患者負担・保険料の増加につながる「安直な診療報酬プラス改定」を行える環境にはない—支払側6団体
2023.11.29.(水)
高止まりする医療費、医療保険財政の逼迫を踏まえれば、患者負担・保険料の増加につながる「安直な診療報酬プラス改定」を2024年度に行える環境にはない—。
医療従事者の働き方改革が強く求められる中、まず「診療報酬での対応」と「補助金・交付金での対応」について役割分担の整理・効果検証を行い、メリハリの利いた診療報酬改定を行うべきである—。
薬価・材料価格の引き下げ分は患者・国民に還元すべきであり、診療報酬本体に振り向けるべきではない—。
健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会、全日本海員組合、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会が11月27日に、武見敬三厚生労働大臣に宛ててこうした内容の「令和6年度診療報酬改定に関する要請」を行いました(健保連のサイトはこちら)。
「医療費の伸び」>「物価・賃金の伸び」が長く続き、医療保険財政は非常に厳しい
2024年度の診療報酬改定論議が中央社会保険医療協議会を中心に進んで老い、現在は個別具体的な第2ラウンドに入るとともに、医療経済実態調査結果も示されました。
そうした中、医療保険財政の支え手である6団体(健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会、全日本海員組合、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、いわば中医協の「支払側」)のトップが、連名で武見厚労相に改定に向けた要請を行いました。
まず、現下の医療、経済の状況について、次のような点を確認。
▽コロナ感染症の5類移行後、社会経済活動が活発化し、デフレ脱却に向けた兆しが見えはじめている
▽医療費は2022年度に過去最高の46兆円台に拡大し、コロナ禍前をしのぐ大幅な伸びを示している
▽今後も「生産年齢人口の減少」が続く一方で、「高齢者増」に伴って医療費はますます増加する
▽2022年度の前回診療報酬改定で導入された「リフィル処方箋」について、予想された効果(再診の効率化による医療費の0.10%の適正化)は達成できていない
▽第24回医療経済実態調査では、一般病院で赤字が拡大しているが、コロナ補助金を含めれば「1.4%の黒字」であり、一般診療所では「黒字の拡大」が続いている(一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調と言える)
▽長期間「賃金・物価の伸び<医療費の伸び」という構造が続き、医療保険財政は限界に近い状況にある
こうした状況を踏まえて6団体は「地域医療構想に基づく病床再編の推進、かかりつけ医機能に関する制度整備、医療DXの推進などにより、医療機能の分化・強化と連携を加速させる」とともに、2024年度の医療・介護・障害福祉等サービスの同時報酬改定で「各施設等の機能を強化したうえで、ICT等を活用して円滑な連携を図る」ことが必須であると強調。
より具体的に、2024年度診療報酬改定において次のような対応を行うよう強く求めています。
▽賃金、物価の動向を考慮しつつも、「高止まりする医療費(自然増分もある)により医療保険制度の持続可能性に懸念がある」「限界にある国民負担の状況」「診療所と病院の経営状況の違い」「職種別の給与水準の格差」などを総合的に勘案すると、患者負担増・保険料上昇に直結する「安易な診療報酬の引き上げ」を行う環境にはない
▽2024年度からの医師働き方改革の中で「救急も含めた24時間対応可能な地域医療体制の確保」に向けて、▼多様な医療人材の連携促進▼看護職員等の医療従事者の処遇改善—が重要であり、「診療報酬」と「補助金・交付金」との役割分担の整理・効果検証を行い、その結果を踏まえた真に有効でメリハリの効いた診療報酬改定を行う必要がある
▽薬価・材料については、革新的新薬等のイノベーションへの十分な配慮、後発医薬品等の安定供給の確保を着実に進めるとともに、市場実勢価格の低下に伴う引下げ分を国民に還元すべき(薬価など引き下げ分を、診療報酬本体に振り向けるべきではない)
中医協では、医療経済実態調査結果も踏まえた「改定率設定に向けた意見」をまとめる予定です。そこでは、上記と同様の意見が6団体から改めて示されると考えられます。
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