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地域包括医療病棟、ADL低下割合要件等がネックだが、救済措置も活用して施設基準クリアが進んでいく―地ケア推進病棟協・仲井会長

2024.8.30.（金）

2024年度の診療報酬改定において、高齢の救急患者に包括的に対応する新病棟【地域包括医療病棟】が新設されたが、ADL低下割合要件などがネックとなっており、届け出は予想よりも少ない状況である—。

しかし、地域包括医療病棟は「急性後患者を受け入れる機能」にとどまらず、「急性期後患者も受け入れる機能」を持つ病棟である。厚生労働省が示した「救済措置」も活用し、徐々に施設基準クリアが可能な状況になっていくことを期待している—。

地域包括医療病棟の状況を分析しながら、「施設基準見直し」などに向けた提言を検討していく—。

地域包括ケア推進病棟協会の仲井培雄会長が8月29日にオンライン記者会見を開催し、こうした考えを述べました（地域包括ケア病棟協会から、この6月（2024年）6月に地域包括ケア推進病棟協会に名称変更）。

8月29日にオンライン記者会見に臨んだ、地域包括ケア推進病棟協会の仲井培雄会長

地域包括医療病棟、「軽度急性期患者」とともに「急性期後患者」も受け入れる機能

2024年度の診療報酬改定で、高齢の救急搬送患者に包括対応する【地域包括医療病棟入院料】が新設されました（関連記事はこちら）。

高齢の救急搬送患者に包括的な対応を行う新病棟の創設が期待される（中医協総会（1）1 231215）

地域包括医療病棟に設けられた加算一覧

地域包括医療病棟入院料の包括範囲、手術や麻酔、心カテなどの高度な検査などは「出来高算定」可能である

医療現場では、「7対1の急性期一般1の施設基準（平均在院日数、看護必要度）が厳格化され、一定程度がドロップアウトするとみられる中で、地域包括医療病棟入院料は移行先の1つとして魅力的である」と評価する声もある一方で、「施設基準が厳しく、外科系病院からも内科系病院からも地域包括医療病棟入院料には移行しにくい」と見る向きもあります（関連記事はこちらとこちら）。

施設基準の詳細が明らかになる前に地域包括ケア推進病棟協会が実施した「地域包括医療病棟への転換」意向調査を実施したところ、「6月中・7月・10月以降に転換する」病院が4.5％、「転換しない」が42.3％、「検討中・未定」が53.2％などの状況が分かりました（112病院が回答）

さらに今般、告示・通知・疑義解釈、さらに「救済措置」などで詳細が明らかになったことを受け、改めて「地域包括医療病棟への転換」意向調査を実施。そこから例えば次のような状況が浮かび上がってきました（142病院が回答）。

▽意向以降：検討中が大きく減少し、転換しない病院が増加
▼転換「する」：8病院（5.6%、3月調査に比べて1.1ポイント増）
▼転換「しない」：105病院（73.9%、同31.6ポイント増）
▼「検討中・未定」：29病院（20.4%、同32.8ポイント減）

地域包括医療病棟への転換意向調査結果の大枠（告示後）（地域包括推進病棟協会1　240829）

▽転換「しない」病院の特徴
→▼地域密着型の病院が多い（5割弱）▼nonDPC病院が多い（7.5割強）▼急性期一般病棟を持たない病院が多い（５割強）—

▽「検討中・未定」病院の特徴
→▼急性期ケアミクス型病院（急性期一般病棟と地域包括ケア病棟を併設し、病院全体で急性期機能を最重視）が多い（5.5割強）▼DPC病院が多い（5割強）▼急性期一般病棟を持つ割合が高い（7割強）▼回復期リハビリ病棟を持つ割合が高い（6割弱）—

地域包括医療病棟への「転換しない」「検討中・未定」病院の特徴1（地域包括推進病棟協会2　240829）

仲井会長は、▼「検討中・未定」病院が大きく減少した背景には「施設基準が想定以上に厳しかった」ことがある▼「転換しない」病院でも、急性期ケアミクス型病院の割合が高まっており、転換の判断は「急性期に関わる診療密度」に左右される—と分析。

