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3月時点から新型コロナで外来・入院ともに患者減、白内障・ポリペク割合の高い病院で患者減目立つ―GHC分析

2020.5.11.(月)

新型コロナウイルス感染症の影響がそれほど大きくない2020年3月時点で、すでに多くの病院で外来・入院ともに患者数の減少が始まっていた―。

中には前年同月に比べて2割超も入院患者数が減少してしまった病院もあり、それらには▼予定入院における白内障・ポリペク等割合が非常に高い▼「治療を待てない患者」が少ない―という共通の特徴がある―。

Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が、このような分析「第1弾」を行いました。外来の分析はGHCシニアマネジャーの湯原淳平、入院の分析は同じくマネジャーの冨吉則行が担当し、米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわが総括しました。既に3月時点で、新型コロナウイルス感染症が病院経営に大きな影響を及ぼしていることが明らかになっており、4月以降のデータを踏まえてGHCはさらに分析を行い、Gem Medでお伝えしていきます。

2020年3月、すでに「8割超の病院で外来症例数が減少」

新型コロナウイルスが我が国でも猛威を振るい続ける中、医療現場にも様々な影響が出ています。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、(1)感染を恐れて病院での受療を見合わせるという患者(需要側)の受療行動の抑制(2)医療機関側(供給側)による予定手術の延期など患者受け入れの制限という―の2つの影響を分析しました。

今回は分析「第1弾」として、「2019年3月」と「2020年3月」のデータを比較しています。クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」での新型コロナウイルスの集団発生が2020年2月、永寿総合病院(東京都台東区)などでの院内感染が報告されはじめたのが2020年4月の第1週、さらに安倍晋三内閣総理大臣が緊急事態宣言を行ったのが4月7日なので、今回の分析「第1弾」(3月分データ)からは、まだ新型コロナウイルス感染症の影響は限定的です。今後、4月分以降のデータが揃い次第、順次情報を更新していきます。

まず外来診療への影響を見てみましょう。GHCへデータ提供をいただいている病院のうち、107病院について、「2020年3月の外来症例数が、前年同月(2019年3月)に比べてどの程度増減したか」を見てみると、8割以上の病院で外来の症例数が減少していることが分かりました(図1)。まだ新型コロナウイルス感染症の影響が限定的であった2020年3月から、既に感染を恐れての受診抑制が始まっていたようです。

GHCによるコロナ分析第1弾1(200511)



これを、病床規模別(図2)、開設主体別(図3)に見てみると、前年比の「外来患者減少」は全ての病床規模、開設主体の病院に例外なく影響を及ぼしていることが分かります。3月時点で既に2割以上も外来症例数が落ち込んでいる病院もあります。

GHCによるコロナ分析第1弾2(200511)

GHCによるコロナ分析第1弾3(200511)

2020年3月、既に「入院症例数の減少」し、緊急入院数も減少

また病院においては、外来だけではなく、入院症例も大きく減少しています。ここでは、GHCにデータを提供していただいている病院のうち、272病院について「2020年3月の入院患者数が、前年同月(2019年3月)に比べてどの程度増減したか」を見てみると、やはりすべての病床規模で減少していることが分かります。全体では4.0%ですが、200床台、500床以上の病院では5%を超える減少となっています(図4)。

GHCによるコロナ分析第1弾4(200511)



予定入院と緊急入院に分けて入院症例の増減を見てみましょう(図5)。新型コロナウイルスへの感染防止のために「予定入院・手術の延期」検討が要請されたことに鑑みれば、予定入院症例数が前年比で減少することは容易に想定できますが、緊急入院も減っていることがわかりました。しかも減少率は予定入院よりも大きいのです。緊急入院症例数がこれだけ減るのはなぜでしょう?現時点では想像の域を出ませんが、「患者が新型コロナウイルス感染を恐れ、救急車を呼ぶことへの心理的抵抗が高くなっている」ことも考えられそうです。

GHCによるコロナ分析第1弾5(200511)

白内障患者など多く受け入れる病院、2020年3月に前年比2割超の患者減

次に予定入院と緊急入院に関して、「症例数の多い診断群」(DPC上6桁)を見てみましょう(図6)。予定入院で「症例数の減少幅」が大きいのは、▼白内障、水晶体の疾患(020110)▼狭心症、慢性虚血性心疾患(050050)▼小腸大腸の良性疾患(060100)―で、やはり「白内障手術」「心カテ検査」「ポリペク」について「施術の延期」が検討・実施されていることが伺えます。一方、「がん」に関する予定入院は、前立腺がんの予定入院以外は大きな影響を受けていません。これらは「想定どおり」と言えそうです。

GHCによるコロナ分析第1弾6(200511)



緊急入院では、興味深いことに、肺炎の症例数が減っています。2020年3月時点では、外出自粛・制限への要請はそれほど強くありませんでしたが、「うがいや手洗い」の励行が強く求められていました。現時点では想像の域をでませんが、「うがい、手洗いなどの予防措置を実行することにより、肺炎を減らすことができた」可能性も考えられます。

また、「がん」と同様に、基礎疾患が大きく関与する「脳梗塞や心不全」にはあまり変動が見られません。



なお、3月時点で入院症例数が2割超も落ち込んでいる医療機関が散見されましたが、それらに共通しているのは、▼予定入院における白内障やポリペクの割合が非常に高い▼がん患者のような「治療を待てない患者」が少ない―という点です。大規模な新興感染症が蔓延した際には、「疾患構成が、医療機関の症例数に大きく影響する」ことが確認できたと言えるかもしれません。

今回は、まだ新型コロナウイルス感染症の影響が限定的であった2020年3月のデータについて「速報」としてお伝えしました。3月時点で「既に外来・入院ともの大きな影響が出始めている」ことが分かりましたが、GHCでは、今後のデータ集積を待って、さらに詳報を行っていきます。

外来の分析を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
入院の分析を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、砺波総合病院(事例紹介はこちら)、富山県立中央病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「鼎談「II群請負人」(全8回の連載記事一覧)」)。
総括 アキ よしかわ(あき・よしかわ)

tomiyoshi 米国医療経済学者 経済学博士 そしてグローバルヘルス財団理事長、グローバルヘルスコンサルティング会長。
1980年代前半、米国議会技術評価局(OTA)でゲノムプロジェクトへの参画を皮切りに医療経済学者へ。カリフォルニア大学バークレー校の国際経済研究所の研究部長を経て、スタンフォード大学へ移籍し、同校で医療政策部を設立。主な著・編著には「Health Economics of Japan」(東京大学出版会)、「日本医療クライシス」(幻冬舎)、「日本人が知らない日本医療の真実」(幻冬舎)、「日米がん格差」(講談社)などがある。


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