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7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)

2019.6.7.(金)

 従前「7対1一般病棟入院基本料」を届け出ていた病棟のうち、新たな【急性期一般病棟入院料2】への移行は2.6%、【急性期一般病棟入院料3】への移行は0.5%にとどまり、96.5%が【急性期一般病棟入院料1】を届け出ている。また、急性期一般病棟入院料1における「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の届け出状況をみると、79.6%が評価表に基づく「看護必要度I」で行っており、EF統合ファイルに基づく「看護必要度II」での届け出は19.3%となった―。

こうした調査結果が、6月7日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)に報告されました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

6月7日に開催された、「2019年度 第2回 入院医療等の調査・評価分科会」

6月7日に開催された、「2019年度 第2回 入院医療等の調査・評価分科会」

 

7対1病棟の95.6%が急性期一般1を選択、「移行の必要性なし」との理由が多い

診療報酬改定の内容は、最終的には「中央社会保険医療協議会・総会」で決定されます。ただし、検討内容が非常に広範なため、分野を絞った調査・分析、技術的課題の整理などを下部組織で行い、それを踏まえて中医協・総会で具体的な改定議論を行うことになっています。

入院医療分科会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて「入院医療」と「DPC制度改革」に関する技術的課題の整理を行います(従前の入院医療分科会とDPC評価分科会を統合した)。前者の「入院医療」については、2018年度診療報酬改定の影響を調査し、課題等を整理することになっています。

6月7日の入院医療分科会では、2018年度調査(入院医療に関する調査は2018年度・19年度の2回実施される)結果の速報が報告されました。2018年度の診療報酬改定では、入院基本料・特定入院料の報酬について、【基本部分】(看護配置など)と【実績評価部分】(重症患者の受け入れ状況など)とを組み合わせるものへと、大きな体系変更が行われています。

今回は、7対1・10対1を再編した【急性期一般病棟入院基本料】に焦点を合わせ、調査結果を眺めてみます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらととこちら)。

まず、7対1・10対1一般病棟入院基本料は、次の7つの【急性期一般病棟入院料】に再編されています。

【急性期一般入院料1】(7対1相当):1591点(現行7対1と同水準)
▼看護配置:7対1以上▼重症患者割合:看護必要度Iで30%以上、看護必要度IIで25%以上▼平均在院日数:18日以内▼在宅復帰・病床機能連携率(在宅復帰率を見直し):80%以上―など

【急性期一般入院料2】(7対1と10対1の中間的評価その1):1561点(現行7対1より30点低い)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度IIで24%以上(許可病床数200床未満の病院では、看護必要度Iで27%以上、看護必要度IIで22%以上)▼平均在院日数:21日以内―など

【急性期一般入院料3】(7対1と10対1の中間的評価その2):1491点(現行7対1より100点低い)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度IIで23%以上(許可病床数200床未満の病院では、看護必要度Iで26%以上、看護必要度IIで21%以上)▼平均在院日数:21日以内―など

【急性期一般入院料4】(10対1+看護必要度加算1のイメージ):1387点(現行10対1+看護必要度加算1と同水準)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度Iで27%以上、看護必要度IIで22%以上▼平均在院日数:21日以内―など

【急性期一般入院料5】(10対1+看護必要度加算2のイメージ):1377点(現行10対1+看護必要度加算2と同水準)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度Iで21%以上、看護必要度IIで17%以上▼平均在院日数:21日以内―など

【急性期一般入院料6】(10対1+看護必要度加算3のイメージ):1357点(現行10対1+看護必要度加算3と同水準)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度Iで15%以上、看護必要度IIで12%以上▼平均在院日数:21日以内―など

【急性期一般入院料7】(10対1相当):1332点(10対1と同水準)
▼看護配置:10対1以上▼重症患者割合:看護必要度の測定を行っていること▼平均在院日数:21日以内―など
2018年度改定(急性期一般入院基本料)1 180305

