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地域医療構想の実現に向けて、国のサポートを強化すべきだが・・・―社保審・医療部会

2019.5.7.(火)

 地域医療構想を2025年に実現することとなっているが、地域によって進捗状況に大きなバラつきがある。国が地域医療構想調整会議の議論に介入するなど、サポート体制を強化すべきではないか―。

 4月24日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった議論が行われました。

 ただし、例えば厚労省がダイレクトに地域医療構想調整会議の議論に関与することとなれば、「自主的な機能分化」という地域医療構想の大原則を変えることにもつながりかねません。国のサポートが重要なことは述べるまでもありませんが、まずは「データ提供」などを強化していくことになるでしょう。

4月24日に開催された、「第66回 社会保障審議会 医療部会」

4月24日に開催された、「第66回 社会保障審議会 医療部会」

 

地域医療構想調整会議の進捗状況には依然バラつき

(1)医師の働き方改革(2)医師偏在対策(3)地域医療構想の実現―、これらの一体的実施に向けた取り組みが進められています。例えば、地域において病院の機能分化が十分に進まず、またニーズを充足できる医師数が確保できなければ、個々の医師の負担は軽減されないといった具合に、これら3施策は相互に連関しているためです。
社保審・医療部会 190424の図表
 
まず(1)の医師の働き方改革に関しては、2024年度から「勤務医の時間外上限規制」(通常は年間960時間以下とし、救急医療機関などで特例的に年間1860時間以下とする)を適用することとなり、今後5年の間に、すべての医療機関で▼いわゆる36協定の締結をはじめとする労務管理の徹底▼医師から他職種への業務移管(タスク・シフティング)を進めるなど労働時間の短縮―を徹底することが求められます(関連記事はこちら)。

また(2)の医師偏在対策については、新たな指標に基づいて「医師多数」「医師少数」の地域をそれぞれ定め、医師多数の都道府県・2次医療圏から医師少数の都道府県・2次医療圏への医師派遣等を促します。また医師少数の地域を持つ都道府県では、大学の医学部に対し「地域枠」の設置を求めることなども可能です。各都道府県では新たに「医師確保計画」を定め、こうした医師派遣を促進するための施策(魅力的なキャリア形成プログラムなど)を定め、2020年度から稼働させます(関連記事はこちらこちら)。

さらに(3)の地域医療構想は、2025年度(いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる)に向けて地域の医療提供体制を再構築するための「計画」という位置づけです。まず公立病院・公的病院等の機能について地域医療構想調整会議で明確化等を進めることとなっており、2019年度以降、地域において「公立病院・公的病院等でなければ担えない機能」への特化が進んでいるのかを検証するとともに、回復期や慢性期の機能分化論議も進められる見込みです(関連記事はこちらこちら)。

 
4月24日の医療部会では、とりわけ(3)の地域医療構想について「2025年度の実現に間に合うのか」との指摘が複数出されました。例えば、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「2025年まで6年を切ったが、地域において調整会議論議の進捗には依然として大きなバラつきがあるようだ。国が行司役として調整会議の議論に介入すべきではないか」と指摘。河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)も、国によるサポートの強化を求めています。

一方、島崎謙治委員(政策研究大学院大学教授)は、「国民健康保険の都道府県単位化(財政責任主体を都道府県とする)も、地域医療構想等の実現などと密接に関連し、極めて個別性の高い状況となることから、国による一律の関与は困難ではないか。介入すべきは国よりも都道府県である」と指摘しています。

こうした指摘を受けて厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は、地域医療構想調整会議の議論活性化に向けて▼第三者的立場から意見を述べるアドバイザーの育成▼より詳細なデータの提供―などを行っていることを紹介し、「国によるサポート」を強化していく考えを強調しています。

ただし、冒頭に述べたように、例えば「国が地域医療構想調整会議の議論にダイレクトに介入する」こととなれば、「自主的な機能分化」という地域医療構想の大原則を変えることにもつながりかねず、さらに極論を言えば「地域で議論をする必要もない」ことになります。わざわざ各地の会議に出席せずとも、国が地域の医療提供体制等に関するデータ(病床機能報告データなど)をもとに、「●●病院は急性期機能に、〇〇病院は回復期機能に特化してください」と指示すれば足りる、ということにもなりかねないのです。しかし、これに地域の医療機関が納得して従うとは考えられず、「国によるサポートの強化」としては、まずデータの提示などにとどめ、医療機関による自主的な機能転換を促していくことになるでしょう。

 
 
なお、(2)の医師偏在対策の一環として、「地域における外来医療機能の不足・偏在等への対応」も今後実施されます。新たに「外来における医師の多数地域」を設定し、そこでの新規開業に対しては▼在宅医療▼初期救急(夜間・休日の診療)▼公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)―など「地域に必要とされる医療機能」を担うよう求めることとなります(関連記事はこちら)。

この考え方について山崎學委員(日本精神科病院協会会長)は、「医師多数地域で開業する医師の中には、学校医も担わない、医師会にも加入しないという人もいる。そうした人に『地域に必要とされる医療機能』を担うよう求めて、実効性があるのだろうか」と厳しいコメントをしています。稼働状況を見て「効果に乏しい」ことが分かれば、さらなる施策(極論すれば一定の開業制限など)が検討される可能性もあります。

 
 
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