有床診の減少止まらず、今年(2022年)7月に6000施設・11月に8万床を切ってしまう状況―医療施設動態調査(2021年12月)
2022.3.4.(金)
有床診療所は昨年末(2021年末)に6121施設・8万2981床と、減少が続いている―。
現在の減少ペースが維持されると仮定すれば、今年(2022年)7月末に6000施設を割り、同じく11月末に8万床を切ってしまう―。
厚生労働省が3月3日に公表した医療施設動態調査(2021年12月末概数)から、こうした状況が分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数、再集計で「今年(2022年)7月末に6000施設割る」見込み変わらず
厚労省は、医療機関(病院・診療所)の施設数・病床数を毎月末に集計し「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、その前の月末の状況はこちら)。
今般、昨年末(2021年12月末)の状況が発表されました。全国の医療施設は18万436施設で、前月末から46施設減少しました。
このうち病院の施設数は前月末から4施設減少し8193施設。種類別に見ると、▼一般病院:7139施設(前月から4施設減)▼精神科病院:1054施設(同増減なし)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3494施設で前月末から6施設減、「地域医療支援病院」は659施設で前月末からの増減はありません。
一方、医科診療所の施設数は10万4383施設で、前月末から16施設減少。内訳は、無床クリニックが5施設増加(9万8262施設)、有床クリニックが21施設減少(6121施設)です。無床の一般診療所増加は「病院から無床診療所への医師・看護師等の移動」(つまり退職)につながります。新型コロナウイルス感染症が拡大する中では「医療従事者が散在し、医療提供体制が逼迫している」ことが各地の医療提供体制逼迫の大きな要因となっています。無床クリニック開設の動きをどう考えていくべきかも今後の重要な検討テーマの1つとなっていくでしょう。
医科の有床診療所施設数を見ると、2年前(2019年12月末)には6581施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年12月末)には6349施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2019年末から一昨年末(2020年12月末)までの1年間で232施設の減少、さらに、そこから昨年末(2021年12月末、6121施設)までの1年間で228施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、一昨年末(2020年12月末)以降、次のように推移しています。
▼2020年12月末:6349施設
↓(26施設減)
▼2021年1月末:6323施設
↓(20施設減)
▼2021年2月末:6303施設
↓(17施設減)
▼2021年3月末:6286施設
↓(17施設減)
▼2021年4月末:6269施設
↓(6施設減)
▼2021年5月末:6263施設
↓(9施設減)
▼2021年6月末:6254施設
↓(7施設減)
▼2021年7月末:6247施設
↓(17施設減)
▼2021年8月末:6230施設
↓(15施設減)
▼2021年9月末:6215施設
↓(56施設減、再集計後)
▼2021年10月末:6159施設(再集計後)
↓(17施設減)
▼2021年11月末:6142施設
↓(21施設減)
▼2021年12月末:6321施設
直近1年間は、1か月当たり「ちょうど19施設」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、今年(2022年)7月末に6000施設を割る計算です(前月末と同じペース)。
有床診のベッド数、「今年(2022年)11月末に8万床切る」ペースで減少
病院・診療所の病床数(ベッド数)に目を移します。
医療機関全体では、昨年末(2021年12月末)時点のベッド数は158万1196床で、前月(2021年11月)末から527床の大幅減となりました。
このうち病院病床数は149万8157床で、前月末から225床減少しています。医療法上の病床種類別に見ると▼一般病床:88万6645床(前月末から195床増加)▼療養病床:28万2524床(同367床減少)▼精神病床:32万3159床(同53床減少)—などです。療養病床の減少は「介護医療院などへの転換」によるところが大きいと見られます。