2018年度改定(急性期一般入院基本料)2 180305
 
 旧7対1と旧10対1との間には「100床当たり、年間で7500万円近い収益差」があり、例えば「将来、比較的軽症患者が増加するので、看護職の採用を抑え気味にし、10対1へ移行したい」と考えても、この大きな収益差ゆえに移行を躊躇する病院が少なくないと厚労省は判断。そこで、階段(急性期一般2・急性期一般3)を設けることで、7対1から10対1へ移行しやすくし、より「地域の医療ニーズ」「将来の医療ニーズ」を見据えた病院経営戦略(入院基本料の選択)を可能とすることを狙ったものです。

 
しかし、調査結果を眺めると、病棟数ベースで95.6%の7対1病棟は【急性期一般1】を届け出ており、【急性期一般2】への移行は2.6%、【急性期一般3】への移行は0.5%にとどまりました。7対1のベッド数を約35万床と仮定すると、【急性期一般2・3】への移行は1万床程度と考えられます。
入院医療分科会(1)1 190607
 
【急性期一般1】取得、つまり7対1維持の理由としては、▼7対1看護職員配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)ため▼施設基準を満たしており、特に転換の必要性を認めないため▼他の病棟等と比較して経営が安定するため―などの声が多くなっています。
入院医療分科会(1)2 190607
 
一方、【急性期一般2】【急性期一般3】へ移行した理由を見ると、「看護必要度の基準を満たすことが困難」という声が圧倒的です。「将来のため」などポジティブに【急性期一般2・3】へ移行した病院はごくごく一部であり、2018年度改定の目的・趣旨に沿った移行とは言いにくい状況です。松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)は「7対1からのシフトは進んでおらず期待外れ」とコメントしています。
入院医療分科会(1)3 190607
 
 
もっとも、この点について牧野憲一委員(日本病院会常任理事)は、「病院の看護職員採用計画は前年4月には決まり、診療報酬改定直後に看護配置を大きく変えることは難しい」とコメントしています。もう少し長期的に(少なくとも2019年度の届け出状況を)見ていく必要があるかもしれません。

看護必要度IIの採用は2割弱、ただし採用した病院は「負担軽減」を実感

前述のように、入院基本料・特定入院料について「基本部分」と「実績評価部分」とを組み合わせた報酬体系が構築されています。【急性期一般病棟入院基本料】の実績は「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の基準」(以下、看護必要度)を満たす患者割合(以下、重症患者割合)で評価されますが、2018年度改定では看護必要度についても、例えば次のような大きな見直しが行われました。

▽看護必要度の定義を一部見直し、▼「A項目1点以上かつB項目3点以上」(現在は重症患者に非該当)のうち、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」のいずれかに該当すれば、「重症患者に該当」と扱う▼C項目の開腹手術(現在は5日間)について、所定日数4日に短縮する―こととする

▽従前からの看護必要度評価票に基づく重症患者割合の計算方法を「看護必要度I」、新たにDPCのEF統合ファイルに基づく計算方法を「看護必要度II」とし、それぞれで重症患者割合の基準値を設定する(例えば、7対1相当の【急性期一般入院料I】では看護必要度Iで30%以上、看護必要度IIで25%以上)

▽看護必要度I・看護必要度IIのいずれを用いた場合でも、重症患者割合は「3か月の平均」とし、従前の「1割以内・3か月以内変動の救済ルール」は廃止する

 
 看護必要度I・IIの選択状況を見ると、【急性期一般1】では、79.6%が従前どおりの看護必要度Iを、19.3%が看護必要度IIを選択しています。
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看護必要度I選択(維持)の理由としては、▼評価票の記入のほうが容易であり、看護必要度IIへの変更の必要性を感じない▼看護必要度Iのデータを看護職員配置などの看護管理業務に用いるため▼より高い入院料を届け出ることができる―という声が出ています。

一方、看護必要度IIを選択した理由としては、「看護必要度Ⅰよりも評価票記入者の負担が軽減される」との声が圧倒的です。

この点について、厚労省保険局医療課の担当者は「急性期一般1は多忙であり、仕組みの変化は難しい。また院内のシステム全体に影響が出るところもあるのではないか」と見ています。「移行そのものが大変であるが、実際に看護必要度IIへ移行してみれば、負担が小さいことを実感できる」と言えるかもしれません。

