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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

今現在の救急医療現場などは医師不足、「外国の医師」が我が国で診療できる体制構築を―四病協

2019.8.28.(水)

 今現在、救命救急医療や高度急性期医療の現場では「医師が不足」しており、医師の働き方改革が実行されれば、さらに「医師不足」が進行してしまい、例えば「がんの手術を4か月待ってもらう」ことなどに繋がってしまう。外国の医師免許を持つ医師(日本人、外国人に限らず)が我が国で正式に診療に携われる体制を構築する必要がある―。

 日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)は、8月28日の総合部会でこうした方針を固め、来月(2019年)9月から検討を開始することを決めました。

 総合部会終了後に記者会見に臨んだ日本精神科病院協会の山崎學会長は、「来年(2020年)3月には意見をとりまとめ、厚生労働省や内閣府に提言・要望する」考えも示しています。

8月28日の四病院団体協議会・総合部会終了後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長

8月28日の四病院団体協議会・総合部会終了後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長

 

四病協に「外国の医師に我が国での診療を認める仕組み」を検討する委員会を設置

厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、前検討会)が3月末(2019年3月末)に報告書をとりまとめ、次のような方針を明確にしました(関連記事はこちら)。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)(いわゆるA水準)

▽ただし、「3次救急病院」や「年間に救急車1000台以上を受け入れる2次救急病院」など地域医療確保に欠かせない機能を持つ医療機関で、労働時間短縮等に限界がある場合には、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるB水準)

▽また研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合には、時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるC水準)

▽2024年4月までの5年間、全医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)、「労働時間の短縮」(タスク・シフティングなど)を進める
医師働き方改革検討会1 190328
 
勤務医の労働実態を調査すると、いわゆる過労死ラインである『年間960時間を超える時間外労働』をしている医師が一定程度いる(11.1%が「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」の2倍となる年間1920時間を超え、1.6%が3倍となる年間2880時間を超えている)ことを踏まえ、早急に医師の労働時間短縮を進め、健康を確保する必要性が高いことに鑑みたものです。
医師働き方改革検討会(1)の1 190220
 
しかし、山崎日精協会長は、「医師の時間外労働が長時間になるのは、医師が足りていないからである。足りていない医師に、さらに『時間外労働を少なくせよ』と求めたのでは、医師不足(医療提供量の不足)に拍車がかかる。がんの手術が『4か月先』などと待ってもらい、その間に相当進行してしまうようなケースも出てくる可能性がある」と指摘。

そこで、必要な医療提供量を確保する方策の1つとして、「外国の医師」(日本人、外国人を問わず、外国の医師免許を取得し、診療に携わっている医師、以下同)を我が国に招き、臨床修練(日本の医師免許取得者の指導の下で、外国の医師が技術習得を目的に研修として診療に携わることを認める制度)などではなく、正面から「診療行為の実施を可能とする」べきとの考えを示しました。

四病協では、来月(2019年)9月にもこの点を検討する委員会を立ち上げ(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の各団体から2名の委員が参画する予定)、「外国の医師が、我が国で診療に携わる」仕組みを根本から議論することを決定しました。例えば、言葉の問題、後述する要件などについて様々な角度から分析・検討していくことになります。山崎日精協会長は、「来年(2020年)3月には意見をとりまとめ、厚生労働省や内閣府に提言・要望する」考えも示しています。

もっとも、我が国において「あらゆる診療場面で外国の医師が診療に携われる」という仕組みを構築するには、さまざまな課題があり、一朝一夕には構築できないでしょう。そこで山崎日精協会長は、最初から「言葉の問題などもある。一切ダメ」と切り捨てるのではなく、まず▼我が国と同等、あるいはそれ以上の水準の医師養成体制が構築され、かつ診療体制も十分に整っている国で医師免許を取得した医師が▼救命救急や高度急性期医療など限定された診療場面で―活躍できる仕組みの構築から検討してはどうか、との考えも示しました。前者の国要件についてはインド共和国(イギリスやフランス、アメリカでも活躍していると山崎日精協会長は紹介)を、後者の診療場面についてはステント治療や高度な検査など(言葉が大きな壁になりにくい場面が想定される)を例示しています。

さらに山崎日精協会長は、▼医師国家試験を含めた医療従事者の国家試験を、春・秋の年2回実施する(有資格者が増える可能性がある)▼外国の医学部で教育を受けた学生が、我が国の医師免許を取得する仕組みを簡素化する(現在は、予備試験に合格してから、医師国家試験を受験する)▼医学部教育を根本的に見直す(現在は、6年間の受験対策となってしまっている)―ことなども検討していくべきとコメントしました。

 
 
ところで医師養成については、厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」で、「2018年から33年頃に医師の需要と供給が均衡し、以降、医師の供給数が過剰になる」との推計結果を踏まえて、「将来的には抑制していく」(ただし2020・21年度の医学部入学定員は、トータルで現状を維持する)方向も見据えて検討を進めています(今後、医師の働き方改革などを踏まえ推計しなおしていく、関連記事はこちらこちら)。
医師需給分科会3 180412
 
四病協の検討方針は、医師需給分科会の現時点での検討方向と異なりますが、山崎日精協会長は「数十年後に医師供給過剰を心配するよりも、今日の救命救急センターで当直確保が困難である状況を真剣に考えるべきではないか」と訴えています。

医師需給分科会では今後、「医師偏在対策」「医師働き方改革」なども踏まえ、最新データをもとに2022年度以降の医師養成数を検討していきますが、その際に、こうした四病協の考えで議論がどのような方向に動くのか注目する必要があるでしょう。

 

 

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「将来においても医師少数の都道府県」、臨時定員も活用した地域枠等の設置要請が可能―医師需給分科会(3)
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将来、地域医療支援病院の院長となるには「医師少数地域等での6-12か月の勤務」経験が必要に―医師需給分科会
入試要項に明記してあれば、地域枠における地元の「僻地出身者優遇」などは望ましい―医師需給分科会(2)
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新たな指標用いて「真に医師が少ない」地域を把握し、医師派遣等を推進―医師需給分科会

2020・21年度の医学定員は全体で現状維持、22年度以降は「減員」―医療従事者の需給検討会
2022年度以降、医学部入学定員を「減員」していく方向で検討を―医師需給分科会
2020・21年度の医学部定員は現状を維持するが、将来は抑制する方針を再確認―医師需給分科会
2020年度以降の医学部定員、仮に暫定増が全廃となれば「800人弱」定員減―医師需給分科会

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