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新型コロナ対応で自治体病院経営は5月にさらに悪化、貢献度に応じた支援が重要―全自病・小熊会長

2020.8.13.(木)

新型コロナウイルス感染症により病院経営は厳しい状況にある。とりわけ、特定警戒の対象となった8都道府県(北海道、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県)では、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れた病院において、今年(2020年)5月に1億3060万円、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れ「病棟の閉鎖・削減」を行った病院において同じく1億4756万円の「医業収支の減少」となった―。

全国自治体病院協議会(全自病)の小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)は8月6日に記者会見を行い、こうしたデータを公表しました。小熊会長は「新型コロナウイルス感染症への対応・貢献度に応じた支援」の重要性を指摘しています。

8
8月6日に記者会見に臨んだ全国自治体病院協議会の小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)

自治体病院の経営は5月にさらに悪化、新型コロナ対応の応じた支援の重点化を

新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言は全都道府県で解除されていますが、7月中旬から東京都はもちろん、大阪府や愛知県などでも過去最多の新規感染者が確認されています。こうした中では、第2波・第3波に備えた「感染拡大防止策の徹底」や「医療提供体制の確保」などが依然として重要です。

医療提供体制に関しては、「感染者の適切かつ迅速な鑑別」や「重症者への入院医療体制確保」などを引き続き進めることが求められます。現時点では、「緊急事態宣言中と違い、重症者は限られているため、医療提供体制は必ずしも逼迫していない」と見られていますが、事態がどう急変するかは見通せません。各地域で、「即座に感染患者を受け入れられる病床」(即応病床)、「通常は一般患者の受け入れを行い、都道府県の要請を受けて感染患者を受け入れ準備に取り組む病床」(準備病床)、「重症化リスクの引く軽症患者を受け入れる宿泊療養施設」などを重症度別に整備していく方針が示されています(関連記事はこちらこちらこちら)。

あわせて、こうした医療提供体制を経済的に支えるために、診療報酬上の柔軟措置・特例も行われてきており、例えば、新型コロナウイルス感染症患者「専用」の病床確保などを行うICU等で、重症の新型コロナウイルス感染症患者(確定患者のみ)を入院させた場合には「【特定集中治療室管理料】の3倍に相当する点数を算定できる」などの対応が図られています。

しかし、新型コロナウイルス感染防止のため、また限られた医療資源を新型コロナウイルス感染症の重症患者に重点化・集約化するために、多くの病院では「予定入院・予定手術の延期」が行われています。あわせて▼外来患者の減少(受療行動の変化(感染防止や衛生面向上等による感染症の減少など)▼救急搬送の減少―なども生じ、病院経営は非常に厳しくなっていることが各種調査で明らかになってきています。関連記事は以下のとおり
●日病・全日病・医法協調査
追加分析
最終報告
速報

●全国自治体病院協議会調査
こちら

●社会保険診療報酬支払基金データ
5月
4月
3月

●グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)分析
こちら(第3弾)
こちら(第2弾)
こちら(第1弾)



小熊会長はさらに今般、今年(2020年)4月に加え、5月も含めた「自治体病院の経営状況」の調査・分析結果を公表し、そこからは次のような状況が明らかになりました。自治体病院全体の6割にあたる520の自治体病院が回答しています。

▽全体の47.1%で新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れており、病床規模別では300床以上では7-9割が、200床台でも5割が受け入れている

47.1%の自治体病院で、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れている(全自病調査1 200806)



▽全体の37.3%で新型コロナウイルス感染症の入院患者受け入れのために「病棟の閉鎖・削減」を実施しており、300床以上では6-7割が、200床台でも4割が「病棟の閉鎖・削減」を実施している

37.3%の自治体病院で、新型コロナウイルス感染症の入院患者受け入れのために病棟閉鎖等を行った(全自病調査2 200806)



▽今年(2020年)4月・5月における医業収支を前年同期と比べると、次のような状況である
▼新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れていない病院では、4月は1669万円減・5月は1933万円減
▼新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れた病院では、4月は8684万円減・5月は1億30万円減
▼新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れ「病棟の閉鎖・削減」を行った病院では、4月は8797万円減・5月は1億775万円減
▼特定警戒の対象となった8都道府県(北海道、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県)では、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れた病院では、4月は1億1085万円減・5月は1億3060万円減、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れ「病棟の閉鎖・削減」を行った病院では、4月は1億1429万円減・5月は1億4756万円減

新型コロナウイルス感染症の入院患者受け入れのために病棟閉鎖等を行った病院で、とりわけ経営悪化が著しい(全自病調査3 200806)



