追加的な補助金、診療報酬の加算・減算により病床機能の再編や病床削減を進めよ―経済財政諮問会議で有識者議員
2019.6.3.(月)
公立病院・公的病院等改革の内容や、2018年の病床機能報告結果は、地域医療構想に記載された「2025年における病床の必要量」からはかけ離れたものとなっている。期限を区切って改革内容を再検証するとともに、追加的な補助金による病床規模の削減(ダウンサイジング)、診療報酬の加算・減算などによる病床再編などを進める必要がある―。
5月31日に開催された経済財政諮問会議で、有識者議員からこういった提言が行われました。
公立病院・公的病院等の改革内容を「見える化」し、再検証を進めよ
画期的な白血病等治療薬「キムリア点滴静注」が保険収載され、薬価が3349万円に設定されています。こうした医療技術の高度化、高齢化の進行(2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる)などに伴い、医療費をはじめとする社会保障費は増加を続けます。
そうした中で、2025年から2040年にかけて、高齢者人口の増加度合いそのものは鈍化しますが、高齢者を支える現役世代(生産年齢人口)が急激に減少していくことが分かっています。これは、社会保障制度の基盤が極めて脆くなることを意味し、安倍晋三内閣では、社会保障制度の維持に向けた「改革」の検討を進めています。
経済財政諮問会議の有識者議員(▼竹森俊平議員:慶應義塾大学経済学部教授▼中西宏明議員:日立製作所取締役会長兼執行役▼新浪剛史議員:サントリーホールディングス代表取締役社長▼柳川範之議員:東京大学大学院経済学研究科教授)は、5月31日の会合で次のような事項を骨太方針2019(経済財政運営と改革の基本方針2019)に盛り込むよう提言しました。
(1)都道府県が主体的な役割を果たすガバナンス構造の確立
(2)次世代型行政サービスの推進
(3)インセンティブ改革の推進
(4)見える化の徹底・拡大
まず(1)では、▼医療提供体制(医療計画)▼医療費適正化(医療費適正化計画)▼国民健康保険の財政運営▼健康寿命の延伸―の責任主体である都道府県が、受益と負担の均衡確保に向けて主体的な役割を果たせるガバナンス構造を確立する必要があるとし、次のような改革を推進するよう求めています。
▽病床機能報告結果や、公立病院・公的病院等の機能改革の内容を見ると、「地域医療構想における2025年の病床の必要量」等に沿ったものとなっておらず、「民間医療機関では担えない機能」に重点化し、2025年に達成すべき医療機能の再編、病床数等の適正化に沿ったものとなるよう、適切な基準を新たに設定し、期限を区切った見直しを求める。民間病院についても病床数の削減・再編に向けた具体的な道筋を明らかにする
▽地域医療介護総合確保基金について、国が主導する実効的な PDCA サイクルを構築するとともに、成果等の検証を踏まえ、必要な場合には「追加的な病床のダウンサイジング支援」を講じる
▽国民健康保険の都道府県化(財政責任主体)を契機として、国保の法定外繰入等の早期解消を促すとともに、国保の都道府県内の保険料水準の統一や収納率の向上など受益と負担の見える化に取り組む先進・優良事例を全国展開する
▽「健康寿命に影響をもたらす要因」に関する研究を行うとともに、毎年の動向を各地域単位で把握可能な客観的な指標に基づいて施策を推進する
地域医療構想の実現に向けては、2018年度中にほとんどの公立病院・公的病院等が「機能改革案」をまとめ、地域医療構想調整会議で合意が得られましたが、「形だけの合意になっていないか」との指摘が多方面から寄せられています。今後、「地域の医療機関ごとの診療実績」をもとに、合意内容の再検証を進め、必要に応じて▼一部機能の再編・統合(例えば、がん医療について民間と公立等が競合し、民間に余力が十分な場合には、がん機能を当該民間病院に集約するなど)▼病院全体の再編・統合(例えば地域に公立病院等が複数あり、非効率な体制となっている場合には、合併等を進め、効果的・効率的な医療提供体制を目指す)―などの方向が議論されています。今夏には各医療機関の診療実績データが示される見込みで、そこから再検証が本格的に実施されることになるでしょう(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
