内科専門医、1-2年程度のカリキュラム研修で総合診療専門医のダブルボード取得可―日本専門医機構・寺本理事長
2021.12.21.(火)
内科の新専門医資格を取得した医師が、次に「総合診療専門医」の資格を得ようと考えた場合のルールが正式に決定した。そこでは内科研修で行っていない「小児診療」や「救急医療」などの研修を受ける必要があるが、内科研修と総合診療研修とで重なりのある部分などは履修済と扱われるため、2年間程度(特例要件を満たせば1年間程度)の研修で「内科専門医と総合診療専門医とのダブルボード取得」を可能とする―。
12月20日の定例記者会見(オンライン会見)で、日本専門医機構の寺本民生理事長はこうした考えを述べました。同時に「内科・総合診療」以外のダブルホルダールールについても整備が進むことに期待を寄せています。
また2022年度から新専門医研修を受講し始める専攻医の採用状況について報告されました1次募集に関する採用数は8658名、現在の2次募集結果を含めると「9400名」程度が2022年度から新専門医研修をスタートすることになる見込みです。
内科専門医が「総合診療専門医」を新たに取得する場合、重複部分の研修を免除
新専門医制度は、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」を基本理念として2018年度から全面スタートしました。現在は、19の「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっています。
基本領域の研修を終えた新専門医が登場し始めますが、▼基本領域の専門医資格のみとする▼より細分化されたサブスペシャリティ領域の専門医資格取得に進む―という選択肢のほかに「別の基本領域の専門医資格を取得する」(いわゆるダブルボード、ダブルホルダー)という選択肢もあります。
今般、「内科領域の専門医資格を取得した医師」(内科専門医)が「総合診療医の専門医資格を取得する」に当たってのルールが正式に決定しました。通常の研修プログラムに沿えば「3年間」の研修期間が必要となりますが、総合診療専門研修プログラムの「内科分野研修が免除」される(内科の研修と重複のある部分は履修済と扱われる)ため「2年間程度の研修」で総合診療専門医試験の受験資格を得られる見込みです。
2年間の研修では、▼総合診療専門研修I・IIを各単独で6か月以上かつ合計18か月以上うける▼小児専門研修・救急科研修を各単独で3か月以上うける▼総合診療領域のオンライン研修手帳「J-GOAL」を用いて総合診療の視点から評価を受ける―ことになります。
さらに、次の要件をすべて満たしていれば特例的に「1年間程度の研修」で総合診療専門医試験の受験資格を得ることも可能です(内科研修と総合診療研修との内容重複が大きいと認められるため)。
▼内科専門研修プログラムの施設で、かつ、総合診療専門研修プログラムにおける総合診療II施設として認められた医療機関である
▼内科学会指導医と日本専門医機構認定総合診療(特任)指導医の両方の資格を有する指導医(デュアル指導医)のもとで6か月以上研修する(内科学会指導医のみで行う内科選択研修の上限は6か月)。
▼「内科専門研修」および「総合診療専門研修における総合診療II分野研修」としてダブルカウント可能な研修である
▼総合診療領域のオンライン研修手帳「J-GOAL」を用いて総合診療の視点から評価を受ける
▼総合診療IIに相当する研修の登録については、登録管理料・システム使用料の支払いが必要となる。総合診療専門研修プログラムの内科分野研修に加え、総合診療II分野研修が免除されるため、研修の分野および期間は「総合診療I研修を6か月」「小児科研修を単独で3か月、救急科研修を単独で3か月」受ける
このため、最短で2022年度中に「内科+総合診療」のダブルホルダーが誕生する可能性があります。研修はカリキュラム制で行われ「最長10年間」にわたる単位取得(=受験資格)が認められます(合計単位取得数を持って、例えば「救急科の3か月研修を終えたか否か」などを判断する)。
寺本理事長は「総合診療専門医が内科専門医資格を取得しようとする場合にも、同程度の研修期間で受験資格を得られることになろう」と見通すとともに、他の基本領域においてもダブルボード取得に向けたルールが整備されることに期待を寄せました。
「基本領域」→「サブスペ領域」という専門性を追求するキャリアだけでなく、「A基本領域」→「B基本領域」という具合に専門性を広げていくキャリア(ダブルホルダー、トリプルホルダー)も重要であり、この観点から「ダブルボード取得がしやすいルール」(ただし質の確保が大前提)が整備されていくものと期待されます。
内科・小児科・外科で専攻医「減」の可能性、「当該領域を地方で研修する」枠の拡大検討
また上述のとおり「2022年度から新専門医研修を受講し始める専攻医の採用状況」についての報告も行われ、1次募集に関する採用数は「8658名」、2次募集結果を含めると「9400名程度と見込まれる」旨が寺本理事長から報告されています。
ただし、例年と比べ▼内科▼小児科▼外科▼泌尿器科▼脳神経外科—といった領域では「研修プログラムへの応募・採用」が減少しているようです。要因分析は今後を待つ必要がありますが、基本領域・学会からは「シーリング(採用上限数)のせいではないか」との批判も出ているようです。
新専門医制度についても「専門医の質を追求するあまりに養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場にあることから、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省—が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用しています。
その1つが「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み(シーリング)で、2020年度採用分からは、厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科別の必要医師数」に基づいて、▼「既に必要医師数を確保できている」と考えられる都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―ものです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
「医師が多い」地域・診療科から「医師が少ない」地域・診療科へ医師が動くことを期待するものですが、「医師養成がさらに必要」と考えられる上記領域で「募集・採用が減っている」点を寺本理事長も心配しています。このため、「内科や小児科など、さらに養成が必要な基本領域については『地方での研修』枠を膨らませる(上述した連携プログラムを拡大sうる)ような仕組みを検討している」ことを寺本理事長は明らかにしています。2023年度採用数に向けては「シーリングの枠組み」が少し見直される可能性があります。
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