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無症状の妊産婦、「疑い患者と別の場所・時間で新型コロナ検査実施」できる体制を整備―厚労省

2020.5.29.(金)

新型コロナウイルス感染症に対し非常に強い不安を覚える妊産婦が少なくない。この不安を少しでも解消するために、各都道府県で「無症状の妊産婦」について、希望があれば新型コロナウイルス感染症の検査を実施する体制を整備してほしい―。

その際には、感染防止のために「感染疑い患者」とは別の場所や時間で検査を実施すること、「陽性の場合には、分娩方法が変更されたり、分娩後に一定期間母子分離が行われる可能性のある」旨の説明を事前に十分に行うことなども併せて検討してほしい―。

厚生労働省は5月27日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応した妊産婦に係る医療提供体制・妊婦に係る新型コロナウイルス感染症の検査体制の整備について」を示し、こうした点に留意するよう医療機関や都道府県等に依頼しました(厚労省のサイトはこちら)。

妊産婦が抱える新型コロナへの強い不安を軽減

安倍晋三内閣総理大臣は5月25日に首都圏を含めて新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言を全面解除しました。ただし、各地で再びクラスターが発生するなど第2波、第3波の到来も危惧されており、依然として感染防止対策の徹底と、医療提供体制の確保が重要です。

妊産婦が新型コロナウイルスに感染した場合には重症化のリスクが高く、また治療薬として薬事承認(特例承認)されているレムデシビル((販売名:ベクルリー点滴静注液100mg、同点滴静注用100mg)は妊婦について使用しないこととなっています(関連記事はこちら)。

こうした点を踏まえて厚労省は、3月19日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制に関する補足資料の送付について(その7)」において、「地域の周産期協議会や、一般医療機関・地域周産期母子医療センター・総合周産期母子医療センターでの連携体制を活用し、『新型コロナウイルス感染症対策を協議する協議会』と連携しながら、妊産婦の病状(重症度、合併症の有無、妊娠週数等)や新型コロナ感染症の感染の有無を考慮し、地域の実情を加味しながら適切な周産期医療体制(受け入れ医療機関の設定や輪番の構築等の具体的な受け入れ体制を含む)を早急に検討する」こと(厚労省のサイトはこちら)、4月14日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応したがん患者・透析患者・障害児者・妊産婦・小児に係る医療提供体制について」において、「新型コロナウイルスに感染した妊産婦の状態(合併症の有無、妊娠週数など)や、新型コロナウイルス感染症の重症度を考慮した、受け入れ医療機関の設定や輪番等の構築などについて、地域の周産期医療協議会などと連携すること」(厚労省のサイトはこちら)などを要請しています。



もっとも、新型コロナウイルス感染症に対し非常に強い不安を抱える妊産婦も少なくありません。そこで今般の事務連絡において、不安解消を支援する一環として「新型コロナウイルス感染症の症状がない妊婦であっても、かかりつけ産婦人科医と相談し、本人が希望する場合には、新型コロナウイルス感染症の検査を実施する」など、検査体制を含めた医療提供体制の整備を改めて依頼しています。



まず医療提供体制に関しては、上記の事務連絡(3月19日付、4月14日付)に沿って、地域の周産期医療協議会等と連携し、十分な体制の構築を急ぐことが重要です。



次いで「検査体制の充実」に向けて、「新型コロナウイルス感染症の症状を有しない妊婦」(いわゆる里帰り出産を行う妊婦を含む)が希望した場合に備えて、「妊婦が新型コロナウイルス感染症の検査を受けるまでの流れ」を各都道府県で検討し、その結果を関係各所(▼帰国者・接触者相談センター▼産科医療機関▼妊婦の相談窓口▼市町村の母子保健担当部署―など)に周知することが必要です。厚労省は、(1)検査場所等(2)事前説明等(3)妊産婦からの問い合わせ方法等―の3点についても併せて検討するよう求めています。

このうち(1)の検査場所等については、「新型コロナウイルス感染症の症状がない妊産婦の検査場所等」を、「新型コロナウイルス感染症を疑う症状を有する者の検査場所等」と別に設けることが必要です。妊産婦の不安を軽減するとともに、感染拡大防止の観点からも重要です。例えば、▼既存の帰国者・接触者外来等に「妊婦専用の時間帯」を設ける▼既存の帰国者・接触者外来等に「妊婦専用のブース」を設置する▼検査エリアへの動線にも配慮する▼妊婦専用の帰国者・接触者外来等を設置する―ことなどが考えられます。



また、(2)では、検査を希望する妊婦本人に対して次のような点に十分に事前の説明を行うこと、あわせて「陽性となった場合に受け入れ医療機関では、妊婦に対して医師が十分に相談できる体制を整え、妊婦の疑問や不安に適切に対応する」ことを要請しています。

【事前説明事項】
▽検査は、妊婦が希望する場合に任意で行われるものであること。ただし、例えば陣痛が発来しているなど、その時点の妊婦の状態によっては、医師の判断で「新型コロナウイルス感染症の検査よりも、別の処置や治療が優先される」可能性があること

▽検査の性質上、偽陽性、偽陰性が一定の確率で起こりうること

▽陽性となった場合、症状の有無にかかわらず、医師の判断により、▼原則入院となる▼分娩場所や分娩方法が変更になる可能性がある▼分娩後の一定期間、母子分離等となる可能性がある―こと



さらに(3)では「検査を希望する妊婦が検査場所を問い合わせる方法」を各都道府県で検討し、十分に情報提供することを求めています。例えば、▼所管内の産科医療機関に対して検査場所を予め共有し、検査を希望する妊婦のかかりつけ産科医療機関・里帰り先の医療機関から、当該妊婦に対し検査場所に関する情報提供を行う▼都道府県が妊婦に対して、「既存の電話相談窓口等の電話番号」を周知し、当該窓口で検査を希望する妊婦に対し、かかりつけ産婦人科医との相談状況を確認した上で、対応可能な検査場所等の情報を提供する―などの方法が考えられます。



このほか、今般の事務連絡では、次のような点にも留意するよう医療機関や都道府県等に要請しています。

▽「新型コロナウイルスに感染した妊産婦等に対し、退院後に、助産師、保健師等による電話や訪問などの寄り添った相談支援を実施すること」「本人が希望する場合の分娩前の検査費用を補助すること」などへの財政支援が2020年度第2次補正予算案に盛り込まれており、その活用を検討してほしい(予算成立後に別途、詳細が示される)(関連記事はこちら

▽新型コロナウイルス感染症の検査が陽性であった場合、適切な感染予防策を講じて当該妊婦の診察を行った医師等については「濃厚接触者には該当しない」ことを産科医療機関に周知してほしい(関連記事はこちら



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