有床診療所の病床数は前月末から302床減少し、8万2981床となりました。2年前(2019年12月末)には8万9957床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年12月末)には8万6331床(厚労省のサイトはこちら)でした。2019年末から一昨年末(2020年12月末)までの1年間で3626床減少、そこから昨年末(2021年12月末)までの1年間で3350床減少しています。一昨年末(2020年12月末)以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2020年12月末:8万6331床
↓(402床減)
▼2021年1月末:8万5929床
↓(280床減)
▼2021年2月末:8万5649床
↓(313床減)
▼2021年3月末:8万5336床
↓(287床減)
▼2021年4月末:8万5049床
↓(78床減)
▼2021年5月末:8万4971床
↓(222床減)
▼2021年6月末:8万4749床
↓(86床減)
▼2021年7月末:8万4663床
↓(230床減)
▼2021年8月末:8万4433床
↓(291床減)
▼2021年9月末:8万4142床
↓(611床減、再集計後)
▼2021年10月末:8万3531床(再集計後)
↓(248床減)
▼2021年11月末:8万3283床
↓(302床減)
▼2021年12月末:8万6668床
この1年間では、1か月当たり「279床強」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、今年(2022年)11月末に8万床を切る計算です。
「有床診の減少が依然として続いている」ことを再確認できますが、有床診は▼将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)▼現在の医療提供体制―のいずれにおいても重要な構成要素です(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)。有床診の減少は、現在および将来における地域医療・介護提供体制の脆弱化を招きかねません。
厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
2020年度の前回診療報酬改定では各種加算の引き上げなど見直しが行われました(関連記事はこちら)。
さらに、今般の2022年度診療報酬改定では、例えば次のような見直しが行われます(関連記事はこちら)。
【初期加算の細分化と充実】
〇有床診療所入院基本料
他院の急性期病棟からの転院患者、介護施設や自宅等からの入院患者受け入れを評価する【有床診療所一般病床初期加算】(1日150点、14日)
↓
▼急性期病院からの転院患者受け入れを評価する【有床診療所急性期患者支援病床初期加算】(1日につき150点、21日を限度)
▼介護施設や自宅等か他の入院患者受け入れを評価する【有床診療所在宅患者支援病床初期加算】(1日につき300点、21日を限度)
〇有床診療所療養病床入院基本料
他院の急性期病棟からの転院患者、介護施設や自宅等からの入院患者受け入れを評価する【救急・在宅等支援療養病床初期加算】(1日150点、14日)
↓
▼急性期病院からの転院患者受け入れを評価する【有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算】(1日につき300点、21日を限度)
▼介護施設や自宅等か他の入院患者受け入れを評価する【有床診療所在宅患者支援療養病床初期加算】(1日につき350点、21日を限度)
【新加算の創設】
〇有床診療所療養病床入院基本料において慢性維持透析患者を受け入れを促すために、新たに【慢性維持透析管理加算】(1日につき100点)を創設する(対象は人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、血漿交換療法、腹膜灌流を行っている患者)
〇産婦人科・産科に従事する常勤医師を3名以上配置し、常勤助産師を3名以上配置し、年間分娩件数120件以上等の基準を満たす有床診療所が地域周産期母子医療センターと連携して、▼40歳以上の初産婦▼子宮内胎児発育遅延の患者▼糖尿病の患者▼精神疾患の患者—で、医師が地域連携分娩管理の必要性を認めた患者に対して適切な分娩管理を行うことを【地域連携分娩管理加算】(3200点、【ハイリスク分娩等管理加算】の下部項目)として新たに評価を行う
こうした効果がどこまで現れるのか、今後の有床診の動向を見守る必要があります。
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有床診の減少スピード、再び上昇に転じる―医療施設動態調査(2018年12月)
有床診減少スピードは確実に鈍化、2018年度改定の効果か―医療施設動態調査(2018年11月)
