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GemMed塾 短期間で効果を出せるコスト削減の手法とは ~パス改善と材料コスト削減~

「有床診の減少」に歯止めかからず、さらなる一手を打つのか、別方向に舵を切るのか―医療施設動態調査(2020年8月)

2020.10.28.(水)

有床診療所の減少には歯止めがかからず、現在のペースでは、2022年5月末に施設数は6000を割り、来年(2021年)4月末にベッド数は8万5000床を切る可能性が高い—。

また病院のベッド数「大幅減少」(とりわけ療養病床の減少)も、昨年(2019年)後半から続いている―。

厚生労働省が10月26日に公表した医療施設動態調査(2020年8月末概数)から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。新型コロウイルス感染症による「倒産」等の影響はいまだ数字には現れていませんが、今後の動向を注視していくことが重要です

有床診の大幅減、病院病床数の大幅減が続いている(医療施設動態調査(2020年8月) 201026)

有床診の減少止まらず、2022年5月には6000施設を切ってしまう見込み

厚労省は、毎月末の医療機関(病院・診療所)数・病床数を積み上げ、「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。今年(2020年)8月末における全国の医療施設は17万9356施設となり、前月末から71施設増加しました。

病院の施設数は、前月末から2施設減少し8247施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7193施設(前月末から2施設減少)▼精神科病院:1054施設(同増減なし)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3583施設で前月末から6施設減少、「地域医療支援病院」は624施設で前月末から1施設増加しています。

地域医療支援病院に関しては、昨年(2019年)8月に厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で承認要件の見直しを決定。現在の▼紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)▼医療機器の共同利用▼救急医療の提供▼地域の医療従事者への研修の実施―という4つの役割・機能に加え、都道府県が「医師の少ない地域への医師派遣実施」などのプラスアルファ要件を独自追加(厳格化)することを認めるものです(関連記事はこちらこちらこちら)。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で医療法改正案の国会提出が遅れており、今後の動向に留意が必要です。



ところで、新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響(収入減)により「病院・診療所の倒産」が増加することが懸念されていますが、8月末時点の数字を見ても目立った動きは出ていないようです。3月→4月→5月と病院経営が悪化の度合いを増し、その後、6月→7月と回復してきていますが、まだ前年同月に比べて「患者が減少している」状況からは脱却できていません。今秋冬には新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザとの並走(いわゆるツインデミック)も予想され、医療機関経営にさらなる打撃が及ぶ可能性もあります。将来的に赤字が積み重なり、今後、倒産等が顕在化する可能性もあり、注意が必要です。
【新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響調査等の関連記事】
●GHC分析7月6月 5月4月3月
●支払基金データ7月6月5月4月3月
●日病・全日病・医法協調査7月調査第1四半期追加報告最終報告速報
●全自病調査5月分調査4月分調査
●全国医学部長病院長会議調査7月分調査4・5・6月分調査
●健保連調査7月分調査6月分調査4月・5月分調査
●厚労省医療費の動向4-6月分



医科診療所に目を移すと10万2912施設で、前月末から102施設も増加しています(無床の一般診療所が121施設増加)。ただし有床診療所は前月末から19設減少し、6414施設となりました。

なお歯科診療所は、6月から7月にかけて46施設減少、7月から8月にかけて29施設減少しており、ここに新型コロナウイルス感染症が影響している(患者が新型コロナウイルス感染を避けるために受診を控える → 医療機関の経営が悪化する)可能性もあります。今後の動きを注視する必要があります。



有床診療所の施設数は、2年前(2018年8月末)には6948施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年8月末)には6662施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年8月末から2019年8月末までの1年間で286施設の減少、さらに今年(2020年)8月末までの1年間で248施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、2019年8月末以降、次のように推移しています。

▼2019年8月末:6662施設
↓(18施設減)
▼2019年9月末:6644施設
↓(25施設減)
▼2019年10月末:6619施設
↓(19施設減)
▼2019年11月末:6600施設
↓(19施設減)
▼2019年12月末:6581施設
↓(29施設減)
▼2020年1月末:6552施設
↓(21施設減)
▼2020年2月末:6531施設
↓(7施設減)
▼2020年3月末:6524施設
↓(41施設減)
▼2020年4月末:6483施設
↓(17施設減)
▼2020年5月末:6466施設
↓(20施設減)
▼2020年6月末:6446施設
↓(13施設減)
▼2020年7月末:6433施設
↓(19施設減)
▼2020年8月末:6414施設

