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2024年8月の病院患者数、コロナ禍前（2019年8月末）と比べて入院7.8％減、外来9.6％減のまま—病院報告

2024.11.11.（月）

病院の患者数を、今年（2024年）8月末と新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年8月とで比較すると、入院では7.8％減、外来では9.6％減となり、依然として「コロナ禍前の状況」には戻っていない—。

厚生労働省が11月8日に公表した今年（2024年）8月分の病院報告から、こうした状況が明らかになりました（厚労省のサイトはこちら）。

1 2024年8月末の患者数、コロナ禍前の2019年8月末比で入院7.8％減、外来9.6％減
2 病院の平均在院日数、「短縮」と「延伸」を繰り返す混乱が依然収まらず
3 一般病床の利用率、2024年8月は80.4％、2019年8月と比べて1.9ポイント低下

2024年8月末の患者数、コロナ禍前の2019年8月末比で入院7.8％減、外来9.6％減

厚労省は、全国の病院における毎月末の（1）1日平均患者数（2）平均在院日数（3）月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しています。医療提供体制の状況を迅速かつ経時的に把握でき、地域医療の在り方を考える際に非常に重要な資料となります（前月の状況に関する記事はこちら）。

今年（2024年）8月末における（1）「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院：114万1950人▼外来：118万901人—となりました。

前年同期（2023年8月末）と比べると、入院では0.1％の増加、外来では4.8％の減少となりました。

またコロナ感染症真っ只中の 2022年8月末と比べると、入院では3.0％の増加、外来では9.2％の減少。2021年8月末と比べると、入院では0.5％の増加、外来では5.7％の減少。2020年8月末と比べると、入院では1.4％の減少、外来では2.3％の増加となりました。

さらに、コロナ感染症の影響がない2019年8月末と比較してみると、入院では7.8％減、外来では9.6％減となっています。

入院・外来ともに「コロナ禍前の患者数」と比べて、大きく減少したままであることが確認できます。コロナ感染症対応への各種支援・補助は本年（2024年）3月で基本的に終了していますが、医療現場はかつての状況には戻っていません（関連記事はこちら）。今後の状況を中長期的に眺めていく必要があります。

なお、9月11日の中央社会保険医療協議会では、医科入院では「新規患者数は増加しているが、在院日数減に伴って延べ患者数が減少している」こと、医科入院外では「延べ患者数はコロナ禍前に比べて、コロナ禍後は伸び率の減少が鈍化している」ことが報告されています。また「新たな地域医療構想に関する検討会」では、延べ患者数の減少→病院経営の悪化を踏まえて「急性期拠点病院の機能を、診療実績面・施設数面の双方から集約化・重点化・絞り込みを行う」方針を固めています。

医療法上の病床種別に「入院患者数」と「過去の同月からの変化」を見てみると次のような状況が明らかになりました。

▼一般病床：65万2281人（前年同月比1.5％増、2022年8月比10.8％増、2021年8月比5.6％増、2020年8月比3.9％増、2019年8月比4.5％減）
▼療養病床：22万8944人（前年同月比1.5％減、2022年8月比1.9％減、2021年8月比6.3％減、2020年8月比7.9％減、2019年8月比15.4％減。ただし療養病床→介護医療院への移行なども加味して考えなければならない）
▼精神病床：25万9450人（前年同月比1.6％減、2022年8月比2.2％減、2021年8月比4.5％減、2020年8月比6.4％減、2019年8月比8.4％減。ただし地域移行推進による減少なども加味して考えなければならない）
▼結核病床：971人（前年同月比18.7％減、2022年8月比11.4％減、2021年8月比19.4％減、2020年8月比31.8％減、2019年8月比36.1％減）