有床診の減少スピードにやはりブレーキ、2018年度改定の効果か―医療施設動態調査(2018年10月)
有床診、2018年度改定の効果か、2018年9月末には減少スピードに若干のブレーキ―医療施設動態調査(2018年9月)
有床診、2018年8月末で6948施設に、19年10月には6500施設割れの可能性も―医療施設動態調査(2018年8月)
有床診、実は2018年6月末で7000施設を割っていた―医療施設動態調査(2018年7月)
有床診の減少スピードがアップ、7043床・9万6134床に―医療施設動態調査(2018年6月)
有床診の減少止まらず、すでに7000施設を割っている可能性も、療養病床も減少傾向―医療施設動態調査(2018年5月)
新年度に入り有床診の減少ペース早まる、2018年8月には7000施設を割る可能性―医療施設動態調査(2018年4月)
有床診の減少、ベッド減少ペースは若干緩むが、施設減少ペース変わらず―医療施設動態調査(2018年3月)
有床診、2018年1月末から2月末にかけ28施設・380床の減少―医療施設動態調査(2018年2月)
有床診、2018年1月末で7194施設・9万8111床に減少―医療施設動態調査(2018年1月)
有床診、2017年末で7218施設・9万838床に減少―医療施設動態調査(2017年12月)
有床診療所の減少続く、2018年度同時改定で歯止めがかかるのか―医療施設動態調査(2017年11月)
有床診療所の減少が加速、病床数は9万8843床に―医療施設動態調査(2017年10月)
有床診療所の減少に歯止めかからず、2018年度改定の効果に期待集まる―医療施設動態調査(2017年9月)
有床診療所、ついに集計結果でも10万床を割る―医療施設動態調査(2017年8月)
有床診療所は10万19床、現時点で10万床割れは確実―医療施設動態調査(2017年7月)
有床診療所、現時点で10万床を割っている可能性大―医療施設動態調査(2017年6月)
有床診、2017年5月末に10万466床、7月に10万床切るペースで減少―医療施設動態調査(2017年5月)
有床診、新年度から減少ペース早まり、今年(2017年)7月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年4月)
有床診、現在の減少ペース続けば、今年(2017年)8月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年3月)
2017年2月、有床診は7500施設を切り7485施設に、ベッド数は10万1697床に―医療施設動態調査(2017年2月)
2016年以降、有床診は月間26施設・320床のペースで減少―医療施設動態調査(2017年1月)
有床診療所、前月に比べて施設数は25、ベッド数は287減少―医療施設動態調査(2016年12月)
有床診療所、前月に比べて施設数は30、ベッド数は367減少―医療施設動態調査(2016年11月)
一般病床数、療養病床数ともに2か月連続で3桁の減少―医療施設動態調査(2016年10月)
一般病床数、療養病床数ともに3桁の減少―医療施設動態調査(2016年9月)
有床診療所の施設数・ベッド数の減少ペースがやや鈍化―医療施設動態調査(2016年8月)
一般病床数は前月比336床増加の一方で、療養病床数は252床減少―医療施設動態調査(2016年7月)
一般病床の平均在院日数は16.5日、病床利用率は75.0%に―2015年医療施設動態調査
一般病床数は前月比977床の大幅増、精神病床は237床減―医療施設動態調査(2016年5月)
一般病床数は前月比379床増、精神病床は551床減、2016年度改定との関連の分析が必要―医療施設動態調査(2016年4月)
一般病床数が前月比1135床減、2か月連続で千床台の大幅減―医療施設動態調査(2016年3月)
一般病床数が前月から1299床の大幅減、今後の動向に注目集まる―医療施設動態調査(2016年2月)
病院の一般病床数が前月から726床減少、無床のクリニックも減少―医療施設動態調査(2016年1月)
有床診の減少止まらず7864施設に、2016年度診療報酬改定の効果のほどは?―医療施設動態調査(15年12月)
有床診の減少止まらず、2015年11月には7905施設・10万6890床に―医療施設動態調査(15年11月)
有床診の減少、依然続く、2015年10月には7927施設・10万7210床に―医療施設動態調査(15年10月)
有床診の減少止まらず、2016年度改定での対応に注目集まる―医療施設動態調査(15年9月)
有床診療所、ついに8000施設を切る―医療施設動態調査(15年8月)
病院の病床数、15年5月には156万7636床に―医療施設動態調査