新薬創出等加算から「企業要件」を削除・廃止すべきか、最低薬価に「新たな剤形の区分」を設けるべきか―中医協・薬価専門部会
2023.11.27.(月)
新薬創出・適応外薬解消等促進加算の企業要件について、ベンチャーなど小規模メーカーが不利になる点などを踏まえて「廃止」する(品目要件でカバーする)こととしてはどうか—。
最低薬価について「新たな剤形の区分」を設けてはどうか—。
長期収載品から後発品への置き換えについて、患者負担論議が進んでいる中で、薬価上の対応は継続すべきか、一休みすべきか—。
11月22日・24日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった議論が行われました。近く、厚生労働省がこれまでの議論を踏まえた2024年度薬価制度改革の方向性を提示。その後、業界団体からの意見も聴取し、年内に2024年度薬価制度改革の骨子を固めることになります。
企業要件廃止や、最低薬価の新区分については賛否両論、近く改革の方向性
2024年度の薬価制度改革議論は「具体的な第2ラウンド論議」が大詰めに入っています(優れた医薬品を我が国にいち早く導入する場合の評価に関する記事はこちら、安定供給に力を入れる後発品メーカーの評価に関する記事はこちらとこちら、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」見直しに関する記事はこちら、ドラッグ・ラグ/ロス解消策に関する記事はこちら)。
11月22日・24日の会合では、次のような論点・改革案が厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官から提示されました。
(1)新薬創出・適応外薬解消等見直し加算を次のように見直してはどうか
▽企業要件・企業指標は、「品目要件により革新的な医薬品を評価の対象とすることで代替できる」「ベンチャー企業やスタートアップ企業で不利になる」点などを考慮して廃止する
▽品目要件について、「小児の効能効果、用法用量が明確で、小児加算による評価対象となりうる品目」「検討中の『日本への早期導入に対する評価』を受けた品目」を評価対象に加える
▽加算額は、▼基本的に「改定前価格を維持する」こととする▼「全品目の平均乖離率を超える品目」は異なる評価とする—
▽後発品が登場した場合などの累積額控除は、2024年度には「従来どおりの方法」とするが、その後の取り扱いは検討を続ける
で累積額控除を行い、2024年度う
(2)その他のイノベーション評価として次のような対応を図ってはどうか
▽新薬創出等加算の品目要件である「新規作用機序医薬品から3年以内・3番手以内で、新規作用機序医薬品が加算適用品また基準該当品」規定について、▼「有用性加算等に該当し。品目要件を満たす品目」を比較薬として算定された品目▼「前者に該当する品目」を比較薬として算定された品目—に関しては、「有用性加算等に該当する品目の収載から3年以内・3番手以内のものに限り、品目要件を満たす」と扱う(「3年以内・3番手以内」品目の範囲を変更するもの、4番目以降は薬理作用類似薬の範囲で3番手以内であっても加算対象外となる)
▽薬価改定時の加算に関して、追加された効能ごとに加算の該当性を判断し、併算定を認める
▽薬価改定時の加算の評価を適切に薬価に反映させるため、加算の適用順を変更する
▽薬価基準収載時の有用性系加算の適用に係る標準的治療法の取扱いについて、国内ガイドラインに記載されていない場合でも「薬価基準収載後に本邦で標準的治療法となることが明らか」と見込まれる場合などは評価の対象とする
(3)市場拡大再算定について次のように見直してはどうか
▽「類似品」の取扱い(いわゆる共連れルール)について、企業の予見性確保、競合性の複雑さなどを踏まえ取り扱いを見直す。とくにPD-1/PD-L1阻害薬(例えばオプジーボ、キイトルーダ、テセントリクなど)のような「特定の領域で、類似薬でも品目により効能が様々で、効能が1つでも重複すれば類似薬として再算定の対象となる」状況を見直す(こうした領域の特定はあらかじめ可能)
▽価格引下げ率には、激変緩和のための上限値が設定されているが、上限値に達する品目が一定数存在する状況を踏まえ、上限値、算定方式による適用条件、年間販売額、予想販売額比、計算式などを見直す
▽例えば「薬価基準収載時に有用性系加算に該当すると認められる効能が追加された品目で、市場拡大の原因が当該効能追加であると認められる」場合には、市場拡大再算定の補正加算(引下げ率緩和)の対象とする(2024年度改定では適用せず、以降の改定から適用する)
(4)小児用医薬品の評価について次のような見直しを行ってはどうか
▽小児用医薬品開発を進めるため、薬事制度における検討にあわせて、薬価上の措置を「小児用医薬品の開発促進のための薬価上の対応案」(下記)に従って対応する
▽次回以降の薬価制度改革に向けた検討においても、小児用医薬品に係る薬価上の評価のあり方について引き続き議論を行う
(5)薬価算定の妥当性・透明性の向上に向けて次のような見直しを行ってはどうか
▽「原価計算方式における開示度向上」に向けた実効性を伴う見直しは難しく、今回の薬価改定では特段の見直しは行わず、引き続き検討していく
▽新薬の適切なイノベーション評価のあり方等を次期薬価改定に向けて検討していく
▽必要と認められる場合はG1/G2品目(後発品への置き換えを進めている長期収載品)を新薬の薬価算定における比較薬とすることを認める
▽類似薬効比較方式(I)において、「比較薬とは臨床上の位置づけ等が異なり、単純に1日薬価合わせを行うことが同等の評価とはいえない」と考えられる新規収載品目については「1日薬価合わせの後、一定の範囲で減算する」仕組みを検討する
(6)薬価を下支えする制度について次の見直しを行ってはどうか
▽乖離の状況も踏まえ「新たな剤形の最低薬価」を設定してはどうか
▽不採算品再算定について、必要な取り組みを行う
(7)長期収載医薬品について「患者負担の見直し」が議論される中、薬価上の対応をどう考えるか(関連記事はこちらとこちら)
こうした見直し内容については、例えば「新薬創出等加算の企業要件廃止には反対である。市場拡大再算定については『保険財政の維持、確保』という趣旨に沿い、状況を踏まえながら適切な見直しを行っていくべき。薬価の下支えを行っても『大幅に値引きをして販売する』事態が変わらなければ問題解決はしない。流通や取引環境の改善が必要である」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「新薬創出等加算の企業要件廃止は、ベンチャーなど小規模メーカーへの配慮の観点から賛成である」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「新薬創出等加算の企業要件廃止は、飛躍しすぎではないか。また特許期間中の薬価維持を原則とするのであれば、累積控除額を毎年度改定で控除すべきである。市場拡大再算定については『類似品以外』について引き下げ率を厳格化すべき。長期収載品については薬価上の対応も継続すべき」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)、「優れた医薬品を開発しても企業要件により薬価が維持されないというケースがあり、一種のディスインセンティブにもなっている。品目要件で、企業要件配置部分はカバーできる。また企業要件廃止は『イノベーションを適切に評価する』とのメッセージにもなり、日本市場の魅力を回復することにつながる。長期収載品から後発品への置き換えは進んでおり、現時点で薬価上の対応をとる必要性は極めて低い」(石牟禮武志専門委員:塩野義製薬株式会社渉外部長)などの意見が出ています。
安川薬剤管理官は、こうした意見も踏まえて「2024年度薬価制度改革の方向性」を次回会合に提示する考えを示しました。その後、業界団体からの意見も聴取し、年内に2024年度薬価制度改革の骨子を固めることになります。
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