また、感染症病床の入院患者数動向を見ると、次のように推移しています。
▽2020年1月：79人
↓
（76人・96％増）
↓
▽2月：155人
↓
（142人・92％増）
↓
▽3月：297人
↓
（408人・137％増）
↓
▽4月：705人
↓
（291人・41.3％減）
↓
▽5月：414人
↓
（238人・57.5％減）
↓
▽6月：176人
↓
（438人・248.9％増）
↓
▽7月：614人
↓
（1739人・283.2％増）
↓
▽8月：2353人
↓
（276人・11.7％減）
↓
▽9月：2077人
↓
（146人・7.0％減）
↓
▽10月：1931人
↓
（1715人・188.8％増）
↓
▽11月：3646人
↓
（2652人・72.7％増）
↓
▽12月：6298人
↓
（2814人・44.7％増）
↓
▽2021年1月：9112人
↓
（2551人・28.0％減）
↓
▽2月：6561人
↓
（2223人・33.9％減）
↓
▽3月：4338人
↓
（2439人・56.2％増）
↓
▽4月：6777人
↓
（3693人・54.5％増）
↓
▽5月：1万470人
↓
（4192人・40.0％減）
↓
▽6月：6278人
↓
（823人・13.1％減）
↓
▽7月：5455人
↓
（8035人・147.3％増）
↓
▽8月：1万3490人
↓
（3520人・26.1％減）
↓
▽9月：9970人
↓
（7876人・79.0％減）
↓
▽10月：2094人
↓
（1269人・60.6％減）
↓
▽11月：825人
↓
（1人・0.1％減）
↓
▽12月：824人
↓
（6724人・816.0％増）
↓
▽2022年1月：7548人
↓
（8654人・114.7％増）
↓
▽2月：1万6202人
↓
（5386人・33.2％減）
↓
▽3月：1万816人
↓
（3539人・32.7％減）
↓
▽4月：7286人
↓
（1621人・22.2％減）
↓
▽5月：5665人
↓
（1844人・32.6％減）
↓
▽6月：3821人
↓
（6487人・69.8％減）
↓
▽7月：1万308人
↓
（3821人・37.1％増）
↓
▽8月：1万9924人
↓
（8448人・42.4％減）
↓
▽9月：1万1476人
↓
（5611人・48.9％減）
↓
▽10月：5865人
↓
（5061人・86.3％増）
↓
▽11月：1万926人
↓
（7222人・66.1％増）
↓
▽12月：1万8148人
↓
（456人・2.5％増）
↓
▽2023年1月：1万8604人
↓
（1万406人・44.1％減）
↓
▽2月：8198人
↓
（4488人・54.7％減）
↓
▽3月：3710人
↓
（949人・25.6％減）
↓
▽4月：2761人
↓
（1362人・49.3％減）
↓
▽5月：1399人
↓
（446人・31.9％減）
↓
▽6月：953人
↓
（258人・27.1％増）
↓
▽7月：1211人
↓
（387人・32.0％増）
↓
▽8月：1598人
↓
（239人・15.0％減）
↓
▽9月：1359人
↓
（668人・49.2％減）
↓
▽10月：691人
↓
（102人・14.8％増）
↓
▽11月：793人
↓
（211人・26.6％減）
↓
▽12月：582人
↓
（91人・15.6％増）
↓
▽本年（2024年）1月：673人
↓
（299人・44.4％減）
↓
▽2月：374人
↓
（78人・20.9％減）
↓
▽3月：296人
↓
（60人・20.3％減）
↓
▽4月：236人
↓
（5人・2.1％減）
↓
▽5月：231人
↓
（14人・6.1％増）
↓
▽6月：245人
↓
（59人・24.1％増）
↓
▽7月：304人
↓
（2人・0.7％減）
↓
▽8月：302人

1日平均患者数の状況（病院報告2024.8.1　241108）

なお、次なる新興感染症対策に向けて、改正感染症法案が成立。さらに医療計画への「新興感染症対策」記載事項も明らかにされています（関連記事はこちら）。「病床確保」や「発熱外来」の協定締結に向けた動きが各都道府県で進められており、本年（2024年）9月までに完了している見込みで、近く状況報告が厚労省から行われます（関連記事はこちらとこちら）。

病院の平均在院日数、「短縮」と「延伸」を繰り返す混乱が依然収まらず

（2）の「平均在院日数」は病院全体では25.4日となり、前月から0.9日延伸してしまいました。

病床種別に見ると、▼一般病床：15.4日（前月から0.6日延伸）▼療養病床：118.9日（同2.9日延伸）▼精神病床：256.0日（同12.5日延伸）▼結核病床：48.7日（同0.2日延伸）▼感染症病床8.9日（同0.5日延伸）—となりました。コロナ感染症の影響などにより「ある月に短縮すれば、翌月に延伸し、さらにその翌月には再び短縮する」などの状況が繰り返されており、いまだに医療現場の混乱は収まっていないことが数字から確認できます。

平均在院日数の状況（病院報告2024.8.3　241108）

なおGem Medでは、繰り返し「不必要な長期入院が院内感染のリスクを高めてしまう。すべての病床で可能な限り、平均在院日数の短縮に向けた取り組みを進めるべき」と訴えています（ほかにもADLの低下、QOLの減少、経済的不安の増長などのデメリットがある）。コロナ禍で、こうした点がより明確になっていると言えます。

