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2021年4－12月、医療費はコロナ禍前と比べ1.0％増、平時の2％台半増に比べ低水準のまま―厚労省

2022.5.3.（火）

昨年（2021年）12月、医療費は新型コロナウイルス感染症が流行する前（2019年10月）に比べて1.5％増加。延べ患者数（受診延べ日数）は5.4％減となった―。

昨年（2021年）4－12月の状況をコロナ禍前（2019年4－11月）と比べると「医療費は1.0％増・延べ患者数は3.3％減」となっており、平時の状況（医療費は2％台半ばの増加、延べ患者数は1％未満の減少）には戻っていないことを再確認できる―。

厚生労働省が4月28日に公表した2021年度12月号の「最近の医療費の動向（概算医療費）」から、こうした状況が明らかにありました（厚労省のサイトはこちら（概算医療費、国民医療費の98％に相当）とこちら（医療保険医療費））。

2021年12月医療費と、コロナ禍前の2019年12月医療費との比較（医療費動向（2021年12月）　220428）

2021年後半に入ると医療費増は平時水準に戻りつつあるが、患者数は戻らず

Gem Medで繰り返し報じているとおり、新型コロナウイルス感染症は医療現場にも大きな影響を及ぼしています。

入院に関しては、例えば、▼予定手術・予定入院の延期▼空床確保（コロナ感染症患者をすぐさま入院させられるよう空床確保が求められる）▼コロナ重症患者に医療資源を集中させるための病棟一部閉鎖（コロナ重症患者対応には1対2・1対1などの手厚い看護体制が必要なためスタッフ確保のために病棟一部閉鎖が必要となる）—などに伴う「患者減」が生じています。

また外来についても、▼軽症患者の受療行動適正化（極めて軽微な症状による医療機関受診を避ける）▼衛生面の向上や他者との接触機会減少による他の感染症（ウイルス性腸炎など）の減少—などに伴う「患者減」が生じています。

こうした「患者の減少」は「医療機関の収益減」「医療費の減少」を招きます。厚労省が昨年（2021年）8月末に公表した医療費の動向（概算医療費、国民医療費の98％に相当）によれば、2020年度の医療費は前年度から1兆4000億円・3.2％減少し、42兆2000億円となりました。それ以前に生じた最も大きな「医療費減」が「介護保険制度がスタートし、療養病床等の医療費が介護費に移った2000年度」であり、その時には「前年度から5600億円・1.8％減であった」ことと比べると今般のコロナ感染症の影響の大きさを知ることができます。

この点、2021年度に入ってからの医療費を、コロナ禍前の「2019年の同月」と比較してみると次のように推移しています（関連記事はこちら（2021年4月・5月）とこちら（6月）とこちら（7月）、こちら（8月）、こちら（9月）、こちら（10月）、こちら（11月））。
▽4月：0.8％増
▽5月：1.8％減
▽6月：2.9％増
▽7月：2.1％減
▽8月：1.2％増
▽9月：2.6％増
▽10月：1.8％増
▽11月：2.1％増
▽12月：1.5％増

4－12月の「コロナ禍前の前々年（2019年）同月と比べた医療費の増減」を単純平均すると「1.0％増」となります。診療報酬改定や特殊事情（超高額なC型肝炎治療薬の登場など）を除いた2017・19年度について医療費の「対前年同期比較」を行うと「2％台半ばで増加」しています。

このため「4―12月」で見れば「平時の水準には遠く及ばない」ことが分かります。ただし、2021年後半には平時水準に戻りつつあり、また12月には「オミクロン株による第6波」が到来していますが、医療費に対する影響は小さいように見えます。

次に、延べ患者数に相当する「受診延べ日数」について、コロナ禍前の2019年同月からの増減を見ると次のようになりました。4－12月の単純平均で「マイナス3.3％」となります。
▽4月：5.6％増
▽5月：8.1％減
▽6月：4.0％減
▽7月：8.9％減
▽8月：5.4％減
▽9月：4.9％増
▽10月：3.8％減
▽11月：4.7％減
▽12月：5.4％減

コロナ禍前の「延べ受診患者数の動向」（延べ患者数が前年度に比べてどの程度増加しているのか）を見ると、▼2019年度：0.8％減▼2018年度：0.5％減▼2017年度：0.1％減▼2016年度：0.7％減▼2015年度：0.2％増▼2014年度：0.3％減—で、「1％未満の減少」となっています。

▼医療技術の向上▼入院期間（在院日数）の短縮▼入院から外来へのシフト―などにより「延べ患者数」は減少していく傾向にあります（健全な姿である）。しかし、2021年4－12月には「平時よりも大きく患者が減少している」状況が分かり、上述した「患者減」が長引いていると考えられます。

なお、「医療が必要な患者が、医療にアクセスできなくなっている」部分と、「医療の必要性が低い患者が、受療行動を適正化した」部分とが混在していると考えられ、可能な限りの詳細な分析が必要です。「患者が減少した」＝「問題である」という単純な構図にはない点に留意が必要です。

さらに、医療費・受診延べ日数を診療種類別に前々年同期（2019年12月）と比べると次のような状況です。医療費は増加傾向が伺えますが、「患者数が大きく減少したまま」であり、全体としては平時には戻っていないことが確認できます。

▽医科入院：医療費は0.0％減、受診延べ日数（延べ患者数）は5.8％減
▽医科入院外：医療費は1.4％増、受診延べ日数は6.9％減
▽歯科：医療費は6.3％増、受診延べ日数は1.7％減
▽調剤：医療費は1.8％増、受診延べ日数は6.0％減

今後も中長期的に医療費の動向を眺めていく必要があります。