地域包括医療病棟への「転換しない」「検討中・未定」病院の特徴2（地域包括推進病棟協会3　240829）

さらに詳しく、「検討中・未定病院」と「転換しない病院」とを比較したところ、次のように「急性期よりな病院で地域包括医療病棟への転換を検討中である」状況も明らかになってきました。

▽「救急搬送年間1200件未満・全身麻酔手術年間60件未満」（紫色）の病院グループ、「救急搬送年間1200件以上・全身麻酔手術年間60件以上」（緑色）の病院グループでは、「転換しない」病院が告示後に増加（75％超）で、「検討中・未定病院」と「転換しない病院」との各調査項目の差が告示後に僅少化した
→転換意向は、調査項目にない「患者像」や「職員像」、「将来の病院機能」、「将来人口」、「パッション」等の要因が影響すると考えられる

▽「救急搬送年間1200件未満・全身麻酔手術年間60件以上」（赤色）の病院グループでは、「検討中・未定」が35％強とやや多い
→「検討中・未定」病院には、急性期ケアミクス型・DPC病院・回復期リハ病棟保有などの特徴があり、急性期よりの施設が多い
→「転換しない」病院には、地域密着型・nonDPCなどの特徴があり、回復期よりの施設が多い

地域包括医療病棟への「転換しない」「検討中・未定」病院の特徴3（地域包括推進病棟協会4　240829）

地域包括医療病棟への「転換しない」「検討中・未定」病院の特徴4（地域包括推進病棟協会5　240829）

次に、「クリアが難しい施設基準項目」を見てみると、▼ADL低下患者割合5%未満▼重症度、医療・看護必要度▼救急搬送患者割合15%以上—が特に厳しい状況が浮かび上がってきました。

さらに、厚労省が示した「救済措置」（施設基準のうち実績割合について、2026年5月末までの間「3か月」を上限に実績対象期間から除くことを認める）については、▼「転換する病院」の多くが利活用を考えている▼「検討中・未定病院」では、「転換しない病院」に比べて実績が高い（救済措置によって施設基準をクリアできる可能性がより高い）—ことを踏まえて、「救済対象の項目設定が妥当である」と仲井会長はコメントしています。

「検討中・未定」病院における施設基準救済措置の可能性（転換しない病院に比べて「目途なし」（赤）が少ない）（地域包括推進病棟協会6　240829）

「転換しない」病院における施設基準救済措置の可能性（検討中・未定病院に比べて「目途なし」（赤）が多い）（地域包括推進病棟協会6　240829）

こうした状況を踏まえて仲井会長は、「▼ADL低下患者割合5%未満▼重症度、医療・看護必要度▼救急搬送患者割合15%以上—が地域包括医療病棟への転換にネックとなっているが、「救済措置」の利活用により、状況が変化していくことも考えられる。例えば、地域包括医療病棟入院患者は、在棟期間によって（a）平均在院日数要件（21日）よりもはるかに早期に退院できる患者（b）平均在院日数要件（21日）程度で退院できる患者（c）平均在院日数要件（21日）をはるかに超える入院が必要な患者—に区分できる。患者を、こうした3群に分け在院日数をコントロールできるようになれば、施設基準クリアもそう難しくないと考えられる」と分析。

併せて仲井会長は、「地域包括医療病棟はsub acute機能（軽症急性期患者の受け入れ）病棟と考えられているが、実は『sub acute＋post acute（急性期後患者の受け入れ）』機能病棟と考えられる。多くの病院がそこに気づけば、地域包括医療病棟をより使いやすいものにすることができる。地域包括ケア推進病棟協会でも、情報発信や研修など取り組んでいく」旨をコメント。

このような各病院の成熟（地域包括医療病棟の活用推進）状況を見て、今後「必要な施設基準見直し提言」をまとめていく考えを仲井会長は示しています。

なお、8月15日時点で地域包括医療病棟を届け出た病院は全国で36施設あり、その内訳を見ると、▼急性期一般1からの転換：22.2%（8施設）▼急性期一般2－6からの転換：47.2%（17施設）▼地域包括ケア病棟からの転換：27.8%（10施設）▼その他（地域一般病棟）からの転換：2.8％（1施設）—となっています。こうした状況について仲井会長は、「7－80施設程度の届け出を予想していたが、思ったよりも少ない」と感想を述べています。