早期乳がん(長径1.5cm以内)への低侵襲の「乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法」を保険適用、診療報酬算定ルールも整備—厚労省
2023.12.8.(金)
これまで先進医療B・患者申出療養(保険診療+保険外診療)で行われてきた早期乳がん(長径1.5cm以内)への「乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法」を保険適用し、診療報酬算定ルールも整備する—。
厚生労働省は11月30日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました。12月1日より適用されています(厚労省サイトはこちら)。
学会指針を踏まえて「転倒しない」ような配慮の上で実施を
今回は、次の4本の通知・事務連絡について見直しを行いました。
(1)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(2022年3月4日付、保医発0304第1号)
(2)「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(2022年3月4日付、保医発0304第9号)
(3)「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正に伴う特定保険医療材料(使用歯科材料料)の算定について」(2022年3月4日付、保医発0304第10号)
(4)「特定保険医療材料の定義について」(2022年3月4日付、保医発0304第12号)
本稿では、(1)のうちでは、医科診療報酬算定上の留意事項(保険診療で実施する場合のルール)の見直し等を見ていきます。(a)D200【スパイログラフィー等検査】の見直し(b)K508-2【気管・気管支ステント留置術】の新設(c)K697-3【肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(一連として)】の見直し—の3点です。
まず(a)のD200【スパイログラフィー等検査】のうち、「5 左右別肺機能検査」の所定点数(1010点)の中に、新たな検査法「側副換気の有無を検出する検査を実施する際に、カテーテル挿入および側副換気の有無を検出する検査」の点数が含まれていることが明らかにされました。気管支用は側副換気の有無を検出する検査に用いるガイディングカテーテルが保険適用されたことを受けたものです。
また(b)では、K508-2【気管・気管支ステント留置術】について、新たに次のような留意事項(保険診療で実施する場合のルール)が設けられました。気管支用バルブや気管支バルブ治療用の血管造影用マイクロカテーテルが保険適用されたことを受けたものです。
▽手術に伴う画像診断・検査の費用は算定しない
▽気管支用バルブシステムを用いて重症慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する気管支バルブ留置治療を行う場合は、次の事項を遵守した場合に算定できる
▼関連学会の定める適正使用指針を遵守する
▼慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療に関する専門知識・少なくとも5年以上の経験を有し、関連学会の定める所定研修を修了している常勤の呼吸器内科・呼吸器外科の医師、またはそれに準じる気管支鏡手技に関する十分な知識・経験を有する医師が実施する
▽本治療の実施に当たっては、「K511【肺切除術】、K513【胸腔 鏡下肺切除術】が適応とならない、または実施困難である」理由をレセプトの摘要欄に記載する
さらに(3)は、先進医療Bあるいは患者申出療養(いずれも保険診療+保険外診療を認める仕組み)として実施されてきた「乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法」を保険適用したことに伴い、留意事項(保険診療で実施する場合のルール)を新たに設けるものです。
乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法は、早期乳がん(長径1.5cm以下)患者に対し、ニードル電極針を経皮的に乳房内の腫瘍に刺し、針から発生させたラジオ波で加熱・死滅させる技術です。「侵襲が少なく、整容面で大きなメリットがある」一方で、安全性・有効性の評価が十分でなかったことから、先進医療B・患者申出療養を活用して症例を蓄積(保険診療と保険外診療との併用が可能となり、患者の経済的負担を一定程度抑えることが可能で、症例が集積しやすくなる)。その中で安全性・有効性が確認され、今般、保険適用が認められたものです。より多くの乳がん患者が低侵襲の治療を受けられるようになることは非常に喜ばしいと言えます。
まず、乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法を保険診療の中で行う際には、次の要件をすべて満たすことが求められます(逆に言えば、要件を1つでもクリアできない場合には保険診療の中で実施することはできず、全額自己負担の自由診療で実施しなければならない)。
▽1.5cmとは腫瘍の長径であり、ラジオ波による焼灼範囲ではない
▽本療法の実施に当たっては、関係学会の定める適正使用指針を遵守する
▽本療法は、外科または乳腺外科の常勤医師が2名以上配置されている保険医療機関に限り算定できる
▽本療法は、乳腺外科または乳腺の専門知識・5年以上の経験を有する常勤医師が実施する
▽術前診断において「StageゼロまたはIA」で「腫瘍径1.5cm以下の乳腺悪性腫瘍」である患者への治療を目的として実施する
なお、【乳がんセンチネルリンパ節加算1】(5000点、放射性同位元素および色素を用いたセンチネルリンパ節生検を行った場合、インドシアニングリーンを用いたリンパ節生検を行った場合)、または【乳がんセンチネルリンパ節加算2】(3000点、放射性同位元素または色素を用いたセンチネルリンパ節生検を行った場合)は次の要件をすべて満たす場合に限って算定可能となります。
▽乳腺外科または外科の経験5年以上で、乳がんセンチネルリンパ節生検を当該手術に習熟した医師の指導の下に、術者として5症例以上経験している医師が配置されている
▽当該保険医療機関が乳腺外科または外科および放射線科を標榜しており、当該診療科において常勤医師が2名以上配置されている(ただし、D409-2【センチネルリンパ節生検(片側)】の「2 単独法」(3000点)のうち「色素のみによるもののみを実施する施設」では、放射線科を標榜していなくても差し支えない)
▽麻酔科標榜医が配置されている
▽病理部門が設置され、病理医が配置されている
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