2018年度の病床機能報告、高度急性期13.6%・急性期44.5%・回復期13.5%・慢性期28.4%―地域医療構想ワーキング(2)
2019.5.17.(金)
2015年度の病床機能報告では、高度急性期が13.6%、急性期が44.5%、回復期が13.5%、慢性期が28.4%となり、徐々に急性期が減少し、回復期が増加している―。
5月16日に開催された「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった報告も行われました。
2014度に比べて回復期は4.7ポイント増、急性期は1.6ポイント減
2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、医療・介護ニーズが今後、急速に増加していくと見込まれます。このため、医療提供体制を見直し、より効果的・効率的に医療・介護サービスを提供することが求められています。
その一環として「地域医療構想の実現」があげられます。2025年の医療ニーズを踏まえて、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―のベッド数がどれだけ地域で必要となるかを推計し、この構想にマッチするように病院・病棟・病床の機能分化を進めていくものです。
あわせて、一般病床・療養病床をもつすべての医療機関には、毎年度「病床機能報告」を行うことが義務付けられています。自院の病棟が、それぞれ▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―のどの機能を果たしていると考えるのか、また将来的にどの機能を果たすべきと考えているのか、などを都道府県に報告するものです。この結果と地域医療構想とを照らし合わせ、地域医療構想調整会議等で「データに基づいた自主的な機能分化・連携」に向けた議論を行うことが期待されています。
今般、2018年度の病床機能報告結果の速報値が紹介されました。2019年2月15日までに報告されたデータを集計したもので、今後、多少の数値変動が生じる見込みです。ここでは「病院」の報告結果を眺めてみましょう。
まず昨年(2018年)7月1日時点で、各医療機関が「自院の各病棟の機能」をどう考えているかを見ると、病床数ベースで▼高度急性期:13.6%(15万9478床)▼急性期:44.5%(52万2234床)▼回復期:13.5%(15万8495床)▼慢性期:28.4%(33万3445床)―となっています。
初年度(2014年度)報告結果からみると、各機能の病床数割合は次のように推移しています。
【高度急性期】
2014年度:15.5%→15年度:14.4%→16年度:14.4%→17年度:13.9%→18年度:13.6%
【急性期】
2014年度:47.1%→15年度:46.7%→16年度:45.8%→17年度:45.6%→18年度:44.5%
【回復期】
2014年度:8.8%→15年度:9.9%→16年度:10.7%→17年度:11.8%→18年度:13.5%
【慢性期】
2014年度:28.6%→15年度:29.0%→16年度:29.0%→17年度:28.6%→18年度:28.4%
急性期と報告する病院・病棟が減少し、回復期と報告する病院・病棟が増加していることが分かります。とくに2017年度から18年度にかけて、この傾向が強く出ていることが伺えます(▼急性期の減少幅は、14-17年度は平均0.7ポイントだが、17-18年度は1.1▼回復期の増加幅は、14-17年度は平均1.0ポイントだが、17-18年度は1.7ポイント)。
この背景には、2018年度の病床機能報告において「定量的基準」が導入されたことがありそうです。
ここでいう定量的基準は、「医療行為」と「機能」とを一定程度紐づけし、例えば▼幅広い手術の実施状況▼がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療状況▼重症患者への対応状況▼救急医療の実施状況▼全身管理の状況―などの診療実績が「全くない」病棟について、高度急性期・急性期と報告することを認めない、とするものです。
従前、例えば「急性期の外科病棟と報告しながら、1か月に1件も手術を実施していない」ケースや、「高度急性期の循環器内科と報告しながら、1か月に1件も経皮的冠動脈形成術を実施していない」ケースが見られたことを受け、ワーキングで「一定程度、報告する際の目安として定量的基準を導入すべき」との方向が固まったものです(関連記事はこちらとこちら)。
さらに、ワーキング等では、報告の目安の1つとして「入院基本料、特定入院料」と「機能」との紐づけも行っており、これらが医療現場に浸透し、徐々に効果が現れてきていると考えられます。
もっとも、依然として「急性期」が多く、「回復期」が少ない状況に変化はありません。地域医療構想と異なり、病床機能報告は「病棟」単位のため、「急性期病棟にも一定程度、回復期等棟に該当する患者」がいます(多くの病棟では、高度急性期から慢性期の患者が混在しており、もっともシェアの多い患者の状態(高度急性期から慢性期)を、当該病棟の機能として報告することが推奨されている)。ワーキングでは、こうした点を勘案し中川俊男構成員(日本医師会副会長)らは「地域医療構想と病床機能報告とを単純比較すべきでない」と強く指摘しています。
しかし、地域医療構想と病床機能報告とで、あまりに数値が乖離していれば、現場に混乱も生じるでしょう。各都道府県の地域医療構想を積み上げると、▼高度急性期:11%程度(13万床程度)▼急性期:35%弱(40万床程度)▼回復期:33%程度(38万床程度)▼慢性期:22%程度(25万床程度)―となっています。2018年度の病床機能報告結果は、地域医療構想と比べて「急性期が10ポイント以上多く、回復期が20ポイント程度少ない」状況となっており、今後のワーキングや厚労省の動きに注目が集まります(関連記事はこちら)。
なお、2018年度から「2025年度の機能」に関する報告が義務化されています(これまで6年後の機能報告を義務付け、2025年度の機能は任意とされてきたが、2025年度が目前に迫ってきたため)。それによれば、病床数ベースで▼高度急性期:14.3%(16万4317床)▼急性期:44.5%(51万1195床)▼回復期:15.8%(19万2382床)▼慢性期:25.1%(30万5602床)―となりました。回復期は依然少ない、状況です。
特定機能病院の一部、依然として「全病棟、高度急性期」と報告
ところで、従前から「特定機能病院の多くで、すべての病棟を高度急性期と報告しているが、病床機能報告制度の内容や趣旨などの理解が進んでいないのではないか」との指摘があります(初年度である2014年度には病床数ベースで95.6%が高度急性期とされていた)。
しかし、いかに特定機能病院であっても、すべての病棟が高度急性期とは考えにくく、厚生労働省は「個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして、医療機能を適切に選択してほしい」旨を報告マニュアルに追記しています。
2018年度の状況を見ると、多くの特定機能病院で「高度急性期から急性期、さらには回復期へと報告内容をシフトしている」状況が伺え、一定程度、理解が進んでいることが分かりますが、依然として「全病棟が高度急性期である」と譲らない病院も決して少なくありません。
この点について中川俊男委員は、「一部の特定機能病院では、地域医療構想などに協力するなどの意識が見られないようだ。各特定機能病院に報告結果を送付し、意識改革を迫るべきではないか」と指摘しています。特定機能病院であっても、地域医療の1プレイヤーであることは当然で、「自院の等身大の姿」を客観的にみることが必要で、その場合「全病棟が高度急性期」という結果は導かれにくくなります。
厚労省は、まず全国医学部長病院長会議などと協議することから始める旨の考えを示しています。
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