また(2)では、▼2020年度の本格稼働を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」の期限を定め、レセプトに基づく薬剤情報や特定健診情報を全国の医療機関等で確認できる仕組みを構築する▼生まれてから学校、職場に至るまでの健診・検診情報を2022年度までに標準化された形でデジタル化し、蓄積を推進するとともに、予防等への分析・活用を進める―など次世代型サービスの実現を求めています。
さらに(3)では、▼地域医療構想の実現に向けた「補助金の活用による病床削減」「加減算双方向での診療報酬の大胆な見直しによる病床機能の転換」を進める▼インセンティブの評価指標について、「アウトカム指標の割合」を計画的に引き上げる▼後発医薬品の使用割合向上、糖尿病の重症化予防等に向けたインセンティブが十分に機能しているか、第三期医療費適正化計画で見込まれた1人当たり医療費の地域差縮減効果が発揮されているかを検証し、必要な対応を検討する▼国保や健康保険組合だけでなく、協会けんぽや後期高齢者医療制度についても保険者別の評価やそれに基づく交付金等の財政インセンティブの配分を見える化する―など「インセンティブが十分に機能しているか」を検証するよう強く求めています。
2020年度の次期診療報酬改定において「地域医療構想の実現」に向けたどのような点数設定が行われるのか(基本料や加算の引き上げ、施設基準の厳格化など)、諮問会議でも注目度が高まっています。
一方、(4)では、改革の進捗状況を国民が認識できるよう、▼すべての公立病院・公的病院等の具体的対応方針を構想区域別に見える化し、「2025年に達成すべき病床数等に沿ったもの」となっているか、「民間で担えない機能に重点化」されているかを検証する▼40-50歳代の特定健診・がん検診受診率の向上に向け、保険者別の取り組みを見える化する(年齢階層別の特定健診等の実施率、がん検診と特定健診の一体的実施の有無、効果的な受診勧奨などナッジの活用等)▼糖尿病の重症化予防に関する成果を見える化する観点から、「都道府県別の透析医療費」だけでなく、「糖尿病性腎症による年間新規透析患者数」「糖尿病有病者数」などの都道府県別のデータを見える化する―よう求めています。
なお、こうした改革内容について、▼年金・介護については、法改正も視野に本年末(2019年末)までに▼医療等のその他の分野については、2020年の骨太方針に―取りまとめを行うよう要請。本年(2019年)夏以降に「給付と負担の議論」が行われますが、それに先立って「財政と社会保障制度等の重点課題」を整理することを提案しています。
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「救命救急やICUは高度急性期」など、特定入院料と病棟機能との関係を一部整理―地域医療構想GL検討会
高度急性期や急性期の患者数推計の計算式示される、リハの扱いに注意を―地域医療構想策定の関係省令
地域医療構想策定ガイドライン固まる、回復期は175点以上に設定
高度急性期は3000点、急性期は600点、回復期は225点以上と厚労省が提案-地域医療構想GL検討会(速報)
高度急性期15.5%、急性期47.1%、回復期8.8%、慢性期28.6%―病床機能報告の14年度末まとめ
特定機能病院は95.6%の病床を高度急性期と報告―病床機能報告の速報値(第3報)
病床機能報告、14年度結果を踏まえ今年度分から見直し―地域医療構想GL検討会
地域医療構想策定後はもちろん、策定前から地域医療の課題抽出をすべき―地域医療構想策定GL検討会
「病棟の機能」の再議論望む声相次ぐ―地域医療構想GL検討会
ICUやHCUが慢性期機能と報告した場合など、厚労省から「修正」依頼も―地域医療構想策定GL検討会
病院・病床の機能分化はペースも重要、短期間での達成は好ましくない―厚労省・佐々木室長
地域医療構想策定に向け、「地域で欠けている医療機能」や「医療提供体制の評価」が必要―厚労省・神田医政局長
新公立病院改革プラン、92.7%で策定完了だが、一部病院では2018年度にずれ込む―総務省
地域医療構想踏まえ、9月または12月までに「公的病院改革プラン」を策定せよ—厚労省
2018年度改定、医療費の伸び、国民負担など考慮せよ—骨太方針2017を閣議決定、ここでもプラス改定を牽制
