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介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)

2019.6.20.(木)

 医学的には在宅・外来医療で十分だが、「介護」に不安があり退院が進まない患者も少なくない。しかし、介護施設への入所待ちをしている患者はそれほど多くなく、その背景には「病院のほうが医療サービスが充実しており、安心である」という心理もあるようだ。介護医療院の整備や、急性期病棟における「出口問題」の再認識促進などを進める必要があるのではないか―。

 6月19日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういった議論も行われました。

 2020年度は診療報酬単独の改定(介護報酬との同時改定ではない)ですが、2021年度の介護報酬改定などに備え、医療側での「医療・介護連携」に向けた準備を進めることも重要です。

6月19日に開催された、「2019年度 第3回 入院医療等の調査・評価分科会」

6月19日に開催された、「2019年度 第3回 入院医療等の調査・評価分科会」

 

円滑な退院のため、入院前から「要介護認定の有無など」の確認が重要

 入院医療全般について「在院日数の短縮」「在宅復帰の推進」が重視されます。早期退院は「医療費の適正化」という経済的効果に加え、▼院内感染やADL低下のリスク軽減▼早期の日常生活(職場)復帰による患者QOLの向上―などの大きなメリットがあり、急性期から慢性期に至る、すべての入院医療において推進することが望まれます。

 この一環として、2018年度診療報酬改定では「入院前からの退院支援」の重要性に鑑み、従前の【退院支援加算】を【入退院支援加算】に名称変更するとともに、【入退院支援加算】を算定するであろう予定入院患者に対し、外来において▼身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握▼褥瘡に関する危険因子の評価▼栄養状態の評価▼持参薬の確認▼入院中に行われる治療・検査の説明▼入院生活の説明▼退院困難な要因の有無の評価—を含む支援を行い、入院中の看護や栄養管理などに係る療養支援計画を立て、患者・関係者と共有することを【入院時支援加算】として新たに評価しました(関連記事はこちら)。

6月7日開催の前回入院医療分科会では、従前の7対1一般病棟に相当する【急性期一般1】の70.3%が【入退院支援加算1】を、61.9%が【入院時支援加算】を算定していること、また、「医学的には外来・在宅でもよいが、他の要因のために退院予定がない」患者は、特定機能病院や急性期一般病棟でも一定程度いることが報告されました(関連記事はこちら)。
入院医療分科会(1)6 190607
入院医療分科会(2)5 190607
 
さらに、6月19日の入院医療分科会では、新たに次のようなデータが報告されています。

(1)「医学的には外来・在宅でもよいが、他の要因のために退院予定がない」患者が「退院できない理由」としては、▼家族の希望に適わない(急性期一般1では38.0%)▼転院先の医療機関の確保ができていない(同25.8%)▼入所先の施設の事由により退院先の確保ができていない(同19.8%)―などが多い(複数回答)。
入院医療分科会(2)1 190619
 
(2)退院できない最大の理由である「家族の希望に適わない」の内訳としては、▼自宅に帰った場合、在宅介護等を利用しても家族の負担が大きい(同34.9%)▼家族が患者と同居できない(同31.3%)▼自宅に帰った場合の医学的管理に不安を感じている(同29.5%)▼家族が患者と同居可能だが日中不在がち(同24.9%)―などが多い(複数回答)
入院医療分科会(2)2 190619
 
(3)家族の求める「退院後の支援」としては、▼食事・排泄・移動等の介護(同29.7%)▼訪問看護・リハビリテーション(同19.3%)▼医療処置(同14.9%)―などが多い(最も該当するもの)
入院医療分科会(2)3 190619

 
この調査結果について田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は、「在宅介護に不安を覚えて退院できない患者が多いが、介護施設への入所待ちをしている患者はそれほど多くない。これをどう解釈すればよいのか」との疑問を呈しました。確かに、「在宅での介護に不安がある」のであれば、常時介護サービスが提供される「介護保険施設」などの選択肢を模索するケースが多くなると想定されます。

この点について池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は、「在宅療養は可能と医師が判断しても、家族が介護負担を心配する。『施設入所を検討してはどうか』と水を向けても、『病院のほうが医療面で安心であり、満足している』と退院に消極的な患者・家族も少なくない印象だ。現場感覚と合致するデータである」とコメントしています。

 (3)のデータからは「在宅復帰を進めるためには、在宅介護サービスの充実」が必要と思われますが、(1)(2)のデータ、池端委員のコメントからは、それだけでは「在宅復帰」が十分に進まないことが伺えます。ただし、池端委員のコメントにある「病院のほうが医療面で安心」という患者・家族の意向に鑑みれば「介護医療院」が解決の糸口の1つとして注目できそうです。

 介護医療院は、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設です。介護療養や25対1医療療養、つまり「医療機関」(病院、診療所)からの転換が期待され、医師が常駐する「手厚い医療サービス」が提供されます。ただし、今年(2019年)3月末時点で、全国で150施設・1万28床にとどまり、岩手県・宮城県・新潟県・滋賀県・和歌山県・宮崎県では未整備となっており、転換に向けたテコ入れが必要な状況です(関連記事はこちら)。

 また介護医療院は、介護保険施設であるため、入所の大前提として「要介護認定」が必要となります。このため武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は「入院前から、要介護認定の申請を行っているのかなどを確認することが極めて重要なことが再認識できる」旨を強調しています。市区町村に要介護認定の申請を行ってから、判定結果が出るまでには1か月程度かかります。円滑な入退院を進めるために2018年度改定で新設された【入院時支援加算】の取得をさらに進めることが重要です。

こうした議論を踏まえて石川広巳委員(日本医師会常任理事)は、「急性期病棟でも、出口問題、つまり慢性期入院医療・介護・地域支援の重要性を再認識してもらうことの重要性を認識してもらう必要があると、中央社会保険医療協議会に改めて伝えることが必要ではないか」とコメントしています。2020年度改定は、2018年度と異なり「診療報酬改定」が単独で行われます(2018年度は6年に一度の診療報酬・介護報酬の同時改定)が、2021年度の介護報酬改定に向けた「医療側の下準備」を進めることも重要となるでしょう。

急性期一般病棟、25対1看護補助(5割以上)の取得は6.8-48.5%にとどまる

 また6月19日の入院医療分科会では、急性期一般病棟(急性期一般3は3施設のみであるので、除外して考えることにします)において、A207-3【急性期看護補助体制加算】のうち、「25対1急性期看護補助体制加算(看護補助者5割以上)」の取得は6.8-48.5%にとどまることなども報告されました。
入院医療分科会(2)4 190619
 
 看護職についても「働き方改革」が求められ、すでに新たな「罰則付きの時間外労働上限」が適用されています。このため、「看護師資格保有者でなければ実施できない業務に集中し、看護師資格を保有せずとも実施可能な業務は他職種(例えば看護補助者)に移管していく」タスク・シフティングが求められます。より多くの急性期病棟で看護補助者を積極的に採用し、タスク・シフティングを進める必要があり、診療報酬でもこれをどう後押ししていけるのか(加算の増点や、施設基準の見直しなど)、今後、検討が進められます(関連記事はこちら)。

 

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DPCデータ用いた重症患者割合の測定、看護業務効率化につながる可能性—中医協・基本小委
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入院前からの退院支援、診療報酬と介護報酬の両面からアプローチを—入院医療分科会(3)
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地域包括ケア病棟、機能に応じた「点数の細分化」案が浮上か—入院医療分科会(2)
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7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)

 
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