▼500床以上の、型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れた病院では、4月は1億6143万円減・5月は1億8587万円減、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れ「病棟の閉鎖・削減」を行った病院では、4月は1億4722万円減・5月は1億8776万円減

病床規模別に見ると、大規模になるほど経営悪化の度合いが大きい(その1)(全自病調査4 200806)

病床規模別に見ると、大規模になるほど経営悪化の度合いが大きい(その2)(全自病調査5 200806)



国による支援は、まだ「医療機関の窮状を救う」までには至っていないことが再確認できます。小熊会長は「未知の感染症への対応は自治体病院として当たり前のことであるが、こうした経営状況では、第2波・第3波に十分な対応がとりえるだろうか、と感じている」とコメントしており、国に対し「支援のさらなる強化と迅速対応」を要望していく考えを示しました。

また、全自病の役員会では「医療機関への支援」に対して、▼2月・3月に早期対応した病院への支援がなされていない▼重点医療機関と協力医療機関では診療の内容も来なるが、支援の格差が大きすぎる(重点医療機関>>>協力医療機関)▼手厚い補助がなされる重点医療機関の設定基準が都道府県によってばらついている(同等の新型コロナウイルス感染症対応を行う病院であっても、支援の内容・金額が都道府県間で異なってしまう)―などの問題点が指摘されています。

小熊会長は「8月から国よる支援が医療機関に届き始める。その内容・効果も見ながら、さらなる支援に向けた要望を検討していく。第2波・第3波への対応体制を確保するための支援をお願いしたい」との考えを明らかにしました。小熊会長は「空床を確保し、かつ新型コロナウイルス感染症の重症・中等症患者を受け入れた病院」>「空床を確保したが、新型コロナウイルス感染症の重症・中等症患者は受け入れていない病院」>「その他病院」―という形で、「補助・支援の重点化」を行うべきとの考えも付言しています。

患者減の1要素として「受療行動の適正化」も否定できない

ところで、患者減の1要素として「医療機関受診の必要性が低い患者も、これまで相当程度医療機関を受診していた。新型コロナウイルス感染症により、こうした患者が受療行動を適正化した」ことがあるのではないか、とも考えられています。

小熊会長も、こうした要素が含まれる可能性を認め、「今後、患者の受診行動が変化(適正化)していくと思う。ベッド数の必要量などを今後、再検討する必要があるのではない」との考えを示しています。もっとも感染症病床のような「平時には必要性が低く、不採算な設備」を各地域でどのように整備すべきか、という点について慎重に検討する必要があります(経済性のみを考慮すれば、こうした病床はできるだけ少なくすることが求められるが、有事に対応できなくなってしまう。逆にこうしたベッドを多く整備すれば有事には対応できるが、コストが嵩みすぎる)。

95%の自治体病院でゾーニング等を行うが、それでも院内感染が発生してしまう

全自病では、新型コロナウイルス感染症への対応内容(治療内容や感染防止策等)や課題などに関する調査も実施しています。

詳細は今後示されますが、その調査結果からは「95%の自治体病院でゾーニング(汚染区域と非汚染区域の区分け)、スタッフへの教育・訓練などの感染対策がとられている。にもかかわらず27の病院で院内感染が発生してしまった」ことが分かりました。「個人防護具の不足(PPE)」など、さまざまな要素が関係してくると見られ、今後の「感染防止対策」構築に向けて非常に重要なデータとなりそうです。

病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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医療機関スタッフが新型コロナ感染等で出勤できず、一時的に施設基準を満たせずとも、変更届を行わず従前の診療報酬を算定して良い―厚労省
新型コロナ検査の保険適用に関し、検査キット等の考えを2020年度改定の中で明確化―厚労省
新型コロナ陽性でも、軽症者・無症状者は「宿泊療養・自宅療養」の対象に―厚労省
新型コロナ感染防止のため、臨時・特例的に「初診からのオンライン診療」認める―オンライン診療指針見直し検討会
新型コロナウイルスを迅速に検出する機器、国立国際医療研究センター病院など16施設に配置―経産省
医療従事者の新型コロナ感染、必要性を認めた場合には積極的に検査実施を―厚労省
新型コロナ検査の保険適用に関し、体外診断用医薬品や検査キット等の考えをさらに明確化―厚労省
新型コロナ感染防止のための電話等用いた診療、「情報通信機器を用いる医学管理料」算定の考え明確化―厚労省
新型コロナウイルス検査の保険適用踏まえ、検査キット等の考えをさらに明確化―厚労省
各都道府県で「新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関」設定など早急に進めよ―厚労省

