【急性期一般1】病棟、入退院支援加算1は81%、入院時支援加算は57%、退院時共同指導料2は64%で取得―福祉医療機構
2018.11.8.(木)
お伝えしているように、福祉医療機構(WAM)が11月5日に「2018年度診療報酬改定が医療機関等に及ぼした影響」に関するアンケート結果を公表しました(WAMのサイトはこちら(概要版)とこちら(詳細版)、関連記事はこちら)。
今回は、今後の入院医療において重要な鍵となる「入退院支援」の状況を眺めてみましょう。
入退院支援加算1、取得への最大のハードルは「専従職員」の確保
長期間の入院は「ADLの低下」「院内感染リスクの増大」など、医療の質を低下させる可能性があります。また急性期入院医療においては「入院料の逓減」による収益の鈍化が生じ、また、患者が職場復帰等できないことによる経済的なデメリットも生じます。
このため入院医療においては「在院日数の短縮」が求められ、そこでは▼退院困難患者の抽出▼退院後(他病院等への転院や在宅など)を見据えた支援―などが重要になります。さらに、予定入院患者に対しては、こうした支援を「入院前から」実施することで、さまざまな効果が現れることが分かっています。
2018年度の診療報酬改定では、これら「退院支援」の重要性を踏まえ、従前の【退院支援加算】などについて次のような見直しを行っています(関連記事はこちらとこちら)。
▼入院前からの支援を評価する【入院時支援加算】(退院時に1回、200点)の新設
▼名称の【入退院支援加算】への変更と、算定患者の拡大
▼小児への支援を適切に評価できるよう、【小児加算】(退院時に1回、200点)の新設
▼地域医療連携の推進に向けた、「特別の関係」の見直し(入退院支援加算1などを、特別の関係にある医療機関間の連携でも算定可能とする)
▼【退院時共同指導料】の算定対象拡大
ここでは、【急性期一般入院基本料】(従前の7対1・10対1一般病棟)を届け出ている病棟において、【入退院支援加算】をどのように算定しているのかを見てみましょう。
まず届け出入院料別(急性期一般入院料1-7、ただし回答の中に入院料2・3を届け出ている病院はなかったので、入院料1・4・5・6・7のみ)に、【入退院支援加算1】を算定している割合を見ると、▼入院料1(看護必要度Iによる重症患者割合30%以上):81.0%▼入院料4(同27%以上):25.0%▼入院料5(同21%以上):52.9%▼入院料6(同15%以上):46.2%▼入院料7(同基準なし、測定のみが要件):ゼロ%―となりました。
適切な退院支援は「急性期を脱した、つまり医療・看護の必要性が低くなった患者について、より適切な病院・病棟への転院・転棟や在宅復帰を促進する」効果もあり、「当該病棟における重症患者割合の上昇」にもつながります。重症患者割合の基準値が厳しい【急性期一般入院料1】(従前の7対1)を届け出ている病棟では、この点を重視し、結果として【入退院支援加算1】の算定割合が高くなるものと考えられます。逆に言えば、より上位の入院料取得を目指し、重症患者割合を高めていくためには、【入退院支援加算】の活用を積極的に検討していくことが重要になってくるのです(もちろん「適切な入退院支援をするが、あえて加算を届け出・算定しない」という選択肢もある)。
【入退院支援加算1】を取得するためには、▼入退院支援経験が十分な専従の看護師・社会福祉士等を配置した入退院支援部門を設置する▼各病棟に入退院支援経験が十分な選任の看護師・社会福祉士を配置する▼連携先の医療機関や介護サービス事業者等(20か所以上)と、年3回以上の面会等を実施する▼直近1年間の【介護支援等連携指導料】の算定回数等が一定以上である―などの施設基準を満たさなければなりません。
急性期一般入院基本料を取得しながら、【入退院支援加算1】を算定していない理由を尋ねたところ、もっとも多い回答は「入退院支援部門は設置したが、必要な職員を配置できていない」というものでした(58.8%)。看護職員等の確保が困難な中で「入退院支援部門にエース級の看護職員を配置することは難しい」という状況がありますが、冒頭に述べた入退院支援の重要性などを踏まえれば、一定の時間をかけてでも【入退院支援加算1】の施設基準クリアに向けた行動を開始する必要があるでしょう。
入院時支援加算も、取得に向けたハードルは、やはり「人員」の確保
次に、届け出入院料別に【入院時支援加算】を算定している割合を見ると、▼入院料1:57.1%▼入院料4:6.3%▼入院料5:47.1%▼入院料6:30.8%▼入院料7:ゼロ%―にとどまっています。
【入院時支援加算】は、2018年度改定で新設された「【入退院支援加算】の加算」で、予定入院患者に対して、入院前(つまり外来時点)から退院後を見据えた支援を行うことを評価するものです。本加算創設前から、院内に外来と病棟の中間に位置する「患者サポートセンター」(入退院支援部門)を設置し、入院前からの退院支援に積極的に取り組んでいる佐久医療センター(長野県佐久市)では、▼医師および外来・病棟看護師の負担軽減▼患者サポートセンターで活躍するメディカルスタッフのモチベーション向上▼患者満足度の向上▼収益の向上―という複合的なメリットが生まれています(関連記事はこちら)。
急性期一般入院基本料を届け出ていながら、【入院時支援加算】を算定していない理由としては、「人員配置ができていない」が最も多くなっています(57.8%)。確かに、新たな人員配置に必要なコストと点数とを勘案すると、「当該加算だけでは人件費を賄えない」状況です。しかし、上述した、この加算のメリットも含めて考えれば、将来的には「取得・算定しなければならない加算」と言え、今から「採用」「異動」に関する計画を練っておくことが重要でしょう。佐久医療センターでは、「エース級の知識・技術を持っているが、育児などでフルタイムでの勤務が難しい」看護職員などの活用も行っているといいます。是非、参考になさってください(関連記事はこちら)。
退院時共同指導料2、看護職や社会福祉士が共同指導の中心的役割
また、届け出入院料別に【退院時共同指導料2】を算定している割合を見ると、▼入院料1:63.6%▼入院料4:6.3%▼入院料5:33.3%▼入院料6:42.9%▼入院料7:ゼロ%―という状況です。
【退院時共同指導料】は、入院患者の退院に向けて、「当該入院医療機関の医療スタッフ」と「在宅療養を担う医療スタッフ」とが、共同して必要な指導を行うことを評価するものです。当該入院医療機関では【退院時共同指導料2】(400点)を、在宅医療を担う医療機関では【退院時共同指導料1】(在宅療養支援診療所では1500点、それ以外の医療機関では900点)を算定できます。
2018年度改定では、共同指導を行える医療スタッフが、従前の「医師、看護師」に加えて、▼薬剤師▼管理栄養士▼理学療法士▼作業療法士▼言語聴覚士▼社会福祉士—にも拡大されました。より広範な職種により、算定の裾野が大きく広がったと言えそうです。
今般のWAM調査によれば、共同指導を中心的に実施する職種は▼看護師等:44.4%▼社会福祉士:44.4%▼医師:11.1%―、共同指導の相手方となる職種は▼介護支援専門員(ケアマネジャー):33.3%▼医師:22.2%▼看護師等:22.2%▼社会福祉士:7.4%▼訪問看護ステーションの看護師等:7.4%▼相談支援専門員:3.7%―となっています。より幅広い職種での共同指導が、算定機会を向上させるとともに、より多角的な指導を行う可能性も広がってきます。院内の状況を見て、徐々にスタッフの職種を拡大していくことを検討すべきでしょう。
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