また「必要な入院が阻害されてはいけない」ことは述べるまでもありませんが、「病院経営を維持するために在院日数を伸ばす（空床を埋めるために在院日数を調整する）」ことは許されません。コロナ禍で「一般患者（コロナ感染症以外の傷病の患者）数が減少しているため、経営維持のために退院を先送りする（在院日数をコントロールする）」ケースが一部に生じているとの指摘もあります（関連記事はこちら）。

こうした在院日数延伸は「コロナ感染症の院内感染リスク（クラスター発生リスク）を高める」など医療の質を低下させるとともに、入院患者自身や医療保険財政に「不要な経済的負担を課す」もので、病院の信頼を損ねてしまう点に最大限の留意が必要です。

もっとも、医療現場では「在院日数短縮に新規患者獲得が追い付かず、このままでは病院経営が成り立たない」という切実な思いもあるかもしれません。その際には、上記のデメリットを解消するために「リハビリや機能訓練の充実によるADL低下防止」「感染管理の徹底による院内感染防止」などに、これまで以上に力を入れる必要があります。

一般病床の利用率、2024年8月は80.4％、2019年8月と比べて1.9ポイント低下

さらに（3）の「月末病床利用率」を見ると、病院全体では75.3％で、前年同期（2023年8月末）と比べて1.5ポイント低下、コロナ感染症が本格化していた2022年8月末と比べて1.2ポイント上昇、同じくコロナ真っただ中の2021年8月末と比べて0.4ポイント低下、さらにコロナ本格化が始まった2020年8月末と比べて0.6ポイント低下しました。

また、コロナ感染症の影響のない2019年8月末と比べると「2.7ポイントもの低下」となっており、ここでもコロナ禍前の状況には戻っていないことが伺えそうです。

なお、上述のように「新規入院患者は戻ってきているが、在院日数の減少が継続している」点も、病床利用率低下に大きく影響していることは述べるまでもないでしょう。

病床種別に見ると次のような状況です。
▼一般病床：70.4％（前年同月比2.3ポイント低下、2022年8月比3.6ポイント上昇、2021年8月比1.9ポイント上昇、2020年8月比0.5ポイント上昇、2019年8月比1.9ポイント低下）
▼療養病床：85.1％（前年同月比0.7ポイント上昇、2022年8月比2.0ポイント上昇、2021年8月比0.4ポイント上昇、2020年8月比0.6ポイント上昇、2019年8月比1.9ポイント低下）
▼精神病床：81.6％（前年同月比0.5ポイント低下、2022年8月比0.1ポイント低下、2021年8月比1.8ポイント低下、2020年8月比3.4ポイント低下、2019年8月比4.4ポイント低下）
▼結核病床：27.8％（前年同月比3.7ポイント低下、2022年8月比0.2ポイント上昇、2021年8月比2.3ポイント低下、2020年8月比7.0ポイント低下、2019年8月比7.0ポイント低下）
▼感染症病床：13.1％（前年同月比76.1ポイント低下、2022年8月比947.9ポイント低下、2021年8月比812.8ポイント低下、2020年8月比105.7ポイント低下）

月末病床利用率の状況（病院報告2024.8.2　241108）

これまで見てきたように、コロナ感染症を始めとする感染症対策を考えるうえでも「地域における病院の機能分化・連携の強化」が非常に重要です。

機能分化の推進は、地域医療構想の実現はもとより、▼医師働き方改革の実現▼医師偏在の解消―にもつながります。医師働き方改革は「医師の健康・生命を維持」しながら、「地域医療提供体制の確保」を目指すもので、2024年4月から新たな時間外労働上限（原則960時間以内）がスタートします。例えば、各地域において「救急」「産科」などの機能を特定の病院に「集約」することができれば、個々の病院の医療資源が比較的潤沢となり、例えば「夜勤や宿直」などにおける1人1人の医療従事者の負担軽減につながります（働き方改革）。

また、こうした負担軽減は「地方勤務を忌避する」医療従事者の心理的不安解消につながり、「症例集約」によるキャリア形成にも結び付きます。このため医師をはじめとする医療従事者の偏在解消にも役立ちます。

さらに、上述のように「新規入院患者は戻ってきているが、在院日数の減少が継続している」点を考慮すれば、改めて「自院のベッド数は適正か？過剰になっていないか？」を確認することも極めて重要です。

厚労省は、2025年の地域医療構想実現に向けて「推進区域を設定して、区域独自の対応方針を求める」「モデル推進区域を設定して、国が技術的・財政的な伴走支援を行う」こととしています（関連記事はこちら）。さらに、「2040年頃を念頭においた新たな地域医療構想」策定論議も佳境を迎えつつあります（関連記事はこちら）。

Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは公立病院経営強化プランの作成支援を行っています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」（市立輪島病院：石川県輪島市）を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。