各都道府県に「新型コロナ感染患者の診療拠点となる公立・公的病院」を設置せよ―四病協
新型コロナ対策の臨時特例的なオンライン診療の拡大、診療報酬上も「柔軟な対応」を認める―厚労省
新型コロナ感染避けるため、慢性疾患患者の「予測される症状変化に対する医薬品」処方を電話等で可能に―厚労省

新型コロナウイルス検査の保険適用を踏まえ、検査キット等を明確化―厚労省
新型コロナ感染防ぐため、在宅自己注射する患者等への「電話等での指導や衛生材料等支給」認める―厚労省
新型コロナ感染予防のため全医療機関外来で標準予防策を講じ、新型コロナ患者診療では必要な装備着用を―厚労省
新型コロナ感染防止のため、「オンライン診療・医薬品処方が可能な範囲」を特例的・臨時的に拡大―オンライン診療指針見直し検討会

公立・公的病院等の再編・統合に向けた再検証、新型コロナ受け事実上の期限延長―厚労省
新型コロナウイルス検査の保険適用を踏まえ、診療報酬の疑義解釈を提示―厚労省

新型コロナ感染疑い患者、院内で移動型エックス線装置を用いたエックス線撮影を認める―厚労省
新型コロナウイルス検出のためのPCR検査、3月6日から保険適用―厚労省
新型ウイルス対策、WAMの資金貸付の強化や診療報酬等の柔軟対応の周知徹底を―日病・相澤会長
新型コロナ対応、緊急開設医療機関で「届け出月からの基本診療料算定」、大病院で「電話での外来診療料算定」可能―厚労省
新型コロナ患者増加状況踏まえ、一般医療機関での外来診療、一般病院の一般病床での入院医療を段階的に進める―厚労省
新型コロナ感染対策のための電話等による診療や薬剤処方、【電話等再診料】や【処方箋料】を算定―厚労省
基礎疾患持つ患者の新型コロナ感染避けるため、電話等による診療・処方、処方箋のFAX送信ルール明確化―厚労省
公立病院における新型コロナ感染症への医療提供体制の充実を要請―高市総務相
「互いに手を伸ばせば届く距離で、多くの人が会話等で一定時間以上続く」環境が新型コロナ感染リスクを高める―厚労省専門家会議
新型ウイルス感染拡大防止に向け、イベント開催の必要性検討、「社員等が休みやすい環境」整備を―加藤厚労相
新型コロナウイルス感染に関する相談者・受診者増に対応するため、相談センターや特別外来の体制等充実を
新型コロナウイルス患者等の受け入れ等で診療報酬の施設基準等満たさずとも、当面は変更届け出等は不要―厚労省
37.5度以上の発熱があり入院が必要な肺炎が疑われる患者、新型コロナウイルス検査の実施を―厚労省
37.5度以上発熱が4日以上続く、倦怠感や呼吸困難がある場合は「帰国者・接触者相談センター」に相談を―厚労省
新型コロナウイル患者の入院医療費は「公費負担」とするなど、治療体制を急ぎ整える―首相官邸
新型コロナウイルス関連での外出自粛患者への診療、往診料や訪問診療料の算定可能―厚生労働省
新型コロナウイルス患者、緊急やむを得ない場合には「感染症病床以外の病床」への搬送・入院も可能―厚労省
新型コロナウイルスの感染疑い例診察する特別外来を設置、相談センターから紹介―厚労省
中国武漢市滞在歴のない「新型コロナウイルスの感染患者」、本邦で初確認―厚労省
本邦でも新型コロナウイルスの感染患者、中国武漢市の滞在歴―厚労省
SARS、MERSと異なる病原体不明肺炎が中国で発生―厚労省



新型コロナ対策、まずPCR検査の拡充を進めるべきではないか―日病・相澤会長
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新型コロナで診療縮小等となる医療機関等への優遇貸付拡充、病院では当初5年「1億円まで無利子」で長期運転資金を融資―厚労省・WAM
新型コロナにより事業縮小や閉鎖を余儀なくされる病院や老健施設に資金融資―福祉医療機構



DPC対象病院、「医療の質向上」と「経営の質向上」とを両立―中医協総会

2021年度介護報酬改定、「複数サービスを包括的・総合的に提供する」仕組みを―社保審・介護給付費分科会(1)
新型コロナに対応する医療機関等スタッフへの慰労金、新型コロナ患者の診療日以降も勤務するスタッフに手厚く—厚労省



東京都における新型コロナ患者の急増、「4月時点と状況は異なり、医療提供体制は切羽詰まった状況ではない」—全日病・猪口会長