直近1年間は、1か月当たり「21施設弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、2022年5月末に6000施設を割ってしまう計算になります(前月末までより1か月遅い同じペース)。

有床診のベッド数、現行ペースが続けば「2021年4月」に8万5000床を割ってしまう

次に病院・診療所の病床数(ベッド数)を眺めてみましょう。全体では、今年(2020年)8月末には159万9891床で、前月末から540減少しています。▼2019年10月→11月:933床減▼同年11月→12月:969床減▼同年12月→2020年1月:1014床減▼同年1月→2月:1787床減▼同年2月→3月末:2890床減▼同年3月末→4月末:7859床減▼同年4月末→5月末:1000床減▼同年5月→6月末:1083床減▼同年6月末→7月末:1170床減—と大幅減少が続いています。

このうち病院の病床数は151万2435床で、前月末から215床の減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万8026床(前月末から364床増加)▼療養病床:29万3407床(同540床減少)▼精神病床:32万4956床(同11床減少)—などとなっています。

また、有床診療所の病床数は前月末から325床減少し、8万7398床となりました。2年前(2018年8月末)には9万5029床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年8月末)には9万1068床(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年8月末から2019年8月末までの1年間で3961床減少、そこから今年(2020年)8月末までの1年間で3670床減少しています。2019年8月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2019年8月末:9万1068床
↓(243床減)
▼2019年9月末:9万825床
↓(353床減)
▼2019年10月末:9万472床
↓(224床減)
▼2019年11月末:9万248床
↓(291床減)
▼2019年12月末:8万9957床
↓(331床減)
▼2020年1月末:8万9626床
↓(237床減)
▼2020年2月末:8万9389床
↓(179床減)
▼2020年3月末:8万9210床
↓(601床減)
▼2020年4月末:8万8609床
↓(309床減)
▼2020年5月末:8万8300床
↓(362床減)
▼2020年6月末:8万7938床
↓(215床減)
▼2020年7月末:8万7723床
↓(325床減)
▼2020年8月末:8万7398床

この1年間では、1か月当たり「306床弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、来年(2021年)4月末には8万5000床を切る計算です(前月末よりも1か月早いペース)。



有床診は、今後の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)の重要な構成要素(急変時やレスパイトにおける入院病床)として期待されることはもちろん、現行の医療提供体制においても重要な構成要素(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)となっています。有床診の減少は、こうした地域包括ケアシステム・地域医療提供体制を脆弱化させることとなり、経営の下支えが重要となってきます。

厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらこちら)。

さらに、2020年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われています(関連記事はこちら)。

▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)

▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる

▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる

▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる

▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる

▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)

これらの効果は現時点では現れているとは言い難い状況です。近く、2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が始まりますが、「有床診の減少スピードに歯止めをかけるためにさらなる一手を打つ」のか、あるいは「別の方向に舵を切る」のか、なども重要な論点となってきそうです。

なお、「後継者がいない」ことによる閉院も少なからず生じていると指摘されていますが、この点については診療報酬での手当ては極めて困難です。有床診減少の背景をさらに詳しく分析していくことが重要です。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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一般病床数、療養病床数ともに3桁の減少―医療施設動態調査(2016年9月)
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一般病床数は前月比379床増、精神病床は551床減、2016年度改定との関連の分析が必要―医療施設動態調査(2016年4月)
一般病床数が前月比1135床減、2か月連続で千床台の大幅減―医療施設動態調査(2016年3月)
一般病床数が前月から1299床の大幅減、今後の動向に注目集まる―医療施設動態調査(2016年2月)
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有床診の減少止まらず、2016年度改定での対応に注目集まる―医療施設動態調査(15年9月)
有床診療所、ついに8000施設を切る―医療施設動態調査(15年8月)
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