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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2018年に報告された医療事故は4565件、うち7%弱で患者が死亡、PFM導入などの防止策を―日本医療機能評価機構

2019.7.17.(水)

 昨年(2018年)1年間に報告された医療事故は4565件あり、うち7.8%の356件では患者が「死亡」している。また、同じく2018年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は92万件強で、そのうち1.2%は仮に誤った行為を実施していた場合には「死亡」などにつながっていたと予想される―。

 このような状況が、日本医療機能評価機構が7月5日に発表した2018年の「医療事故情報収集等事業」の年報から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2017年の状況に関する記事はこちら、2016年の状況に関する記事はこちら)。

医療事故、「療養上の世話」の場面で、「整形外科」で多発

 日本医療機能評価機構では、医療安全対策の一環として医療機関で発生した事故やヒヤリ・ハット事例を収集、分析する「医療事故情報収集等事業」を実施し、定期的にその内容を公表しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 昨年(2018年)に報告された医療事故の状況を見てみましょう。報告された医療事故件数は合計で4565件(国立病院など報告義務のある医療機関に限ると4030件)となりました。

事故の程度別に見ると、「死亡」が356件(事故事例の7.8%、前年比べて0.1ポイント減少)、「障害残存の可能性が高い」ものが500件(同11.0%、同0.6ポイント増)、「障害残存の可能性が低い」ものが1235件(同27.1%、同1.6ポイント減)、「障害残存の可能性なし」が1179件(同25.8%、同0.8ポイント減)などとなっています。死亡事例は前年から横ばいですが、障害残存の可能性の高い事故が増加しており、事故防止対策の強化が急務である状況に変わりありません。
 
 医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「療養上の世話」で1553件(事故全体の34.0%、前年から6.0ポイント減)、次いで「治療・処置」1283件(同28.1%、同1.4ポイント増)、「薬剤」418件(同9.2%、同0.6ポイント増)、「ドレーン・チューブ」360件(同7.9%、同1.1ポイント増)などと続きます。前年より「ドレーン・チューブ」に関する事故が大きく増加している点が気になります。
医療事故情報収集等事業 2018年報1 190705
 
 事故に関連した診療科(複数回答が可能)を見ると、従前同様に整形外科(665件、全体の11.8%)、外科(469件、同8.3%)、内科(369件、同6.6%)、消化器科(356件、同6.3%)などで多い状況です。
医療事故情報収集等事業 2018年報2 190705

ヒヤリ・ハット事例は92万件強に増加、医療現場の透明性確保が進む

 次にヒヤリ・ハット事例を見てみましょう。昨年(2018年)1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計92万1140件で、前年に比べて3万件超増加しました。ミスそのものが増加していることも考えられますが、「ヒヤリとした、ハットとした」事例を医療現場で把握し、包み隠さずに報告している、つまり透明性が増しているという要素が大きいと考えられます。

内訳を見ると、「薬剤」が最も多く29万2416件(ヒヤリ・ハット事例全体の31.7%、前年比べて1.1ポイント減)、次いで「療養上の世話」20万3933件(同22.1%、同0.4ポイント増)、「ドレーン・チューブ」13万5011件(同14.7%、同0.1ポイント増)などで多くなっています。

 「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の3分の1に当たる30万4943件ですが、仮に誤った行為を実施していた場合には、3542件・1.2%では「死亡」もしくは「重篤な状況」に至り、また2万5337件・8.3%では「濃厚な処置・治療が必要になった」と考えられます。改めて「十分な注意」「ミスが生じない体制づくり」(複数チェックなど)が必要と言えます。
医療事故情報収集等事業 2018年報3 190705
 

持参薬の入院処方への切り替え忘れ事例が発生、PFMの導入などで防止徹底を

 2018年の年報では、次の9つの具体的な事故事例を取り上げ、詳細に分析した上で、再発防止策などを検討しています。
(1)持参薬のビーマス配合錠を院内で処方する際、リーマス錠を処方した事例【薬剤関連】
(2)持参薬から院内の処方に切り替えた際に抗血小板薬の処方が漏れた事例【薬剤関連】
(3)気管支鏡検査前に休薬する取り決めがあるタケルダ配合錠を休薬せず、検査が中止になった事例【薬剤関連】
(4)オキシコドン徐放カプセルの1回量と1日量を読み間違え、過剰投与した事例【薬剤関連】
(5)検査室に持参するミダゾラムを病室で全量投与した事例【薬剤関連】
(6)手術時、ミクリッツガーゼのカウントをしておらず体内に残存した事例【治療・処置】
(7)輸液ポンプの予定量を設定せず使用した際、気泡警報に不具合があり空気が血管内に混入した事例【医療機器等関連】
(8)胸腔ドレーンバッグの水封部に蒸留水を入れず吸引圧をかけたことにより気胸を発症した事例【ドレーン・チューブ関連】
(9)乳アレルギーの患者に乳製品が含まれている経腸栄養剤を投与した事例【その他】

 このうち(2)では、他院で処方された持参薬は入院処方に切り替えたものの、自院から院外処方した持参薬を入院処方に切り替えることを失念した事例です。外来で経皮的冠動脈形成術(PCI)の説明後、抗血小板薬2種類(タケルダ配合錠、エフィエント錠3.75mg)を42日間分、院外処方した患者が、説明から32日後にPCI目的で循環器脳卒中センターに入院しました。医師は持参薬全ての内容を継続する旨を口頭で看護師に指示し、持参薬を入院処方に切り換えるため、持参薬鑑定書を確認せず3日分処方しました。この際、他院の持参薬のみを処方し、当院院外処方の持参薬の抗血小板薬2種類の処方が漏れてしまいました。PCI実施後にヘモグロビンが7.0台に低下し、原因検索のためCT撮影をしたところ心嚢液が貯留していることが分かり、緊急心臓カテーテル検査と心嚢穿刺ドレナージを実施することとなりました。

機構では、▼医師のチェックだけでは、持参薬等の処方が漏れるため、「他職種によるチェックを入れる」仕組みの構築(薬剤師が服薬指導を行うなど)▼確実に内服したことが確認できるような仕組みを設ける(クリニカルパスに抗血小板薬の内服確認や服薬指導の項目を入れるなど)▼医師への連絡方法として、「紙の伝言板」使用はメモとしての活用はよいが、「報告の実績」としての使用は禁止する▼検査退院後から次回の治療入院までに外来受診がない場合、入院時に抗血小板薬の処方が漏れない仕組みを設ける(予定PCI入院の場合は、入院前に外来で予定入院患者の処方を確認できるようにしたり、外来クラークの協力のもと予定表で確認するなど)―の改善策を提案しています。

このように、「入退院支援」を行う組織を医療機関の実情に応じて設け、持参薬の確認などを行うことが非常に重要です。2018年度の診療報酬改定では、【入退院支援加算】(従前の【退院支援加算】から名称変更)の加算として【入院時支援加算】が創設されており、こうした医療機関の取り組みを経済的に一定程度下支えする環境も整備されてきています。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが昨年(2018年)開催したプレミアムセミナー(PFMセミナー)では、佐久総合病院・佐久医療センターの西澤延宏・副統括院長兼副院長から、「入院する前、つまり外来の時点から患者の入退院を支援する「Patient Flow Management」(PFM)の導入によって、医師や病棟看護師らの負担が軽減するとともに、平均在院日数の短縮による診療単価の向上、入退院支援に携わるメディカルスタッフのモチベーション向上などが期待される。さらに、何よりも「患者の満足度」が大きく向上する」ことが報告されました。是非、ご参考になさってください(関連記事はこちら)。

 
 
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