看護必要度IとIIで重症患者割合に想定以上の乖離があるのか、詳しく分析へ

 ただし、看護必要度Iを選択(維持)した病院と、看護必要度IIを選択した病院とでは、重症患者割合に大きな差が出ています。【急性期一般1】を見ると、看護必要度Iの病院では重症患者割合が35.2%(基準値は30%以上)ですが、看護必要度IIの病院では26.7%(基準値は25%以上)となりました。いずれも基準値を満たしてはいますが8.5ポイントの乖離があります。
入院医療分科会(1)5 190607
 
 評価票を用いた看護必要度Iと、EF統合ファイルを用いた看護必要度IIとでは、評価対象が若干異なるため、もともと「看護必要度Iを用いた重症患者割合」>「看護必要度IIを用いた重症患者割合」となります。このため、基準値も【急性期一般1】では「看護必要度1では30%以上」、「看護必要度IIでは25%以上」と別々に設定されています。

 しかし、基準値を大きく上回る乖離(30%と25%との差、5ポイントの差が出ることは当初より想定済みと言える)があることに入院医療分科会でも、牧野委員や神野正博弘委員(全日本病院協会副会長)、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)らは「詳しく分析する必要がある」との考えを示しています。

 
 この点、現場でも「看護必要度Iと看護必要度IIとのズレ」を重視しており、一部の病院では「看護必要度Iと看護必要度IIの双方のデータ」を算出しています。看護必要度IIで重症患者割合を正しく算出するには、EF統合ファイルのデータ、つまり出来高情報を正確に(過剰も不足もなく)記載することが必要な点に留意が必要です。

今後、この乖離(看護必要度IとIIとの乖離)について厚労省は詳しく分析していきますが、看護必要度IIを選択した病院は、【急性期一般1】では71病院で、看護必要度Iを選択(維持)した292病院の3分の1に過ぎません。こうしたサンプル数の違いもあることから、厚労省保険局医療課の担当者は「看護必要度Iの35.2%と、看護必要度IIの26.7%を単純に比較して、乖離が大きすぎると判断するのは、やや乱暴かもしれない」との見解も示しています。今後、より詳しく、例えば▼看護必要度IとIIの双方のデータを出している病院について乖離状況を見てみる▼看護必要度I・IIのそれぞれを選択した病院について分布や外れ値(著しく重症患者割合が高い病院や、著しく低い病院など)の有無などを見る―中で、「乖離が著しいと言えるのか」「著しいと判断された場合、その原因はどこにあるのか」などを探っていくことになります。

 
 なお、重症患者割合を高める方策の1つとして、状態の安定した患者に対し「適切な療養環境への転院・転棟、さらに在宅復帰」を促すことが考えられます(いわゆるPFM、patient flow managementの1機能)。例えば、急性期を脱し状態を安定した患者を【急性期一般1】から【地域一般病棟】や【地域包括ケア病棟】【療養病棟】などに誘導するものです。

 この場合、新規の重症患者を入院させなければ「空床」が生じてしまい、病棟の稼働率が低くなります(端的に経営が悪化する)。この点について神野委員は「稼働率を下げてでも【急性期一般1】の重症患者割合(30%以上、25%以上)を維持するという選択をした病院があるのではないか」とコメント。この点を詳しく見ていくことで、前述した【急性期一般2・3】への移行に向けたヒントが見つかるかもしれません。

急性期一般1の7割が入退院支援加算を、6割が入院時支援加算を取得

 ところで、2018年度改定では、▼【退院支援加算】から【入退院支援加算】への名称変更▼【入院時支援加算】の新設―など、「入院前、つまり外来から退院を意識した支援」への評価が行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 在宅復帰を速めることで、医療の質の向上(院内感染リスクやADL低下リスクの低減)、患者のQOL向上(早期の社会・家庭復帰)が見込めるとともに、急性期病棟では前述した「重症患者割合」を高めることにもつながります(軽症患者の退院を促すため)。

