二槽バッグ製剤を上下室「未開通」のまま投与してしまう事故頻発、投与前に必ず「開通」を目視確認せよ―PMDA
2022.3.23.(水)
「二槽バッグ製剤」(バッグ型キット製剤、ダブルバッグ製剤)において、上室と下室とを未開通のまま投与してしまう(つまり下室の薬剤のみ投与となってしまう)医療事故が頻発している。投与前に「開通」を自分の目で確認してから投与する必要がある―。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は3月22日に、「PMDA医療安全情報 No.61(二槽バッグ製剤(バッグ型キット製剤)の隔壁未開通事例について)」を公表。医療現場に注意を呼びかけました(PMDAのサイトはこちら)。
開通確認シールを無意識に外してしまい、「開通した」と思い込む事例も発生
PMDAでは、医療現場からヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告を収集し、「繰り返し同様の事象が報告されている事例」「添付文書改訂等を通知した事例」などについて、医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士等の医療従事者や人間工学分野などの専門家、医薬品・医療機器製造販売業者の業界団体の意見も参考に、「医療従事者に対して安全に使用するために注意すべき点」などをPMDA医療安全情報として公表しています。医療安全確保のために重要な情報の1つです。
今般、「二槽バッグ製剤」(バッグ型キット製剤、ダブルバッグ製剤)において、上室と下室との未開通事故が頻発していることを重視し、PMDAでは留意点を整理したうえで、医療現場に注意を呼びかけました。
二槽バッグ製剤では、上室と下室とに異なる成分の薬剤が充填されており、隔壁を開通し、両剤を混合してから患者に投与することが求められます。隔壁を開通せずに「下室の薬剤」のみ投与をしたのでは、予定した成分・投与量・濃度が確保できず、例えば「高血糖」「低血糖」などを引き起こしてしまう可能性もあります。
ある病院では、医療スタッフが輸液製剤のミキシング時に、赤い『開通確認装置』を無意識に先に外してしまい、別の作業があったためにこれを中断しました。戻った際に、開通確認装置が外れていたために「開通した」と思い込み、隔壁を開通しないまま投与してしまいました。
PMDAは、▼二槽バッグ製剤は使用前に隔壁開通作業が必要であり、開通確認前に開通確認シールや装置を外さないように留意する▼必ず開通方法・開通確認の手順を守る―よう注意喚起しています。
なお、「隔壁未開通状態での投与を防止する機構を内蔵している」二槽バッグ製剤(この製品では開通確認のシールや装置がないこともある)も開発されています。製薬メーカーにも、事故防止に向けた改善(隔壁未開通状態での投与を防止する機構の内蔵など)に期待したいところです。
また別の病院では、輸液製剤の開通時に「ビタミン剤の小室を開通しないまま投与してしまう」事故が発生しました。医療スタッフに「ビタミン剤の小室は、開通していなくても投与開始後に徐々に流れ出てくるのではないか」という思い込みがあったようです。
こうした「小室の未開通」事例が数多く報告されていることを踏まえ、PMDAは▼開通が十分か▼輸液の色が全て均一になっているか―を必ず確認するよう注意喚起しています。
さらに別の病院では、輸液製剤の開通確認のシールがはがれていたため、医療スタッフが「隔壁が開通している」と思いこみ、開通を自分の目で確認せずに輸液投与してしまうという事故が発生しました。
PMDAは、▼遮光袋がついている場合、スタンドにかける前に一度外して開通を確認する▼開通確認のシールや装置が外れていても、開通していないこともあるため、投与前にもう一度自分の目で見て開通を確認する―ことを推奨しています。
あわせてPMDAは、二槽バッグ製剤の使用に当たり、上記の留意点も含めて次のような点を十分に確認するようアドヴァイスしています。また当然ですが「添付文書などで使用方法を再確認する」ことも重要です。
▽開通前に開通確認のシールや装置を外してしまっていないかを確認する!(シールや装置は開通を確認してから外す)
▽隔壁・小室を含め「全て完全に開通している」かを、自身の目で見て確認する!
▽「薬液を十分混合したか」「その際、隔壁は開通しているか」を十分に確認する!
▽患者氏名を記載したラベル貼付などで小室や隔壁が隠れていないか?開通状況が常に確認できるようにしておく!
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