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将来の医療水準向上を目指す「新専門医制度の臨床研究医コース」、研修期間短縮・論文執筆義務緩和で人材確保―日本専門医機構

2023.5.25.(木)

2021年度からスタートした「新専門医制度の臨床研究医コース」であるが、定員割れ・募集人数の減少が続いており、来年度(2024年度)からの専攻医については「研修期間の短縮」「論文執筆義務の緩和」を行う—。

また、すでに臨床研究医コースで研修を始めている専攻医についても、希望があれば「期間短縮」「論文執筆義務の緩和」を適用する—。

日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)は、5月22日の定例記者会見でこういった状況を明らかにしました(機構のサイトはこちら)。

臨床研究医コース、定員40名のところ、26→18→13名の採用にとどまっている

2018年度から「新専門医制度」が全面スタートしました。従前の「専門医が乱立して分かりにくい」「専門医の質が担保されているのか疑問である」という批判に応えるため、新たな専門医資格を取得するためには、▼日本専門医機構・19基本領域学会が作成・認定した研修プログラムを受講し、必要な症例等を経験する▼各基本領域学会が実施する専門医資格試験に合格する▼日本専門医機構から専門医資格を授与される―ことが原則となります。

毎年度1万名近い医師が、新専門医資格取得を目指して研修プログラムを受講しています(2023年度からの専攻医(専門医資格取得を目指す研修医)採用に関する記事はこちら)。

ところで、当初は新専門医制度の枠組みには「研究医養成」の仕組みが存在せず、「我が国の将来の医学水準が低下してしまう」ことが懸念されていました。そこで2021年度から次のような「臨床研究医コース」が設置されています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

▽通常の専門研修と同様に、臨床研修(初期研修)を修了した医師を対象とし、7年間の臨床研鑽および研究(エフォートの50%以上)に携わる(研修期間は7年間)

▽大学病院等で研鑽する(例えば2年間)中で臨床を学び(主にカリキュラム制となる)、その後、大学院等に進学し、研究に携わる。研究期間中に、First author(主筆)として、SCI(Science Citation Index)論文を2本以上執筆する義務を負う(case reportは除く)

▽研修修了後は、大学等で臨床教官となることなどが考えられる

▽研修期間中は、身分保障がなされ、所属大学病院や大学院等の規定に沿った給与支給を受けられる

臨床研修医コースの概要1(医師専門研修部会1 200717)

臨床研修医コースの概要2(医師専門研修部会2 200717)



しかし「定員40名」のところ、初年度(21年度)は26名、2年度目(21年度)は19名(うち1名が辞退)、3年度目(22年度)は13名の採用にとどまり、「定員割れ」「応募者の減少」が続いています。



こうした状況を受け、渡辺理事長は「臨床研究医コース」の改善を検討する委員会を機構に設置。専攻医からの意見を聴取すると、(1)研修期間が長すぎる(2)研究を始めたばかりの専攻医にとって論文実績執筆義務が重すぎる(3)身分保障が十分とは言えない—という3つの課題があることが浮上してきました。

機構では、この課題を改善するために、2024年度からの臨床研究医コースについて次の2点の見直しを行うことを決定。さらに、すでに臨床研究医コースで研修を始めている専攻医についても、本人が希望すれば「見直し内容を適用する」ことも決定しています。

【見直し内容】
(1)研修期間の短縮

「現在」7年間

「見直し後」最低5年間(うち1年目は主に臨床に充てる)

(2)論文執筆義務の緩和
「現在」研究期間中に、First author(主筆)として、SCI(Science Citation Index)論文を2本以上執筆する義務を負う(case reportは除く)

「見直し後」研修期間中に、SCI論文2本以上を執筆する。ただし、1本の論文に関しては「英文による症例報告」あるいは「和文による臨床研究に関する論文」で代用することを可能とする



臨床研究医コースは「将来の我が国の医療水準の向上」を目指して設定されたものであり、研修期間の短縮・論文執筆義務の緩和は、「医療水準の向上」という目的達成に悪影響を及ぼすのではないかとも思います。

この点について渡辺理事長は「たしかに期間短縮などで研究のチャンスは減る」としたうえで、「研究成果を出す」ことは、必ずしも「研究者・教育者・臨床のベースを持った研究者としての素養を身に着ける」こととイコールではない旨の考えを述べています。「将来の医療水準の向上」のために、「まず、研究者・教育者・臨床のベースを持った研究者をできるだけ多く育成する」→「当該研究者が、将来、優れた研究、教育に携わる」という流れを強化していくイメージです。優れた研究を行うためには、やはり相当の時間が必要となります。若手である専攻医が、7年間という限られた期間の中で「優れた研究」成果を修めることは難しく、「専攻医期間中に研究者の素養を身に着け、その後の長い研究者としての活動の中で『真に優れた研究』成果を修める」ことに渡辺理事長は期待しています。

渡辺理事長は、2024年度スタートの「臨床研究医コース」募集スケジュールも示しています。

、2024年度スタートの「臨床研究医コース」募集スケジュール



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