 今般の調査結果からは、【急性期一般1】の70.3%が【入退院支援加算1】を、61.9%が【入院時支援加算】を算定していることが分かりました。在宅復帰の促進は、多くの病棟が目指すべきですが、特に「急性期病棟で積極的に取り組んでいる」ことが分かり、現場では▼病棟での入院時の受入における入院生活等の説明に係る負担が減った▼退院先の見通しが立てやすくなった▼治療方針が立てやすくなった▼治療や入院生活に対する患者の理解度が上がった―など、さまざまな効果が現れています。
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 ただし、「入退院支援・地域連携業務に十分な経験を有する専従の看護師の配置が困難」などの理由で【入院時支援加算】取得を諦めている病院もあり、今後、「施設基準・算定要件の検証」はもちろん、取得に向けた支援などを検討していくことになるでしょう。
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この点について牧野委員は、「今後は、入退院支援(もちろん入院時支援も)の対象とならない、緊急入院患者への支援について考えていく必要がある」と提案しています。

 

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主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
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2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会

入院の共通要素を看護必要度、変動要素をEFファイルで評価してはどうか—入院医療分科会(1)
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重症患者割合、一定の条件を置いてEFファイルでの判定が可能では―入院医療分科会(1)
入院時食事療養費の細分化や委託費高騰などで、給食部門の収支は極めて厳しい—入院医療分科会(2)
短期滞在手術等基本料3、2018年度改定で4つのオペ・検査を追加へ—入院医療分科会(1)
ICU、施設数・ベッド数の減少とともに病床利用率も低下傾向—入院医療分科会(2)
救急医療管理加算、総合入院体制加算などの見直し論議スタート—入院医療分科会(1)
DPCデータ用いた重症患者割合の測定、看護業務効率化につながる可能性—中医協・基本小委
地域包括ケア病棟、自宅等からの入棟患者の評価を充実へ—入院医療分科会(2)
看護必要度、急性期の評価指標としての妥当性を検証せよ—入院医療分科会(1)
療養病棟、リハビリ提供頻度などに着目した評価を検討―入院医療分科会(3)
看護必要度該当患者割合、診療報酬の算定状況から導けないか検証―入院医療分科会(2)
DPCデータの提出義務、回復期リハ病棟や療養病棟へも拡大か―入院医療分科会(1)
入院前からの退院支援、診療報酬と介護報酬の両面からアプローチを—入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟、初期加算を活用し「自宅からの入院患者」の手厚い評価へ—入院医療分科会(2)
看護必要度該当患者割合、7対1と10対1で異なっている活用方法をどう考える—入院医療分科会(1)
療養病棟、医療区分2・3患者割合を8割・6割・4割ときめ細かな設定求める意見も—入院医療分科会
回復期リハ病棟、「退院後のリハビリ提供」の評価を検討—入院医療分科会(2)
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「診療密度が低く、平均在院日数が長い」病院、DPC参加は適切か—DPC評価分科会(2)
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I群・II群の機能評価係数、重み付け見直しは行わず、等分評価を維持―DPC評価分科会(2)
DPCの救急医療係数、評価対象が救急医療管理加算などの算定患者でよいのか―DPC分科会
新たな激変緩和措置の大枠固まる、改定年度の1年間のみ報酬の大変動に対応—DPC評価分科会
現行の激変緩和措置は廃止するが、対象期限つきの新たな緩和措置を設定—DPC評価分科会
我が国の平均在院日数短縮は限界を迎えているのか—中医協・基本小委
2017年度機能評価係数II、I群0.0636、II群0.0730、III群0.0675が上位25%ライン—DPC評価分科会(2)
DPCのII群要件を満たす場合でもIII群を選択できる仕組みなど、さらに検討—DPC評価分科会(1)
DPCのI群・II群、複雑性係数やカバー率係数への重みづけを検討へ—DPC評価分科会
DPC、病院が自主的に医療機関群を選択できる仕組みを導入できないか―DPC評価分科会(1)
DPCの機能評価係数II、2018年度の次期改定で再整理―DPC評価分科会

地域で求められる医療を提供する医療機関を応援―厚労省医療課の林補佐がGHCの2016年度改定セミナーで講演

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