新専門医目指す「専攻医」の2025年度採用は9762名、外科専攻医が増加、東北地方での専攻医増は限定的―日本専門医機構
2025.3.25.(火)
来年度(2025年度)から「新専門医資格を目指して新たに専門研修を開始する専攻医」として病院に採用された医師は9762名で、前年度から308名増加し、過去最多となった(医学部定員増→臨床研修修了者の増加、が主な要因)—。
日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)は、3月24日の定例記者会見でこういった状況を明らかにしました(機構のサイトはこちら)。
外科を専攻する医師が増加していますが、「深刻な外科医不足」問題が解決に向かうのかは中長期的に見ていく必要があります。また、東京近郊での専攻医採用が増えていますが、「医師不足が深刻な東北地方」での増員は限定的です。2026年度からは「新たなシーリング」がスタートし、医師偏在状態がどう動いていくのか注目する必要があります。

3月24日の定例記者会見に臨んだ日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)
東京採用でも、研修期間の1年・1年半を「医師が少ない地域」で勤務する専攻医もいる
2018年度から「新専門医制度」が全面スタートしました。従前の専門医制度に対する「各学会が独自の基準で専門医を認定しており、国民に分かりにくく、質が担保されていない」などの批判を踏まえ、「日本専門医機構と各学会が共同して研修プログラムを作成し、認定を行う仕組み」「医師の地域偏在を助長しない(東京など大都市部での専門研修を希望する医師が多いため)よう、エビデンスに基づいた地域・診療科ごとのシーリング(専攻医採用数の上限)を設ける仕組み」へと改められています。
今般、来年度(2025年度)から専門研修を開始する「専攻医」の採用状況が渡辺理事長から発表されました。
●2025年度採用数:9762名(2022年度採用数(9454名)に比べて308名・3.3%増)
▽内科:3027名(同177名・6.2%増)
▽小児科:537名(同5名・0.9%増)
▽皮膚科:308名(同11名・3.7%増)
▽精神科:540名(同9名・5.3%減)
▽外科:863名(同56名・6.9%減)
▽整形外科:755名(同16名・2.2%増)
▽産婦人科:469名(同13名・2.7%減)
▽眼科:347名(同16名・4.8%減)
▽耳鼻咽喉科:278名(同72名・35.0%増)
▽泌尿器科:332名(同11名・3.2%減)
▽脳神経外科:237名(同18名・8.2%増)
▽放射線科:326名(同17名・5.0%減)
▽麻酔科:497名(同11名・2.3%増)
▽病理:109名(同19名・21.1%減)
▽臨床検査:25名(同7名・38.9%増)
▽救急科:449名(同27名・4.9%減)
▽形成外科:226名(同増減なし)
▽リハビリテーション科:137名(同16名・10.5%減)
▽総合診療:300名(同10名・3.4%増)
また、都道府県別に見ると次のような状況です。
▽北海道:344名(同46名・15.4%増)
▽青森県:76名(同3名・3.8%減)
▽岩手県:57名(同3名・5.6%増)
▽宮城県:181名(同11名・5.7%減)
▽秋田県:49名(同1名・2.1%増)
▽山形県:39名(同21名・35.0%減)
▽福島県:100名(同4名・3.8%減)
▽茨城県:143名(同11名・7.1%減)
▽栃木県:119名(同5名・4.0%減)
▽群馬県:109名(同10名・10.1%増)
▽埼玉県:415名(同37名・9.8%増)
▽千葉県:424名(同14名・3.4%増)
▽東京都:1812名(同21名・1.2%増)
▽神奈川県:684名(同32名・4.9%増)
▽新潟県:106名(同5名・5.0%減)
▽富山県:53名(同8名・17.8%増)
▽石川県:116名(同30名・34.9%増)
▽福井県:44名(同7名・13.7%減)
▽山梨県:55名(同3名・5.2%減)
▽長野県:104名(同4名・4.0%減)
▽岐阜県:108名(同7名・6.1%減)
▽静岡県:187名(同17名・8.3%減)
▽愛知県:621名(同36名・6.2%増)
▽三重県:102名(同14名・15.9%増)
▽滋賀県:115名(同増減なし)
▽京都府:278名(同16名・6.1%増)
▽大阪府:724名(同9名・1.2%減)
▽兵庫県:526名(同27名・5.4%増)
▽奈良県:113名(同13名・10.3%減)
▽和歌山県:75名(同8名・9.6%減)
▽鳥取県:45名(同5名・10.0%減)
▽島根県:57名(同増減なし)
▽岡山県:218名(同11名・5.3%減)
▽広島県:173名(同14名・8.8%増)
▽山口県:67名(同5名・8.1%増)
▽徳島県:50名(同6名・13.6%増)
▽香川県:58名(同11名・23.4%増)
▽愛媛県:58名(同6名・9.4%減)
▽高知県:67名(同18名・36.7%増)
▽福岡県:490名(同15名・3.2%増)
▽佐賀県:42名(同4名・12.5%減)
▽長崎県:76名(同9名・10.6%減)
▽熊本県:106名(同5名・5.0%増)
▽大分県:81名(同12名・17.4%増)
▽宮崎県:50名(同4名・8.7%増)
▽鹿児島県:108名(同24名・28.6%増)
▽沖縄県:137名(同24名・21.2%増)
領域別に見ると、耳鼻咽喉科や脳神経外科、臨床検査、外科などで専攻医増が伺えます。「深刻な外科医不足」が解決方向に向かうのか、今後の状況を注視する必要があります。
また都道府県別に見ると「東京近郊」はやや増加していますが、「医師不足が深刻な東北地方」では解決方向に向かっているとまでは言い切れないでしょう。
専門医制度は「優れた医師を育成する」ことが主目的ですが、「地域間・診療領域間の医師偏在を助長してはいけない」点も重視され、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省—が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みが設けられています。この「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みの1つに「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み【シーリング】があります。

2025年度専攻医採用数シーリングの考え方(医師専門研修部会1 250130)
2026年度から専門研修をスタートする専攻医の募集は今秋にスタートします(2025年11月からとなる見込み)。日本専門医機構には「医師不足地域に所在する特別連携先病院のリストを国や自治体と連携して作成し、基本領域学会と連携して連携先病院(上記例で言えば、医師少数区域での1年間の専門研修を受ける病院)を確保する」ことなどに早急に取り組むことが求められており、渡辺理事長は「機構としても情報提供を進めていく」考えを示しています。今後の動きに注目が集まります。
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