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新専門医目指す「専攻医」の2023年度採用は9325名、東京都での採用数が83名増加しているが・・・―日本専門医機構

2023.4.26.(水)

今年度(2023年度)から「新専門医資格を目指して新たに専門研修を開始する専攻医」として病院に採用された医師は9325名となった—。

日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)は、4月24日の定例記者会見でこういった状況を明らかにしました(機構のサイトはこちら)。

東京都での採用数が、前年度から83名増加しており「医師偏在が進んでいる」ようにも見えますが、この中には「医師が少ない地域での勤務を行う医師」も含まれており、新規採用数だけから医師偏在が進んでいるか否かを判断することはできない点に留意が必要です。

4月24日に記者会見に臨んだ、日本専門医機構の渡辺毅理事長

東京採用でも、研修期間の1年・1年半を「医師が少ない地域」で勤務する専攻医もいる

2018年度から「新専門医制度」が全面スタートしました。従前の専門医制度に対する「各学会が独自の基準で専門医を認定しており、国民に分かりにくく、質が担保されていない」などの批判を踏まえ、「日本専門医機構と各学会が共同して研修プログラムを作成し、認定を行う仕組み」「医師の地域偏在を助長しない(東京など大都市部での専門研修を希望する医師が多いため)よう、エビデンスに基づいた地域・診療科ごとのシーリング(専攻医採用数の上限)を設ける仕組み」へと改められています。

今般、今年度(2023年度)から専門研修を開始する「専攻医」の採用状況が渡辺理事長から発表されました。

●2023年度採用数:9325名(2022年度採用数(9448名)に比べて123名・1.3%減)
▽内科:2855名(同60名・2.1%減)
▽小児科:526名(同25名・4.5%減)
▽皮膚科:348名(同22名・6.7%増)
▽精神科:562名(同9名・1.6%減)
▽外科:835名(同11名・13.0%減)
▽整形外科:651名(同7名・1.1%増)
▽産婦人科:481名(同36名・7.0%減)
▽眼科:310名(同33名・9.6%減)
▽耳鼻咽喉科:203名(同53名・20.7%減)
▽泌尿器科:338名(同28名・9.0%増)
▽脳神経外科:217名(同20名・8.4%減)
▽放射線科:341(同42名・14.0%増)
▽麻酔科:466名(同28名・5.7%減)
▽病理:93名(同6名・6.1%減)
▽臨床検査:36名(同14名・63.6%増)
▽救急科:408名(同38名・10.3%増)
▽形成外科:234名(同19名・7.5%減)
▽リハビリテーション科:136名(同9名・6.2%減)
▽総合診療:285名(同35名・14.0%増)

また、都道府県別に見ると次のような状況です。
▽北海道:296名(同46名・13.4%減)
▽青森県:67名(同4名・5.6%減)
▽岩手県:80名(同6名・8.1%増)
▽宮城県:170名(同11名・6.1%減)
▽秋田県:52名(同5名・10.6%増)
▽山形県:54名(同増減なし)
▽福島県:79名(同7名・8.1%減)
▽茨城県:154名(同16名・11.6%増)
▽栃木県:149名(同2名・1.4%増)
▽群馬県:102名(同1名・1.0%減)
▽埼玉県:366名(同15名・3.9%減)
▽千葉県:397名(同2名・0.5%増)
▽東京都:1832名(同83名・4.7%増)
▽神奈川県:665名(同26名・2.5%増)
▽新潟県:90名(同19名・17.4%減)
▽富山県:50名(同増減なし)
▽石川県:97名(同34名・26.0%減)
▽福井県:53名(同9名・20.5%増)
▽山梨県:58名(同増減なし)
▽長野県:111名(同10名・8.3%減)
▽岐阜県:92名(同13名・12.4%減)
▽静岡県:154名(同17名・9.9%減)
▽愛知県:612名(同41名・7.2%増)
▽三重県:89名(同2名・2.2%減)
▽滋賀県:96名(同17名・15.0%減)
▽京都府:272名(同23名・7.7%減)
▽大阪府:676名(同8名・1.2%減)
▽兵庫県:490名(同12名・2.5%増)
▽奈良県:116名(同6名・4.9%減)
▽和歌山県:79名(同10名・11.2%減)
▽鳥取県:43名(同5名・10.4%減)
▽島根県:40名(同12名・42.9%増)
▽岡山県:221名(同23名・9.4%減)
▽広島県:161名(同6名・3.9%増)
▽山口県:58名(同3名・5.5%増)
▽徳島県:38名(同3名・7.3%減)
▽香川県:40名(同8名・16.7%減)
▽愛媛県:57名(同15名・20.8%減)
▽高知県:55名(同3名・5.2%減)
▽福岡県:434名(同36名・7.6%減)
▽佐賀県:50名(同11名・18.0%減)
▽長崎県:90名(同12名・11.8%減)
▽熊本県:111名(同22名・24.7%増)
▽大分県:74名(同6名・7.5%減)
▽宮崎県:64名(同10名・18.5%増)
▽鹿児島県:92名(同10名・9.8%減)
▽沖縄県:99名(同3名・2.9%減)



渡辺理事長は「大きな変動はない」とコメントしていますが、東京都や神奈川県、愛知県などの大都市で専攻医が増えており、「偏在が進んでいる」と見ることもできそうです。

もっとも、新規採用の数字だけを見て「医師偏在」を判断してはいけない面もあります。

医師偏在を助長させない仕組みとしては、シーリングのほか、「1年6か月以上、医師が不足する地域で研修することを求める連携プログラム」やa href=”https://gemmed.ghc-j.com/?p=48532″ target=”_blank” rel=”noopener noreferrer”>「医師不足が極めて顕著な地域」(主に東北)で1年以上研修することを求める特別連携プログラム」が設けられています。つまり「当初は東京の病院で採用されても、2年目、3年目には地方の病院に勤務する」医師が相当数いるため、新規採用の数字だけでは「医師偏在がどう動いたのか」を見ることはできないのです。

今後、定期的に、新規採用数だけでなく「●年●月時点で、専攻医がどの領域・どの地域の何名いるのか」を把握することが重要でしょう。



なお、新専門医制度は「優れた医師の養成」が本来目的であり、「医師偏在の是正」を目指す仕組みではない、つまり「医師偏在の解消・是正に重点を置けば、本来目的である『優れた医師の養成』に支障がでてしまう」点に留意が必要です(関連記事はこちら)。



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