再編・統合で400床以上となる病院、地域医療構想調整会議の合意あれば地域包括ケア病棟を設置可—厚労省
2020.6.19.(金)
再編・統合で許可病床数400床以上となる病院であっても、地域医療構想調整会議の合意などを要件に地域包括ケア病棟の設置(ただし1病棟のみ)を可能とする―。
厚生労働省は6月18日に通知「『基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて』の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました(厚労省のサイトはこちら)。6月9日の中央社会保険医療協議会・総会論議を踏まえた見直しです。
2020年度改定で「400床以上の病院は地域包括ケア病棟の新設不可」とのルール新設
2020年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟改革の一環として「許可病床数400床以上の病院について、地域包括ケア病棟の新設を認めない(ただし既に保有する地域包括ケア病棟は維持できる)」との規定が設けられました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
特定機能病院以外の急性期病院において、急性期病棟(急性期一般1など)と地域包括ケア病棟の双方を持つことで、「急性期を脱した患者を地域包括ケア病棟に転棟させ、急性期一般1の重症度・医療・看護必要度の基準値(看護必要度I:31%以上、看護必要度II:29%以上)を維持する」という手法がとられています。しかし、これが度を越すあまり、「地域包括ケア病棟のほとんどの入棟患者が、自院の急性期病棟からの転棟患者で、地域の急性増悪した在宅患者等の受け入れを全く行っていない」「地域における医療機能の分化・連携の強化が阻害されている」という指摘を受けたものです。
しかし、地域において病院の再編・統合が進む中で「400床以上病院での地ケア病棟新設不可」がネックになっている実態もあります。例えば、地域包括ケア病棟を持つ病院同士が合併し、地域における救急医療・小児医療・在宅医療へのニーズに十分に対応できる医療提供体制の整備を目指そうと考えているが、「地域包括ケア病棟が設置できない」ことから、合併そのものの議論が滞ってしまう—というケースも出てきているようです。
急性期一般1を届け出るためには、重症患者(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者)割合を高める必要があります(看護必要度I:31%以上、看護必要度II:29%以上)。このためには、重症を脱した患者を積極的に他院の後方病床(地域一般病棟や地域包括ケア病棟など)に転院させていくことが重要ですが、地域によっては「当該病院以外、重症を脱した患者を受け入れられる病棟がない」こともあります。この場合、自院の地域包括ケア病棟への転棟が重要な選択肢となりますが、新設された「400床以上病院での地域包括ケア病棟設置不可」規定があるため、「重症を脱した患者」の転院・転棟が進まず、結果として「急性期一般1」の届け出ができない(収益減)事態に陥ってしまうことがあるのです。
こうした地域の実情を踏まえ、6月9日の中医協総会では、一定の条件を満たした場合には「再編・統合によって許可病床数400床以上になった病院では、例外的に1病棟のみ地域包括ケア病棟を設置できる」という新ルールの創設が認められました。
これを受け、今般、具体的な通知改正が行われたものです。
新ルールでは、次のような要件を満たした場合、許可病床数400床以上の病院でも地域包括ケア病棟を設置できることが示されました(ただし1病棟のみ)。なお、400床以上であることから、地域包括ケア病棟入院料1・3(200床未満で地域の在宅療養患者等を積極的に受け入れている場合に、入院料が高く設定されている)および入院医療管理料(病室単位、200床未満病院のみ届け出可能)を届け出ることはできず、「地域包括ケア病棟入院料2・4の届け出のみ」となることは述べるまでもありません。
▽地域医療構想調整会議において「再編または統合を行うことについて合意が得られている」こと
▽複数の「許可病床数400床未満の病院」が再編または統合の対象病院であること(400床以上の大病院が他病院を吸収合併等する場合は不可)
▽再編または統合を行う対象病院のいずれかが、地域包括ケア病棟入院料の届出を行っていること(まったくの新設は不可)
▽地域医療構想調整会議において「再編または統合後の病院が、地域包括ケア病棟を有する必要がある」と合意を得ていること
地域医療構想調整会議の議論が、さらに重要になってきていることが再確認できます。
なお、届け出にあたっては、「合意を得た地域医療構想調整会議の概要を書面にまとめたもの」を提出することが必要ですが、この書面は、届け出を行う医療機関が作成したものでよいこととされています(A200【総合入院体制加算】について、地域医療構想調整会議の合意を条件として「小児科、産科または産婦人科の標榜・入院医療提供を行わない」ことが認められていることと同様、関連記事はこちら)。
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【2020年度診療報酬改定答申2】救急2000件以上で勤務医負担軽減図る病院、【地域医療体制確保加算】(520点)でサポート
【2020年度診療報酬改定答申1】重症患者割合、特定機能病院は看護必要度IIで28%、急性期1は必要度Iで31%、必要度IIで29%に
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「働き方改革」への診療報酬でのサポート、人員配置要件緩和を進める方向は固まるが・・・―中医協総会(1)
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入院患者のポリファーマシー対策、減薬の成果だけでなく、減薬に向けた取り組みも評価してはどうか―中医協総会(1)
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CT・MRIの共同利用、医療被曝防止に向けたガイドライン活用などを診療報酬でどう進めるか―中医協総会(2)
ポリファーマシー対策を診療報酬でどう進めるか、フォーミュラリの報酬評価には慎重意見―中医協総会(1)
新規の医療技術、安全性・有効性のエビデンス構築を診療報酬で促し、適切な評価につなげよ―中医協総会(2)
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医師の働き方改革、入院基本料や加算の引き上げなどで対応すべきか―中医協総会(2)
がんゲノム医療の推進に向け、遺伝子パネル検査を6月から保険収載―中医協総会(1)
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2020年度診療報酬改定に向け、「看護必要度」「地域包括ケア病棟」などの課題を整理―入院医療分科会
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総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
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回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
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