の推進:6億6000万円▼医師事務作業補助者・看護補助者の確保・活用支援:9100万円▼医療機関管理者のマネジメント研修:5900万円▼「医療勤務環境改善支援センター」による医療機関の訪問支援:6億7000万円▼女性医療職等のキャリア支援:1億9000万円▼地域医療介護総合確保基金による病院内保育所への支援:689億円の内数▼医療機関への上手なかかり方の国民への周知啓発:4億9000万円▼「勤務医の時間外労働上限規制」開始に向けた制度準備等:2億円▼ICT等を活用した生産性向上の推進:28億円―などを行うことになります。

医師の働き方改革は2024年4月から、それ以外の医療従事者等については今年(2019年)4月から適用され、その準備・運用に向けた取り組みが充実されます。

 
 
 また医療提供体制に関しては、▼地域医療構想の推進:691億円▼認定制度を活用した医師少数区域等における医師の勤務環境改善等:23億円▼総合診療医等の養成支援:47億円▼医療従事者働き方改革の推進:99億円▼災害医療体制の充実:98億円▼救急医療体制の整備:12億円▼小児・周産期医療体制の確保:6億円▼へき地保健医療対策の推進:75億円▼在宅医療の推進:2800万円▼人生の最終段階における医療・ケアの体制整備:1億3000万円▼医療安全の推進:12億円▼国民への情報提供の適正化の推進:5500万円―などが盛り込まれます。

 
 
一方、介護サービスに関しては、▼介護保険制度による介護サービスの確保(介護給付費の国庫負担分):2兆9763億円▼介護予防・日常生活支援総合事業等の推進:1674億円▼包括的支援事業の推進(認知症施策の推進、在宅医療・介護連携の推進など):267億円▼地域医療介護総合確保基金(介護分)の実施(介護施設等の整備、総合的・計画的な介護人材確保の推進、介護分野における生産性向上の推進、介護職員の処遇改善の促進など):549億円▼保険者のインセンティブ強化(介護・保険者機能強化推進交付金):200億円▼科学的介護の実現に資する取組の推進:14億円▼認知症施策推進大綱に基づく施策の推進(認知症施策推進大綱の取組の推進、認知症疾患医療センターの整備促進・相談機能強化、認知症理解のための普及啓発等など):135億円―などが目立ちます。

 
 
さらに「がん対策」に関しては、▼がん予防(がん検診の受診勧奨・再勧奨の実施など):148億円▼がん医療の充実(がんゲノム情報管理センターやがんゲノム医療中核拠点病院等の機能強化など):210億円▼がんとの共生(がん治療と仕事の両立など):32億円▼がん等の全ゲノム解析の推進に向けた体制整備:10億円―などが行われます。

 

 

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