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「診療報酬の包括評価」拡大を議論するのであれば、DPC評価分科会の復活など「公開の場」で議論を―日病協

2021.6.29.（火）

骨太方針2021では「診療報酬の包括払い」推進が打ち出されたが、仮に中央社会保険医療協議会で議論する際には、例えば「DPC評価分科会」を復活させるなど「公開の場」で、病院団体が複数参加する中で行ってほしい―。

6月25日の日本病院団体協議会・代表者会議では、こういった考えで一致したことが、会議終了後の記者会見で斉藤正身議長（日本リハビリテーション病院・施設協会会長）と小山信彌副議長（日本私立医科大学協会会業務執行理事）から明らかにされました。

新興感染症対応についても「病院代表」構成員を増員したうえで議論を

日本病院団体協議会は、日本リハビリテーション病院・施設協会や日本私立医科大学協会、日本病院会など15の病院団体で構成される組織で、主に「診療報酬改定に向けて病院団体の意見をすり合わせ、共同提案・要望を行う」などの活動をしています（もちろん、診療報酬以外の医療の諸課題について議論を行っている）。

6月18日に閣議決定された骨太方針2021（経済財政運営と改革の基本方針2021）には、新型コロナウイルス感染症を踏まえた医療提供体制上の課題として「医療資源が散在している」ことを強調。これを是正するためには「医療機関の再編・統合」を進めることが必要となり、その方策の一つとして「診療報酬の包括払い」拡大があげられています。

「診療報酬の包括払い」とは抽象的な表現ですが、経済財政諮問会議における民間の有識者議員の提案では、より明確に「1入院当たり包括」という言葉が出ていました。

DRG／PPSに代表される「1入院当たりの包括払い」方式では、医療機関の利益率を高めるために「在院日数を極力短くする」ことが重要となってきます（収益の上限が決まっており、コストを最小限にすることが重要となる）。この「在院日数の短縮」は、「病床利用率の低下」を招くため、病院は「利益率」のみならず「収益」を確保するために「新規患者の獲得」を強化しなければなりません。具体的には「診療圏の拡大」（「当該病院を中心に半径20kmの地域」が主な診療圏域であったところを、「半径50km」「半径100km」などに拡大し、「新たな患者の掘り起こし」を行う）が必要となってくるのです。

ただし、こうした状況は「1入院当たり包括」が導入される、すべての病院で同様であるため、▼すべての病院で診療圏を拡大する→▼「新規患者の獲得」競争が各地激化する―という事態が生じ、「病院の勝ち負け」が明確になってきます。また「勝ち負け」を嫌う地域では「和平協定」（「急性期患者はA院で、回復患者は他院で受ける」などの取り決め）を結ぶことになります。

このように「勝ち負け」が決定するなどすれば、新規患者獲得に「負けた」病院は、閉院するか、他の病院と「合併する」などの選択肢を模索することになります。これはつまり、「再編・統合」が進むことを意味するのです。実際にDRG／PPSが導入された米国では、病院の再編・統合が一気に進みました。

経済財政諮問会議の民間有識者議員も「医療資源の散財」を解消するために「1入院当たり包括」を導入し、医療機関の再編・統合を進めるべきである、と考えていることが分かります。

この考え方に沿って、我が国でも「1入院当たり包括」を導入する場合には、中央社会保険医療協議会で検討を行う必要があります。その際、極めて専門性の高い議論を行う必要があり、例えば「入院医療に関する調査・評価分科会」（中医協の下部組織）に設けられた「DPC／PDPS 等作業グループ」などで下地の議論を行うことが考えられます。

しかし、作業グループでは現在「アウトライヤー病院（医療資源投入量が極めて少ない病院、在棟日数が極めて短い病院）に関する実態調査」議論を行っており、また議論は「非公開」で行われています。

こうした状況を受け、日病院では「極めて重要な検討テーマであり、公開の場で議論する必要がある。そのために、例えばDPC評価分科会を復活させ、そこに日病協代表委員を複数名入れ、データに基づいた議論を行う必要がある」との考えで一致したことが小山副議長から報告されています。今後の動きに要注目である。

併せて日病協では、第8次医療計画の基本指針策定に向けた「第8次医療計画に関する検討会」で「新興感染症対策」が議論される件について、「新型コロナウイルス感染症をはじめ、新興感染症対応を行うのは『病院』であり、病院代表の委員を増員すべき」との見解でも一致しています。

ところで、新型コロナウイルス感染症の新規感染者（中等症患者、重症患者）をすぐさま受け入れるために、多くの病院には「即応病床（事実上の空床にしておく）」の確保が求められています。空床ゆえに「収益」が出ませんから、即応病床には手厚い空床確保のための補助（ICUであれば1日・1床当たり9万7000円など）が行われるとともに、人材確保（コロナ感染症の重症患者では例えば「2対1」看護などの手厚い体制が必要）が重要となるための人件費補助（例えば緊急事態措置地域では、重症者病床1床当たり1950万円など）が行われています。

そうした中、関係者の懸命な努力で、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が落ち着いてきます。それを踏まえ一部都道府県では「コロナ対応のフェイズを下げ、即応病床の整備量を削減する。ついては1週間で即応病床を廃止し、病床確保等の補助を打ち切る」という通知が出ているとの報告が日病協・代表者会議で行われました。日病協では「柔軟な対応を行うべきである」との考えでまとまったことが斉藤議長から報告されています。