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依然として「MRI検査室に金属製品を持ち込み、飛んできた製品でケガをする」事故が後を絶たない―PMDA

2022.3.31.(木)

MRI検査室に「金属」製品を持ち込み、吸着事故を引き起こしてしまう―。

患者が天板を握っていたため、天板とガントリとの間に手指が挟まれてしまう―。

患者の皮膚同士が接触、皮膚とガントリ内部とが接触したことにより、高周波ループ火傷が生じてしまう―。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は3月30日に、「PMDA医療安全情報 臨時号No.3(再周知特集その3「MRI検査時の注意について」)」を公表。こうした事故が依然として後を絶たないことを訴え、医療現場に注意を呼びかけました(PMDAのサイトはこちら)。同日には、このほかに▼No.62(PCPS/ECMOカニューレの抜去事例について)▼No.63(人工呼吸器の使用前点検に関する注意について)―も公表されており、これらは別稿で報じます。

MRI検査室に「金属」を持ち込み事故につながる、基本的なミスが依然散発

PMDAでは、医療現場からヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告を収集し、「繰り返し同様の事象が報告されている事例」「添付文書改訂等を通知した事例」などについて、医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士等の医療従事者や人間工学分野などの専門家、医薬品・医療機器製造販売業者の業界団体の意見も参考に、「医療従事者に対して安全に使用するために注意すべき点」などをPMDA医療安全情報として公表しています。医療安全確保のために重要な情報の1つです。

今般、「以前に注意喚起を行ったが、依然として類似の事故事例が散見される」として「MRI検査時の注意」に関する再周知を行っています。

まず「金属吸着」に関する事項です。

ある病院でMRI検査のため、MRI用ストレッチャーに患者をのせてMRI検査室に入室したところ、「ストレッチャーの脇にあった酸素ボンベ」が勢いよく引きつけられガントリに吸着してしまいました。また、別の病院では、看護師が「止血テープ用のカッターに金属が含まれている」ことを確認しないままMRI検査室に持ち込んだところ、MRI装置への吸着によりテープカッターが患者の頭部に直撃してしまいました。

MRI検査室には「常に強力な磁場が発生」しており、磁性体金属(鉄、コバルト、ニッケルなど)の持ち込みは「厳禁」です。無料動画などで「金属製品がMRIの磁場により、ものすごい勢いで飛ぶ」ことなども確認できますが、依然として「飛んできた酸素ボンベやストレッチャー、点滴台などが患者や医療従事者などに衝突し負傷する事故」が度々報告されています(当然、MRI機器の故障にもつながる、極めて高額な補修費・入れ替え費が発生しかねない)。

機構では「MRI検査室に入室する前に磁性体金属がないか必ず確認する」ことを改めて強調、酸素ボンベや歩行補助具などの「分かりやすい金属」製品のほか、「ドレープの下に金属製トレイなどが隠れている(見えにくい)」ケースもあります。

依然としてMRI撮影室に金属製品を持ち込み、飛んできた製品でケガをするといった事故が散発している(PMDA医療安全情報 臨時(3)1 220330)



極めて基本的な事項ですが、「改めての徹底」が強く求められます。日本画像医療システム工業会では「MRI検査室入室前のチェックリスト」を作成しており、これらの活用も非常に重要です。

天板とガントリとの間に手・指を挟まれてしまう事故も散発

また、「手や指を挟みこんでしまう」事故も散発しています。

ある病院では、MRI撮影のために天板を移動する際、天板とガントリ入口との隙間に患者の指が挟み込まれ負傷してしまうという事故が生じました。患者が「天板を握った」状態で、ガントリ内へ移動したことが原因です。

機構では「患者に対し、検査中は『天板を握らない』ように丁寧に伝える」ことの徹底を呼び掛けています。なお、「挟み込みの恐れのある個所は機器によって異なるので、自施設の機器を確認する」「CTでも同様の構造であり注意が必要である」と呼び掛けています。

また「姿勢の維持が難しい」患者では固定バンドを活用するなどの工夫も必要です。

MRI撮影に当たり、患者に「天板を握らない」ように伝えることが必要(PMDA医療安全情報 臨時(3)2 220330)

高周波ループ火傷防止のため、患者に「腕を組まない」「手を握らない」など説明を

さらに「やけど」が生じる事故も散発しています。

ある病院では、MRI検査後に「患者の大腿部内側にI-II度程度のやけど(表皮、真皮までのやけど)が生じている」ことを確認しました。検査中に「両大腿部の内側が接触し、高周波ループが発生した」ことが原因と見られています。MRI検査中に「皮膚同士の接触」や「皮膚とガントリ内壁との接触」があると、そこに電流が発生し「やけどが生じる」ことがあるのです(高周波ループ火傷)。

機構では、高周波ループ火傷を防止するために、▼ポジショニング時に、患者の腕・脚等の皮膚どうしが接触していないことを確認する▼患者に対し「検査中は体位を変えたりしないなど、動かない」ように十分伝える―ことを要望しました。

具体的には、▼腕を組んではいけない▼手を握ってはいけない▼ガントリの内側に触ってはいけない▼足や腕などの間に「隙間を作る」―などの点を、検査ごとに患者に分かりやすく説明することが必要です。これらは「患者サイドに気を付けてもらう」場面と言えそうです。

高周波ループ火傷を防止するための留意点(その1)(PMDA医療安全情報 臨時(3)3 220330)



さらに、「患者の皮膚」と「RFコイルや心電図モニターなどのケーブル・コード類」とが接触することによる「高周波ループ」→「火傷」の発生を防止するために、▼皮膚にケーブルを接触させない▼ケーブルがある場合には、非誘導性パッドや乾燥したタオルの『外側』を通るように配置する―などの点にも留意するよう求めています。こちらは「検査者サイドが気を付けるべき」場面と言えるでしょう。

高周波ループ火傷を防止するための留意点(その2)(PMDA医療安全情報 臨時(3)4 220330)



いずれも「基本的な留意事項」ですが、これらを遵守せずいたために「事故が生じてしまっている」現実があります。「当たり前のこと」「分かりきったこと」と軽く考えず、「自院では全員がきちんとルールを遵守できているかな。全員がルールを理解できているのかな」という視点で、自院の状況を再点検することが必要です。

余談になりますが、筆者自身もMRI検査を何度か受けていますが、上記のような「注意」「説明」を受けたことは一度もありません。「患者への説明、注意」が適切になされているかも、院内で再点検することが必要でしょう。



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