骨太方針2018を閣議決定、公的・公立病院の再編統合、病床のダウンサイジング進めよ
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産科医が最少の医療圏は北海道の北空知(深川市等)と留萌、小児科では埼玉県の児玉(本庄市等)―医師需給分科会(1)
2036年の医療ニーズ充足には、毎年、内科2946名、外科1217名等の医師養成が必要―医師需給分科会(3)
2036年には、各都道府県・2次医療圏でどの程度の医師不足となるのか、厚労省が試算―医師需給分科会(2)
最も医師少数の2次医療圏は「北秋田」、最多数は「東京都区中央部」で格差は10.9倍―医師需給分科会(1)
「将来においても医師少数の都道府県」、臨時定員も活用した地域枠等の設置要請が可能―医師需給分科会(3)
医師数順位が下位3分の1の地域を「医師少数区域」とし、集中的に医師派遣等進める―医師需給分科会(2)
「医師少数区域等での勤務」認定制度、若手医師は連続6か月以上、ベテランは断続勤務も可―医師需給分科会(1)
外来医師が多い地域で新規開業するクリニック、「在宅医療」「初期救急」提供など求める―医師需給分科会
将来、地域医療支援病院の院長となるには「医師少数地域等での6-12か月の勤務」経験が必要に―医師需給分科会
入試要項に明記してあれば、地域枠における地元の「僻地出身者優遇」などは望ましい―医師需給分科会(2)
医師多数の3次・2次医療圏では、「他地域からの医師確保」計画を立ててはならない―医師需給分科会(1)
「必要な医師数確保」の目標値達成に向け、地域ごとに3年サイクルでPDCAを回す―医師需給分科会(2)
2036年に医師偏在が是正されるよう、地域枠・地元枠など設定し医師確保を進める―医師需給分科会
新たな指標用いて「真に医師が少ない」地域を把握し、医師派遣等を推進―医師需給分科会
医師働き方の改革内容まとまる、ただちに全医療機関で労務管理・労働時間短縮進めよ―医師働き方改革検討会
医師の時間外労働上限、医療現場が「遵守できる」と感じる基準でなければ実効性なし―医師働き方改革検討会
研修医等の労働上限特例(C水準)、根拠に基づき見直すが、A水準(960時間)目指すわけではない―医師働き方改革検討会(2)
「特定医師の長時間労働が常態化」している過疎地の救急病院など、優先的に医師派遣―医師働き方改革検討会(1)
研修医や専攻医、高度技能の取得希望医師、最長1860時間までの時間外労働を認めてはどうか―医師働き方改革検討会(2)
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勤務員の健康確保に向け、勤務間インターバルや代償休息、産業医等による面接指導など実施―医師働き方改革検討会(2)
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勤務医の時間外労働上限「2000時間」案、基礎データを精査し「より短時間の再提案」可能性も―医師働き方改革検討会
地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革は相互に「連環」している―厚労省・吉田医政局長
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勤務医の時間外労働の上限、健康確保策を講じた上で「一般則の特例」を設けてはどうか―医師働き方改革検討会
勤務医の時間外行為、「研鑽か、労働か」切り分け、外形的に判断できるようにしてはどうか―医師働き方改革検討会
医師の健康確保、「労働時間」よりも「6時間以上の睡眠時間」が重要―医師働き方改革検討会
「医師の自己研鑽が労働に該当するか」の基準案をどう作成し、運用するかが重要課題―医師働き方改革検討会(2)
医師は応召義務を厳しく捉え過ぎている、場面に応じた応召義務の在り方を整理―医師働き方改革検討会(1)
「時間外労働の上限」の超過は、応召義務を免れる「正当な理由」になるのか―医師働き方改革検討会(2)
勤務医の宿日直・自己研鑽の在り方、タスクシフトなども併せて検討を―医師働き方改革検討会(1)
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