高齢の救急搬送患者への対応、最重要ポイントは「多職種で包括的な対応を可能とする点数」設定である—日病協
2023.12.21.(木)
高齢の救急搬送患者への対応について様々な対応案が議論されているが、最も重要なポイントは「多職種での包括的な対応を可能とするような点数」設定である。新たな評価案も浮上しているが、「新評価が絵に描いた餅にならないような、高点数設定」を期待する—。
12月15日の日本病院団体協議会・代表者会議後の記者会見で、山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)と仲井培雄副議長(地域包括ケア病棟協会会長)からこういった考えが示されました。
救急医療管理加算、HCU看護必要度の見直しも、慎重に検討すべき
地域医療機能推進機構や地域包括ケア病棟協会、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)は、「診療報酬改定に向けて、病院団体で足並みをそろえ、統一した要望・要請・提言」を行うために組織されました。定期的に各病院団体のトップ(会長、副会長クラス)が顔をあわせ、診療報酬改定をはじめとした「病院が直面する諸問題」について議論し、提言・要望の発信などを行っています。
中央社会保険医療協議会では、2024年度の次期診療報酬改定に向けた議論が熱を帯びてきています。例えば「高齢の救急搬送患者への対応」が重要論点の1つとなり、▼一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直し(例えば「救急搬送後の入院」について5日間、A2点を獲得できることが高齢の救急患者を急性期病棟に搬送させる要因になっているとの指摘あり)▼地域包括ケア病棟において救急搬送受け入れた場合の加算の強化(救急搬送患者受け入れでは、転棟患者受け入れに比べて高コストになる)▼急性期病棟から地域包括ケア病棟などへの下り搬送推進(平素からの連携関係と実際の下り搬送をセットで評価する)▼高齢の救急搬送患者への包括的対応の評価(治療・リハビリ・栄養管理・退院支援・退院後支援などを包括評価する)—などの見直し方向が議論されています。
こうした方向について各病院団体のトップは、「高齢者の救急対応を十分に行える点数設定が必要である。看護必要度の見直しにより急性期一般1での高齢者救急対応が難しくなり、一方で、地域包括ケア病棟で十分な点数設定がなされなければ、高齢の救急搬送患者が行き場を失ってしまう。そうなれば高齢者救急医療提供体制が崩壊してしまうこともありうる」と心配していることが山本議長・仲井副議長から明らかにされました。
また、12月15日の中医協総会で示された「高齢の救急搬送患者への包括的対応の評価」案について山本議長は、「例えば地域包括ケア病棟での『高齢の救急搬送受け入れ』について、何がネックになっているのかを詳細に分析した。その結果、『13対1看護配置』では重症患者を受け入れることが難しい点がクローズアップされ、『10対1看護配置以上で、高齢の救急搬送患者を受け入れ、包括的に対応する』医療機関の評価案が示されたものと理解している。こうした対応を可能とするためには『新たな評価が絵に描いた餅にならないような十分な点数』設定が必要である」との考えを示しています。
同日の中医協総会でも、診療側委員から『多職種を配置し、包括的な対応が可能となる点数設定』を求める声が多数出されており、今後の重要ポイントとなります。
このほか、2024年度診療報酬改定に向けて、次のような見解が日病協代表者会議で出されていることも紹介されました。
▽消費税対応について、子ども病院などでは「消費税負担(支出)>診療報酬による補填(収益)」の開きが大きくなってきている。病院の消費税対応を議論する場を設け、根本的な対応を検討する必要がある(関連記事はこちら)
▽認知症患者に対し、急性期病院では点滴なども行っており、患者の安全を守るためにやむを得ず最小限の身体拘束を行うこともありうる。その場合にも診療報酬を減算するとなれば、認知症患者受け入れを躊躇するなどの危険な事態が生じうる。「拘束」の定義明確化なども含め、慎重に検討すべき(関連記事はこちら)
▽救急医療管理加算について、基準明確化を求める声が出ている。たしかに基準明確化は、審査基準統一のためにも重要であるが、十分な議論を経ずに拙速に設けることなどは危険である(関連記事はこちら)
▽ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度見直し論議が行われている。例えば「心電図モニタ管理」の削除などは理解できるが、重症患者割合を含め、不用意な厳格化を行えば、HUCに入室できない患者があふれる。そうした患者を一般病棟で受け入れることは難しく、慎重な検討が必要である(関連記事はこちら)
こうした考えは、中医協でも病院代表の診療側委員(池端幸彦委員:日本慢性期医療協会副会長、太田圭洋委員:日本医療法人協会副会長)から示されており、今後の詰めの議論においても重視されることでしょう。
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2024年度診療報酬改定の基本方針論議続く、物価高騰対応の必要性言及を医療提供サイドは高く評価するが、費用負担者は効率化を強く要請
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費用対効果評価に基づく価格調整をより広範囲にすべきか、介護費用削減効果を医薬品・医療機器の価格に反映させるべきか―中医協
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診療報酬改定のない年の薬価改定(中間年改定)、医薬品供給やドラッグラグ・ロスへの影響も見ながら在り方を検討―中医協・薬価専門部会
2024年度診療報酬改定に向けて第1ラウンド論議を総括、今後、個別具体的な点数・施設基準に関する第2ラウンド論議へ—中医協総会
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